映画評「悪魔の手毬唄」(1961年版)

☆☆(4点/10点満点中)
1961年日本映画 監督・渡辺邦男
ネタバレあり

市川昆の金田一耕介決定版である「悪魔の手毬唄」の16年前に作られた同名の作品だが、熱烈な横溝正史ファンなら激昂するような代物である。

その理由は後述するとして、登場する人物や事件に原作や市川版と共通する部分があるといった程度で、物語の流れを除いて滅茶苦茶に改悪されている。
 そもそも本来最重要である「手毬唄」の事件への関連性が余りにも薄すぎる。被害者側の主人がこの唄を聞くと怯え、怯える理由に連続殺人の鍵があるというだけで、市川版のように「手毬唄」通りに殺人事件が起こるといった面白さは皆無。これと比較したら色鮮やかな市川版は神々しいと言いたくなるほどである。

若い学生が助手として付き、さらに秘書までいる金田一。何だね、これは。しかし、それ以上に怪しからんのは金田一がスポーツカーを乗り回す伊達男に変えられていること。原作ファンでなくてもTVや市川版での金田一とは全く別のイメージであり、面白味のかけらもない。尤も市川版では事件の陰湿性に対するアクセントとしてユーモアが強調されたふしもあるのだが。

さらに、警察を出し抜く金田一にこそカタルシスがあるというのに、金田一が警察の完全信認の下に事件を解決するというのも戴けない。60年当時のセンスとはこういうものか。高倉健のスター性が金田一像が歪めたのか。

この記事へのコメント

2006年12月06日 21:24
オカピーさん、こんばんは。

さすがプロフェッサー、この「手毬唄」まで鑑賞されているとは。
私は健さんの大ファンですが、これは・・・
金田一ファンとしては、鑑る気もしません。

先日、ATGの「本陣殺人事件」を見直しましたが、あの中尾金田一、ジーンズ姿で、グラサンを書けている。内容は原作にそっていても。も~ダメです。絶対に!
昔、フジだったかな、中井貴一の「犬神」あれもスーツでしたが・・・

この記事を拝読して、やはり鑑ない方がよさそうですね。
では。
オカピー
2006年12月07日 03:31
イエローストーンさん、こんばんは。

金田一が破壊されていますし、絵もつまらないですし、これは観ないでよろしいでしょう。
蟷螂の斧
2020年11月29日 10:27
こんにちは。先ほど高倉健が金田一耕助を演じた「悪魔の手毬唄」を見ました。スポーツ刈りの頭でスポーツカーを運転する健さん。石坂浩二の金田一とは全然イメージが違います。ストーリーもかなり違うようです。
渡辺邦男監督は「明治天皇と日露大戦争」「日蓮と蒙古大襲来」を撮った人ですね。

>日本人みたいな中国人は、日本人がやっていたとは。今とは逆ですなあ。

ブルース・リーが日本人役、マコ岩松が中国人役ってのもありました。
https://www.youtube.com/watch?v=9uhrB5MEcEs

>ロシアはその自覚がないかもしれない。

「中国よりも我々の方が上」だと?

>御大は太り過ぎて(150Kgくらいあるらしい)

それは凄い!栄養を取り過ぎ?
オカピー
2020年11月29日 20:47
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>石坂浩二の金田一とは全然イメージが違います。

僕は原作と違ったり、リスペクトがないといった訳の解らない理由で、映画をけなしたりはしませんが、ここまで人口に膾炙した金田一耕助なので、今観ると噴飯ものですね。
 1961年であれば、今ほどイメージがなかったから、怒る観客はミステリー・ファンくらいなものだったでしょう。

しかし、それは別として、ミステリーとしての作り方もかなりデタラメだったような記憶があります。

>ブルース・リーが日本人役、マコ岩松が中国人役ってのもありました。

欧米人に、日本人・朝鮮人・中国人は区別付かないでしょうから、昔から色々ありましたネ。
 現在は日本人が日本人を演ずるのは渡辺謙か菊地凛子が出る映画くらいです。

>「中国よりも我々の方が上」だと?

昔の栄光が忘れられないのでしょう。ロシアの国民のかなりの多くが、あの凄惨極まりないソ連時代を懐かしがっているそうですから。資本主義にもそれなりの辛さがあるのは確かですが。

>それは凄い!栄養を取り過ぎ?

ストレスのせいもあると言われていますが、果して?

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