映画評「サマータイムマシン・ブルース」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・本広克行
ネタバレあり
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「ターミネーター」などタイムトラベルをテーマにした作品は少なからずあるが、劇団【ヨーロッパ企画】の舞台を映画化した本作は従来の発想を逆にしたと言って良く、大変興味深い。
因みに、エディー・コクランの名曲「サマータイム・ブルース」とは何の関係もありません。
夏休みのある日、大学のSF研究会の連中(瑛太、与座嘉秋、川岡大次郎、ムロツヨシ、永野宗典)が、相部屋となっている写真部の美人二人(上野樹里、真木よう子)の為に下手な野球を敢行して写真に撮らせる。その後近所の銭湯でのシャンプー盗難騒動の後、もさっとした感じの正体不明の若者(本多力)が部室に置いていった機械を操作するとタイムマシーンと判明。折しもエアコンのリモコンを前日壊してしまい暑くて我慢ならぬと、その直前に戻ってみることにする。
ここまでは従来のタイムトラベルものと同じだが、面白くなるのはここからである。過去を変えると自分たちの存在も危なくなると気付いた彼らはちょっとだけ変えてしまった過去を元に戻す為に行ったり来たりするお話になるのだ。
過去を変えない為に昔に行くことをメインストーリーにした作品は過去に記憶になく、観客はそれを通して<あること>に気付かされていく、という構成が実に巧妙で、タイム・パラドックスを回避したディテールも抜群である。「戦国自衛隊1549」のように歴史の復元力といったいい加減なものではなく具体的で、そこにお笑いを満載した上田誠の戯曲・脚本はお見事。
最初は観ようかどうか迷ったくらいだから、大変な拾い物と言わねばならない。
2005年日本映画 監督・本広克行
ネタバレあり
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「ターミネーター」などタイムトラベルをテーマにした作品は少なからずあるが、劇団【ヨーロッパ企画】の舞台を映画化した本作は従来の発想を逆にしたと言って良く、大変興味深い。
因みに、エディー・コクランの名曲「サマータイム・ブルース」とは何の関係もありません。
夏休みのある日、大学のSF研究会の連中(瑛太、与座嘉秋、川岡大次郎、ムロツヨシ、永野宗典)が、相部屋となっている写真部の美人二人(上野樹里、真木よう子)の為に下手な野球を敢行して写真に撮らせる。その後近所の銭湯でのシャンプー盗難騒動の後、もさっとした感じの正体不明の若者(本多力)が部室に置いていった機械を操作するとタイムマシーンと判明。折しもエアコンのリモコンを前日壊してしまい暑くて我慢ならぬと、その直前に戻ってみることにする。
ここまでは従来のタイムトラベルものと同じだが、面白くなるのはここからである。過去を変えると自分たちの存在も危なくなると気付いた彼らはちょっとだけ変えてしまった過去を元に戻す為に行ったり来たりするお話になるのだ。
過去を変えない為に昔に行くことをメインストーリーにした作品は過去に記憶になく、観客はそれを通して<あること>に気付かされていく、という構成が実に巧妙で、タイム・パラドックスを回避したディテールも抜群である。「戦国自衛隊1549」のように歴史の復元力といったいい加減なものではなく具体的で、そこにお笑いを満載した上田誠の戯曲・脚本はお見事。
最初は観ようかどうか迷ったくらいだから、大変な拾い物と言わねばならない。
この記事へのコメント
僕の採点は世のブログの中では些か趣を異にしておりますので、下記URLをご参照ください。
http://okapi.at.webry.info/200702/article_4.html
恐らく、☆☆☆☆はぶーすかさんの★5つの中で些か劣るものくらいに相当すると思います。
一番良いのはタイム・パラドックスがないこと。既に彼らのやったことは折込済みだったという発想で、結局歴史は変わらない。
次に歴史を変えない為に過去と現在を往復させるという逆転の発想。過去を変えさせない為に行くのとは些か趣が違います。
他愛ないことの為にあくせくする笑いの絶妙なさじ加減。過去の往復をドアを開けたり閉めたりするが如く扱う可笑しさ。
これなら世界に通用しますよ。
先日アップされた「四畳半タイムマシンブルース」は残念ながら観られないのでこちらを観ました。UNEXTには映画と同じ頃の舞台版もあったので両方見比べて見ました。
映画として観るといささかチープにみえる所が、小さい舞台だとサークルの部室あるあるな面白さに変わるみたいです。
こんなの学祭でやったら受けるだろうなぁと思う面白さですね。舞台版の方がみんなアホなことをよく喋るのも関西人としては面白かった!
舞台なのでタイムマシンは早々に窓の外に放り出してしまい、窓と部屋の入り口を出たり入ったりで話が進んでいくのが面白かったです。
タイムマシンの話が舞台でできると言うのがコロンブスの卵というか盲点をつかれた感じでしたね。
>他愛ないことの為にあくせくする笑いの絶妙なさじ加減。過去の往復をドアを開けたり閉めたりするが如く扱う可笑しさ。
まさにこの面白さが舞台の方がよくわかるんですよ。ドアから出ていったと思ったら舞台の壁の裏を通って窓から入ってきたり,その逆だったり… 観ているこっちはそれも承知して面白い^_^
>>他愛ないことの為にあくせくする笑いの絶妙なさじ加減。過去の往復をドアを開けたり閉めたりするが如く扱う可笑しさ。
>まさにこの面白さが舞台の方がよくわかるんですよ。
その観点では、「四畳半タイムマシンブルース」は大分及ばない気がするなあ。もっとコメディー的でその辺りのそこはかとない可笑し味が消されてしまう感じがあったかもしれません。
>タイムマシンの話が舞台でできると言うのがコロンブスの卵というか盲点をつかれた感じでしたね。
大概の人は考えもしません。それが才覚。
UNEXT にヨーロッパ企画の舞台版が10数本あることがわかりはまりそうな予感がします。 その中に2018年に映画化当時の事を劇団関係者が語っているスペシャル版というのがあって当時の状況がわかって興味深かったです。
そもそも舞台は何年も前からものすごく面白いと評判になっていたようで、映画版に出ていた佐々木蔵之介が本広監督に「面白いのがありますよ」と紹介して映画化が決まったようです。
そういえばヨーロッパ企画の主催者でこれの原作者、上田誠と佐々木蔵之介はどちらも二条城近辺が実家なので繋がってたのかもしれません。
機会があれば舞台版も是非どうぞ。
>UNEXT にヨーロッパ企画の舞台版が10数本あることがわかりはまりそう
>機会があれば舞台版も是非どうぞ。
以前「ドロステのはてで僕ら」でヨーロッパ企画には触れていましたね。
あのコメントを読みますと、モカさんはヨーロッパ企画と相性が良いのカモ?
今のところUNEXTだけですTT
小心者の僕は、なかなかお試しもお試しできません。
WOWOWやってくれないかなあ。