映画評「私の頭の中の消しゴム」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年韓国映画 監督イ・ジェハン
ネタバレあり
涙の量で作品の評価を決めるような人々は映画好きであっても映画ファンとは言えないが、涙腺を刺激する作品を否定する気は毛頭ない。元来涙もろいので大した出来栄えでなくても所謂「うるうる」してしまうことが多く、この作品の終盤でもそうなったことを告白しておきます。
コンビニでの意味のないすれ違いから始まった大工チョン・ウソンと建設会社社長の娘ソン・イェジンの恋は結婚に結実するが、彼女が若年性アルツハイマーを発病したことから悲劇に終る。
至って単純な物語だが、前半が溌剌とした青春恋愛模様で、後半が悲劇に耐える夫を描く、といったように前半と後半のトーンが水と油のように分れてしまうのはいかにも韓国流。しかし、比較的内輪に抑えている感じで、他類似作より素直に見られるのは有難い。聞くところによるの日本のTVドラマ「Pure Soul~君が僕を忘れても」のリメイクらしいので、日本流の節度が少しは効いているのかしれない。
アルツハイマーを描いた作品は80年代後半くらいから世界的にかなり作られるようになったが、僕の観た中では若年性を描いた作品はこれが初めて。未見の「明日の記憶」もどうやらそうらしく、「メメント」以降、記憶障害ものが世界的に流行していると言っても良いようだ。
アルツハイマーと青春模様を交錯させた作品としては「きみに読む物語」の構成の巧さが印象深く、「アイリス」の情緒醸成にも感心させられた。作品の傾向が違うので単純には比較出来ないものの、上記二作に比べると、本作は心理描写が皮相的で情味が濃いとは言いにくい。
2004年韓国映画 監督イ・ジェハン
ネタバレあり
涙の量で作品の評価を決めるような人々は映画好きであっても映画ファンとは言えないが、涙腺を刺激する作品を否定する気は毛頭ない。元来涙もろいので大した出来栄えでなくても所謂「うるうる」してしまうことが多く、この作品の終盤でもそうなったことを告白しておきます。
コンビニでの意味のないすれ違いから始まった大工チョン・ウソンと建設会社社長の娘ソン・イェジンの恋は結婚に結実するが、彼女が若年性アルツハイマーを発病したことから悲劇に終る。
至って単純な物語だが、前半が溌剌とした青春恋愛模様で、後半が悲劇に耐える夫を描く、といったように前半と後半のトーンが水と油のように分れてしまうのはいかにも韓国流。しかし、比較的内輪に抑えている感じで、他類似作より素直に見られるのは有難い。聞くところによるの日本のTVドラマ「Pure Soul~君が僕を忘れても」のリメイクらしいので、日本流の節度が少しは効いているのかしれない。
アルツハイマーを描いた作品は80年代後半くらいから世界的にかなり作られるようになったが、僕の観た中では若年性を描いた作品はこれが初めて。未見の「明日の記憶」もどうやらそうらしく、「メメント」以降、記憶障害ものが世界的に流行していると言っても良いようだ。
アルツハイマーと青春模様を交錯させた作品としては「きみに読む物語」の構成の巧さが印象深く、「アイリス」の情緒醸成にも感心させられた。作品の傾向が違うので単純には比較出来ないものの、上記二作に比べると、本作は心理描写が皮相的で情味が濃いとは言いにくい。
この記事へのコメント
「きみに読む物語」はviva jijiさんなどは甘っちょろい映画のように感じられたようですが、私は構成が上手いと思いましたね。同じ物語でも構成次第でよくも悪くもなりますが、良くなった典型だと思います。
「アイリス」くらいに描かないと伴侶がアルツハイマーになった切なさは描けないと思います。日本の或る作家も奥さんがこの病気に罹られ、人間としての尊厳を失っていく様に呆然としたそうですが、その逆のパターンで大変心を揺すぶられましたね。映画としての上手さはちょっと足りませんが。
人間の心理としてはぶーすかさんのお気持も分ります。病気だけは仕方がありませんが、思想的に偏っている人、信心深い人は映画を客観的に観ることが出来なくて大変不幸な人種だと思います。ま、そういう方々は映画は人生にとって何の意味もないことなのでしょうが。