映画評「青い棘」

☆☆★(5点/10点満点中)
2004年ドイツ映画 監督アヒム・フォン・ボリエス
ネタバレあり

1927年にドイツのベルリンで実際に起きた事件に取材したアーノ・メイヤー・ツー・キュイングドルフの小説を映画化した一種の青春ドラマである。ドイツでは既に2回映画化されている有名な事件らしい。

寄宿学校の最上級生パウル(ダニエル・ブリュール)が、上流階級出身の親友ギュンター(アウグスト・ディール)の別荘で、その妹ヒルデ(アンナ・マリア・ミューエ)を知って惹かれるが、彼女は兄の同性愛の元恋人ハンス(トゥーレ・リンハルト)と懇ろになっている。
 二人の親友たちは<自殺クラブ>なるものを結成し、「愛を感じなくなった時にこの世を去る」という条項を設ける。一晩の乱痴気騒ぎの後、ギュンターはハンスを殺し自殺するが、パウルは現実に目覚めて生き残る。

ベルナルド・ベルトルッチのような退廃ムードで「ロープ」や「完全犯罪クラブ」と同じようなナルシスティックな若者を描いたものと思えば遠くない。溢れ出すエネルギーを持て余して異常な情熱を持つようになる精神構造が似ているような気がするわけだが、一方(「ロープ」など)は他人を殺すことに向かい、一方は自殺に向う。
 変則的な心中という形でそれに巻き込まれたハンス君はお気の毒としか言いようがないが、「一番美しい時に人生を終えることが至高である」といった思想は青臭く、彼らの心理は抽象的で解りにくい。

しかし、退廃的な気分が蔓延していたのではないかと想像される中期ワイマール共和制を背景にしたところに多少の面白さがあり、この事件の6年後ナチスが台頭するというコメントに<時代が生み出した事件>という作者の思いが伺える。

この記事へのコメント

かよちーの
2006年12月31日 02:52
こんばんは。
これ観ましたが、正確には観ていません・笑。
途中で飽きてオチを観てしまいました...。
オカピー
2006年12月31日 03:39
かよちーのさん、宵っぱりですね(笑)。
TVで「カラー・パープル」を観ておりました。地震情報が・・・(泣)。

青臭いのを描いているので青臭いのは良いですが、余り面白くないです。理由は本文で記した通り。

良いお年を。

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