映画評「ALWAYS 三丁目の夕日」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・山崎貴
ネタバレあり
昨年の話題作だが、例によって前情報など一切得ていない。嫌でも入って来るのはベスト10評価だが、基本的に僕の場合はプラスにもマイナスにも働かない。
舞台は長嶋茂雄がプロ野球デビューし力道山が大人気だった昭和33年、建設中の東京タワーが視界に捉えられる東京の夕日町3丁目、青森から六子(堀北真希)が集団就職の結果鈴木オートで働くことになるが、大会社と思ったのが個人企業で、しかも仕事はやったこともない自動車修理。これは雇い主の親父(堤真一)の勘違いで起った事件だが、結局働き続ける。
一方、近所で駄菓子屋を経営しながら小説を書いているものの尽く落選している芥川竜之介ならぬ茶川竜之介(吉岡秀隆)が、居酒屋の若い女将・ヒロミ(小雪)に孤児同然の吉行淳之介ならぬ古行淳之介少年(須賀健太)を押付けられ、最初は嫌々だったのが、彼が小遣い稼ぎに書き下ろしている少年冒険小説の大ファンであることを知った辺りから、仄かな愛情が芽生えて行く。
女将も茶川に好意を抱くが、父親の借金でまた元の踊子に戻って行く。
CGとミニチュアを駆使して凡そ半世紀前の東京を再現したVFXが優秀。CG臭いところもあるが、敢えて気にする必要が無いくらい全般的に上出来である。こうした点がしっかりしないと、一昔前の家族の風景という作品のテーマがすすぼけてしまうので大いに評価して良い。
一言で言えば、二つの家族・・・一つは本当の、一つは擬似の・・・における愛情交換風景を描いているわけだが、そこはかとなく巧いのは、戦中妻子を失った三浦友和演ずる医師の点出である。彼の存在はテーマを明確にする効果があるが、それに加え、茶川が淳之介に万年筆を贈る際に愛情を注ぐ対象を失ったこの人物をサンタクロース役として具体的に活躍させ、一段と深い余韻を醸し出す。
案の定続編が作られるということだが、六子(多分六番目の子供という意味)が口減らしの為に追い出されたと信じ込んでいた家族の待つ青森へ帰省する中、鈴木オート一家が夕焼に染まる完成した東京タワーを見つめる幕切れの余情が余りにも素晴らしいので、芸術としてはここで完結したいところではある。
郷愁より人情にほだされます。
他の方のレビュー⇒
「ALWAYS 三丁目の夕日」(風に吹かれて)
2005年日本映画 監督・山崎貴
ネタバレあり
昨年の話題作だが、例によって前情報など一切得ていない。嫌でも入って来るのはベスト10評価だが、基本的に僕の場合はプラスにもマイナスにも働かない。
舞台は長嶋茂雄がプロ野球デビューし力道山が大人気だった昭和33年、建設中の東京タワーが視界に捉えられる東京の夕日町3丁目、青森から六子(堀北真希)が集団就職の結果鈴木オートで働くことになるが、大会社と思ったのが個人企業で、しかも仕事はやったこともない自動車修理。これは雇い主の親父(堤真一)の勘違いで起った事件だが、結局働き続ける。
一方、近所で駄菓子屋を経営しながら小説を書いているものの尽く落選している芥川竜之介ならぬ茶川竜之介(吉岡秀隆)が、居酒屋の若い女将・ヒロミ(小雪)に孤児同然の吉行淳之介ならぬ古行淳之介少年(須賀健太)を押付けられ、最初は嫌々だったのが、彼が小遣い稼ぎに書き下ろしている少年冒険小説の大ファンであることを知った辺りから、仄かな愛情が芽生えて行く。
女将も茶川に好意を抱くが、父親の借金でまた元の踊子に戻って行く。
CGとミニチュアを駆使して凡そ半世紀前の東京を再現したVFXが優秀。CG臭いところもあるが、敢えて気にする必要が無いくらい全般的に上出来である。こうした点がしっかりしないと、一昔前の家族の風景という作品のテーマがすすぼけてしまうので大いに評価して良い。
一言で言えば、二つの家族・・・一つは本当の、一つは擬似の・・・における愛情交換風景を描いているわけだが、そこはかとなく巧いのは、戦中妻子を失った三浦友和演ずる医師の点出である。彼の存在はテーマを明確にする効果があるが、それに加え、茶川が淳之介に万年筆を贈る際に愛情を注ぐ対象を失ったこの人物をサンタクロース役として具体的に活躍させ、一段と深い余韻を醸し出す。
案の定続編が作られるということだが、六子(多分六番目の子供という意味)が口減らしの為に追い出されたと信じ込んでいた家族の待つ青森へ帰省する中、鈴木オート一家が夕焼に染まる完成した東京タワーを見つめる幕切れの余情が余りにも素晴らしいので、芸術としてはここで完結したいところではある。
郷愁より人情にほだされます。
他の方のレビュー⇒
「ALWAYS 三丁目の夕日」(風に吹かれて)
この記事へのコメント
プロフェッサーは相変わらす、鑑賞のポイント、考察が深いですね。大変、感心させられます。
>郷愁より人情にほだされます。
そのとおりに私も感じました。
表面的にはベタでクサイといえばそうなのですが、ノスタルジーより、非常に溢れる人情味を感じました。
ラストの夕陽のシーン、いいですね。
私もこれで終わりのがいいと思います。
では、また。
まあ、そんなこともないですが、内容を追うだけでは面白くないので、どうしてもそういう【考察】めいたものを重視してしまいますね。
そのほうが映画を観ていても面白いです。どんな映画も比較的楽しんでしまうのは、案外こうした視点で映画を観ているからでしょう。
映画も余り刺激ばかり追わないで、こういうのんびりしたものもたまには良いと思います。但し、私は作りがしっかりしていないと駄目です(笑)。
オカピーさん御指摘の通り、私もCGもこういう使い方があったのだなぁ…と感心しました。寅さんで階段落ちなどのギャグを見せてくれた吉岡秀隆が、雷オヤジに殴られて伸びたりして笑えました^^)。続編も気になります。
遠慮なくばんばん貼ってください(笑)。
>吉岡秀隆
さすがは寅さんの甥でがしょう!?
もしかしたら「男はつらいよ」とまでは行かないまでも10年くらい続くシリーズになったりして。
親が留守のときは、隣のおばちゃんが、あれやこれや世話してくれたり(笑)
私は、田舎者なので、まだこんな感じの雰囲気が子供のころは残ってました・・・(^o^;
宅間医師のエピソードはよかったですね。
私は生まれは群馬、昭和50年代は東京、昭和60年代・平成9年までは埼玉、そして再び群馬と住居が変わっていますが、東京時代は隣さんとの関係が基本的になくて「とんでもないところよの~」と実感しましたね。
埼玉時代は近所づきあいが少しはありましたが、やはり群馬でも辺鄙なこの辺りの交流の濃さには到底適いません。
しかし、昨今、この辺りでも戦後生まれは、戦前生まれの方に比べると交流が浅いなあと思わせられますね。
>宅間医師
映画の重しとして実に効果的なのでした。素晴らしかった。