映画評「男はつらいよ 寅次郎心の旅路」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1989年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり
「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。
シリーズ第41作。
寅さんが何とウィーンへ行く。第24作「寅次郎春の夢」で海外ロケをしたことがあるが、実際に寅さんが海外へ行くのは初めて。
何故そんなことになったかと言えば、東北を旅している寅さんが飛び込み自殺をしようとして失敗したお面顔の中年サラリーマン坂口(柄本明)と知り合って慕われ、リフレッシュの為に湯布院ならぬウィーンへ旅することを決意したお面顔に付き合う羽目になったのである。
この経緯を描いた前半がなかなか可笑しく、極めて順調。
そしていよいよ後半、言葉が通じず日本食が食べられないのでホテルに篭っていた寅さんが外に出てはぐれた時、8年前ウィーンに居つき現在はツアーコンダクターをしている久美子(竹下景子)と知り合う。
辛さに耐えてウィーンに留まる彼女に対し、寅さん同様に「無理せずに帰国しなさい」と言いたくなったが、彼女には現地にボーイフレンドがいて寅さんが考えている以上に事情は複雑、異国に暮らす日本人の心情という地味なテーマが浮かび上がって来る。
前半に比べ後半は相当に重苦しいのだが、その重苦しさを多少なりとも軽くしてくれるのがウィーンを舞台にした傑作「第三の男」へのオマージュである。
勿論チターも奏でられるが、現地で久美子に援助の手を差し延べている中年女性(淡路恵子)のスパイかもしれない亡夫がオースン・ウェルズ似であること、夜のウィーンにご機嫌に踊る坂口の影が大きく映し出されるショットがそれだが、家族の前で僕が指摘したことを山本晋也氏はいつも言ってしまうんだもんなあ。しかし、おかげで家族に少しだけ尊敬されるようになりました(笑)。
最初に観た時同様、海外を舞台にしながらカルチャー・ギャップを避けた山田洋次のセンスを賞賛したいと思う。勿論共同脚本の朝間義隆のセンスも。
山田監督は定石を利用するのが巧いのだが、その一方で野暮な定石は避ける。通常の脚本家・監督なら、ましてコメディならカルチャー・ギャップをテーマにするだろうが、寅さんの海外にいても「日本にいると思ってしまう」自然体、外国人とも日本語で話して何となく意思疎通ができてしまう辺りの扱いは、並大抵のセンスではない。
1989年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり
「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。
シリーズ第41作。
寅さんが何とウィーンへ行く。第24作「寅次郎春の夢」で海外ロケをしたことがあるが、実際に寅さんが海外へ行くのは初めて。
何故そんなことになったかと言えば、東北を旅している寅さんが飛び込み自殺をしようとして失敗したお面顔の中年サラリーマン坂口(柄本明)と知り合って慕われ、リフレッシュの為に湯布院ならぬウィーンへ旅することを決意したお面顔に付き合う羽目になったのである。
この経緯を描いた前半がなかなか可笑しく、極めて順調。
そしていよいよ後半、言葉が通じず日本食が食べられないのでホテルに篭っていた寅さんが外に出てはぐれた時、8年前ウィーンに居つき現在はツアーコンダクターをしている久美子(竹下景子)と知り合う。
辛さに耐えてウィーンに留まる彼女に対し、寅さん同様に「無理せずに帰国しなさい」と言いたくなったが、彼女には現地にボーイフレンドがいて寅さんが考えている以上に事情は複雑、異国に暮らす日本人の心情という地味なテーマが浮かび上がって来る。
前半に比べ後半は相当に重苦しいのだが、その重苦しさを多少なりとも軽くしてくれるのがウィーンを舞台にした傑作「第三の男」へのオマージュである。
勿論チターも奏でられるが、現地で久美子に援助の手を差し延べている中年女性(淡路恵子)のスパイかもしれない亡夫がオースン・ウェルズ似であること、夜のウィーンにご機嫌に踊る坂口の影が大きく映し出されるショットがそれだが、家族の前で僕が指摘したことを山本晋也氏はいつも言ってしまうんだもんなあ。しかし、おかげで家族に少しだけ尊敬されるようになりました(笑)。
最初に観た時同様、海外を舞台にしながらカルチャー・ギャップを避けた山田洋次のセンスを賞賛したいと思う。勿論共同脚本の朝間義隆のセンスも。
山田監督は定石を利用するのが巧いのだが、その一方で野暮な定石は避ける。通常の脚本家・監督なら、ましてコメディならカルチャー・ギャップをテーマにするだろうが、寅さんの海外にいても「日本にいると思ってしまう」自然体、外国人とも日本語で話して何となく意思疎通ができてしまう辺りの扱いは、並大抵のセンスではない。
この記事へのコメント
オマージュ、パロディというのはさりげなくやるのが上品で宜しいですね。私がパロディ集映画を余り評価しないのは、いかにもわざとらしいから。
いつかは「第三の男」もUPしないといけないのですが、なかなか。
>「第三の男」
ビデオはありますが、DVDの保存版を作ろうかな。ストーリーで追ってはいけない作品ですね。
それでは良いお年を。
ウィーンの景色が素晴らしかったです。高層ビルが並ぶ東京とは違います。
江上久美子(竹下景子)がヘイマン(マルティン・ロシュバーカー)とキスをする場面がいくつかありましたが、当時関口照生と結婚していたし、二人の息子がいたんですよね?
久美子や寅さんを助けてくれるマダム(淡路恵子)の役柄も重要でした。
>音楽が好きというより歌が好きで、自分で歌える歌をよく聴くだけでしたね。
お兄様は小椋佳が好きだったんですね。65歳を越えても働いてらっしゃったんですか?
>ついに寅さんが海外進出!
カルチャーギャップを投入しなかったところに、山田洋次のセンスを感じますねえ。
「釣りバカ日記」第1作の脚本にも絡んでいましたが、これも通像的な定石を避ける作劇をしていました。同僚の家のTVでたまたま観て、同僚二人が“こうなるだろう”と予想したのに対し、僕は“うんにゃ、そうなるまい”と予想したところで、僕の予想通りでしたよ。
>お兄様は小椋佳が好きだったんですね。
若い頃の歌をよく歌っていましたね。
父親の施設に向かう車の中で“最近は歌詞が難しくなった”などと言っていましたよ。
>65歳を越えても働いてらっしゃったんですか?
プラスαとなるその給金を資金にカラオケ・スナックに行くのを楽しみにしていたようで、その様子を見ると強く止めろとは言えませんでした。
お寺で佐藤蛾次郎が掃除をしている場面から切り替えるようにしてさくらと御前様のやりとり。今回も笠智衆の自宅で撮影。説得力がある事を言うけど、やっぱり元気がない笠さん。
次回作予告を見ると吉岡秀隆と後藤久美子が話の中心になりそうな雰囲気。世代交代です。
>“うんにゃ、そうなるまい”と予想したところで、僕の予想通りでしたよ。
さすがオカピー教授です(拍手!)
>若い頃の歌をよく歌っていましたね。
「さらば青春」や「思いおこせば」あたりですか?
>カラオケ・スナックに行くのを楽しみにしていたようで、
お兄様にとっては活力になったのでしょう。
僕の友人のお母さまが一昨日亡くなりました。お通夜や告別式の日時や場所がLINEで届きました。「家族葬なのでお気遣いなく」と書かれていました。行こうかどうか、今考えています。
>3%の消費税開始もありました。そこから日本が落ち目になっていきました。
氷河期世代の始まり。可哀想ですねえ。
こういう人に対しても、新自由主義の一部の方々は、自己責任と言う。
>次回作予告を見ると吉岡秀隆と後藤久美子が話の中心になりそうな雰囲気。世代交代です。
それもありますし、今となると、恐らく山田洋次は渥美清の体調の悪さを察知していたのではないかと思いますね。
だから、最後の5作(44~48作)では出番を大きく減らす。
>「家族葬なのでお気遣いなく」と書かれていました。
兄の場合、通夜は子供たちと兄夫婦の兄弟・姉妹夫婦のみ。
告別式は、両親のごく近い人たちだけで済ませました。
友人たちにはその後連絡したようです。