映画評「ソラリス」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2002年アメリカ映画 監督スティーヴン・ソダーバーグ
ネタバレあり

2004年映画鑑賞メモより。

アンドレイ・タルコフスキー「惑星ソラリス」の原作であるポーランドのSF作家スタニスラフ・レムの小説の再映画化で、全体としての印象はハリウッド映画らしからぬ部分が少なくないということである。
 この哲学的な内容を完全なハリウッド・テイストにすることは不可能であるから当然の帰結と言えないこともない。

本作はタルコフスキー版にあったまだるっこい前半部分は全くなく、惑星ソラリスに着いたばかりの科学者ジョージ・クルーニーが亡き妻ナターシャ・マケルホーンと突然再会して驚くところから始まる。
 彼女はソラリスの不思議なパワーが生み出す幻影で、他の乗組員もほぼ同じ経験をしているのだが、彼は何とか彼女を地球に連れ帰りたいと願う。彼女は彼の記憶に残っている妻の総合体であり、彼女自身もやがて本人ではないことに気づき姿を消そうとし、女性司令官もその抹消に躍起となる。

本作では彼女は決して消えず、オリジナルとその点で大きく異なるのだが、人間の存在そのものに対する疑問の提示だったオリジナルに対し、ロマンス的な色彩が濃くなっている。その辺はハリウッド的というよりはアメリカ的合理主義と解釈して良いだろうが、ロマンスとして些か想念的に作ったことにより従来のアメリカのメジャー映画では余り観られないムードを生み出しているのも確かである。

オリジナルの強烈な印象が残っている当方としては余り星は多く進呈できないが、必ずしも当方に僅かに伝わってくる評判の悪さが妥当とは思わない。

この記事へのコメント

chibisaru
2007年01月19日 19:31
こんばんは♪
この作品は、とても不思議な感覚が残りました。
印象的な作品でもあり、眠くなりそうなところもあるのですが、後々まで理性が吹っ飛ぶほどの不思議な印象だけが残っています(w
上手にいえないのですが、印象に残らない後味のない作品と違い、いまだに不思議な感覚を呼び覚ますほどの深い印象が残っているというのは、見終わった直後には理解出来たのかすらもわからなかったのに「ある意味すごい作品だったんだなあ」とそんなことを思います。
ラブロマンスと見れる作りにしてあったことで、ある程度わかりやすくなっていたのかもしれませんね。
オカピー
2007年01月20日 14:54
chibisaruさん、TB&コメント有難うございます。
タルコフスキーの内省的な「惑星ソラリス」に耽溺するファンからは評判が悪かったのですが、そう馬鹿にしたものでもないと正直思いましたよ。
観方によってはタルコフスキーの作品は訳がわからんと言われても仕方がない面もあるわけですし、単純に比較してもつまらない、というのが本作に関する私の総論です。
十瑠
2007年03月08日 16:57
映画の終盤が掴めてなかったので、特別版DVDをレンタルしてきました。
どうもBS放送の字幕対訳が省略し過ぎというか、誤訳みたいな部分もあったみたいで、レンタル版では展開が良~く解りました。ちょっと、困ったことです。

ついでに、中古のタルコフスキー版VHSがありましたので確保してきました。
噂のラストシーンをチラッと見ましたが、35年前ですから昨今のCGと比べると笑っちゃいそうな感じでしたね。
でも、タル版を見ていたらソダーバーグ版のラストも理解できただろうとは思いました。

コピーの奥さんが自分の秘密を理解していく過程が面白かったですね。
オカピー
2007年03月08日 21:26
十瑠さん、こんばんは。

最初御覧になったのはどちらの放映ですか?
最近映画館へ殆ど行っていないのでよく解りませんが、劇場版とTV放映版は違うのでしょうかね? 少なくともTV放映版とDVDでは違うことがあるわけですね。ふーむ、興味深いなあ。
最近60年代から~70年代といった私にとっては懐かしい時代の作品を再鑑賞する機会が多いですが、字幕が高瀬鎮夫さん版だったりすることがあり、嬉しいんですよね。新しい字幕では現代用語が昔の映画に使われていたりするのが嫌でして。

当時はCGはなかったので、SFXですよね。貧しいのは貧しいなりに昔のSFXは大好き。CGはリアルさが増した代わり、工夫がなくつまらんです。
先日CGをSFXと称している人間に「SFXを勉強しろ」と怒鳴られましたよ(笑)。勘弁して欲しいです。
十瑠
2007年03月08日 23:04
NHK-BS2です。コチラの記事が出る直前の放送でしょうか。
冷静に見るとトンチンカンな見方もしていたんですが、相手がSFですから『それもありかも・・・』なんて感じで混乱してしまいました。
オカピー
2007年03月10日 02:39
十瑠さん
私はWOWOWですが、映像がハイビジョンだったのはともかく、字幕は同じだと思います。劇場公開用も同じではないでしょうかね。
DVDにおいては特別に字幕を新規に起こすということはあるかもしれません。

DVDの英語字幕は我々にとっては勉強になるので、大変ありがたいもの。邦画でも英語版で英語字幕が付いている作品がありますが、大概英語版とは一致しません。何故ならこの場合の英語字幕は欧米人向けの本当の字幕だから。

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  • #089 ソラリス

    Excerpt: 製作:ジェームズ・キャメロン 監督:スティーブン・ソダーバーグ 脚本:スティーブン・ソダーバーグ 出演者:ジョージ・クルーニー 、ナターシャ マイケルホーン 、ジェレミー・ディヴィス、ヴィオラ・.. Weblog: 風に吹かれて-Blowin' in the Wind- racked: 2007-01-19 19:23
  • ソラリス

    Excerpt: (2002/スティーヴン・ソダーバーグ監督・脚本/ジョージ・クルーニー、ナターシャ・マケルホーン、ジェレミー・デイヴィス、ヴィオラ・デイヴィス、ウルリッヒ・トゥクール/99分) Weblog: ::: SCREEN ::: racked: 2007-03-04 15:55