2006年私的ベスト10発表~または1年遅れのベスト10~
群馬の山奥に住み、体調も万全とは行かず、WOWOWを中心にした映画鑑賞生活ですので、私の2006年私的ベスト10は皆様の2005年にほぼ相当する計算でございます。初鑑賞なら何でも入れてしまうので、時々古い作品も入ったりします。
因みに2006年の鑑賞本数はほぼ例年並の431本、再鑑賞作品はブログ記事の関係で倍増して123本。つまり、308本が初鑑賞。例年350~360本ですので、やや寂しい感じが致します。
それでは参りましょう。
1位・・・Ray/レイ
近年人気のある伝記映画の中でも極めて正統派で、1位にするには地味な印象がありますが、テイラー・ハックフォードが久々にがっちり組み立てたドラマとしての魅力に脱帽。R&Bファンにつき知っている曲ばかり流れるというのも強烈にサポートしました。
2位・・・祇園の姉妹
これを一番にしたかったですが、何と言っても戦前の作品ですのでご遠慮申し上げました(笑)。代表的なところでは唯一観ていなかった溝口健二の秀作で、ハードボイルド女性映画としてしびれました。
3位・・・サマリア
韓国の監督で心の底からうなったのは本作の監督キム・ギドクだけ。前作「春夏秋冬そして春」は2005年のベスト1にしました。宗教的な背景と神性を感じる演出。またまた驚きましたなあ。
4位・・・運命じゃない人
時系列を破壊する映画は感心しないことが多いのですが、これは抜群に上手いですね。交通整理が見事でした。内田けんじなる監督は暫く要注目でしょう。
5位・・・海を飛ぶ夢
アレハンドロ・アメナーバルは「アザーズ」でも只者ではない印象がありましたが、スペインへ戻って作った本作では尊厳死をイマジネーション溢れるテーマとして扱っていよいよ実力発揮。
6位・・・ミリオンダラー・ベイビー
クリント・イーストウッドを僕は世間ほど評価していませんが、映像が大変良かったですね。5位と二本続けて同じようなテーマの作品となりました。
前半と後半のバランスに難がありますが、ナレーションのトリックに感心。モーガン・フリーマンは観客ではなく一体誰に語っていたのか。
7位・・・ヒトラー~最後の12日間~
最近日本で紹介されるドイツ映画は長いものに秀作・佳作が目立ちます。重厚で緊密。ヒトラーの人間面に迫った作品という紹介は余りピンと来ず、彼に盲信し追従した人々の罪が画面から浮かび上がるところに凄みがありました。
8位・・・セルラー
「ヒトラー」の後は「セルラー」というのは洒落ではありません(笑)。携帯電話を駆使したスリラーの秀作。ハリウッドにはこういう直線的な映画をもっと作ってほしいのよ。しかし、実は単純な映画ほど作るのが難しいから時系列破壊型やCGに逃げる。「コラテラル」もまやかしのない直線型の秀作で、最後までベスト10候補でした。
9位・・・卒業の朝
「チップス先生さようなら」に似た部分もある学園ものですが、マイケル・ホフマン監督のスムーズな展開がなかなか宜しかった。スクリーンに登場しないキーパーソンの扱いも上手かったなあ。
10位・・・ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方
なるべく同系列の作品は入れないようにしましたが、最後に再び伝記映画。この作品は、変装役者としてスタートしたピーター・セラーズに扮したジェフリー・ラッシュが、その回想の中で演劇風に色々な関係者の扮装をするという重層的な構造になっているので手ごたえあり。キューブリックのパロディなど楽屋落ちとしてもかなり面白かったですね。
次点・・・いつか読書する日(構成が気に入らず減点しましたが、昨年最も心の奥にまで沁み込んだ作品かもしれないです)
****適当に選んだ各部門賞****
監督賞・・・溝口健二~「祇園の姉妹」
男優賞・・・ジェイミー・フォックス~「Ray/レイ」「コラテラル」
女優賞・・・田中裕子~「いつか読書する日」「火火」
脚本賞・・・内田けんじ~「運命じゃない人」
撮影賞・・・トム・スターン~「ミリオンダラー・ベイビー」
音楽賞・・・ブノワ・シャレスト~「ベルヴィル・ランデブー」
因みに2006年の鑑賞本数はほぼ例年並の431本、再鑑賞作品はブログ記事の関係で倍増して123本。つまり、308本が初鑑賞。例年350~360本ですので、やや寂しい感じが致します。
それでは参りましょう。
1位・・・Ray/レイ
近年人気のある伝記映画の中でも極めて正統派で、1位にするには地味な印象がありますが、テイラー・ハックフォードが久々にがっちり組み立てたドラマとしての魅力に脱帽。R&Bファンにつき知っている曲ばかり流れるというのも強烈にサポートしました。
2位・・・祇園の姉妹
これを一番にしたかったですが、何と言っても戦前の作品ですのでご遠慮申し上げました(笑)。代表的なところでは唯一観ていなかった溝口健二の秀作で、ハードボイルド女性映画としてしびれました。
3位・・・サマリア
韓国の監督で心の底からうなったのは本作の監督キム・ギドクだけ。前作「春夏秋冬そして春」は2005年のベスト1にしました。宗教的な背景と神性を感じる演出。またまた驚きましたなあ。
4位・・・運命じゃない人
時系列を破壊する映画は感心しないことが多いのですが、これは抜群に上手いですね。交通整理が見事でした。内田けんじなる監督は暫く要注目でしょう。
5位・・・海を飛ぶ夢
アレハンドロ・アメナーバルは「アザーズ」でも只者ではない印象がありましたが、スペインへ戻って作った本作では尊厳死をイマジネーション溢れるテーマとして扱っていよいよ実力発揮。
6位・・・ミリオンダラー・ベイビー
クリント・イーストウッドを僕は世間ほど評価していませんが、映像が大変良かったですね。5位と二本続けて同じようなテーマの作品となりました。
前半と後半のバランスに難がありますが、ナレーションのトリックに感心。モーガン・フリーマンは観客ではなく一体誰に語っていたのか。
7位・・・ヒトラー~最後の12日間~
最近日本で紹介されるドイツ映画は長いものに秀作・佳作が目立ちます。重厚で緊密。ヒトラーの人間面に迫った作品という紹介は余りピンと来ず、彼に盲信し追従した人々の罪が画面から浮かび上がるところに凄みがありました。
8位・・・セルラー
「ヒトラー」の後は「セルラー」というのは洒落ではありません(笑)。携帯電話を駆使したスリラーの秀作。ハリウッドにはこういう直線的な映画をもっと作ってほしいのよ。しかし、実は単純な映画ほど作るのが難しいから時系列破壊型やCGに逃げる。「コラテラル」もまやかしのない直線型の秀作で、最後までベスト10候補でした。
9位・・・卒業の朝
「チップス先生さようなら」に似た部分もある学園ものですが、マイケル・ホフマン監督のスムーズな展開がなかなか宜しかった。スクリーンに登場しないキーパーソンの扱いも上手かったなあ。
10位・・・ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方
なるべく同系列の作品は入れないようにしましたが、最後に再び伝記映画。この作品は、変装役者としてスタートしたピーター・セラーズに扮したジェフリー・ラッシュが、その回想の中で演劇風に色々な関係者の扮装をするという重層的な構造になっているので手ごたえあり。キューブリックのパロディなど楽屋落ちとしてもかなり面白かったですね。
次点・・・いつか読書する日(構成が気に入らず減点しましたが、昨年最も心の奥にまで沁み込んだ作品かもしれないです)
****適当に選んだ各部門賞****
監督賞・・・溝口健二~「祇園の姉妹」
男優賞・・・ジェイミー・フォックス~「Ray/レイ」「コラテラル」
女優賞・・・田中裕子~「いつか読書する日」「火火」
脚本賞・・・内田けんじ~「運命じゃない人」
撮影賞・・・トム・スターン~「ミリオンダラー・ベイビー」
音楽賞・・・ブノワ・シャレスト~「ベルヴィル・ランデブー」
この記事へのコメント
楽しい企画をありがとうございます。
私も近年はとみにTVを中心とした一年遅れの鑑賞がメインになっています。かつてはケーブルTVにも加入していたのですが、いくら多チャンネルでも身は一つ。映画のエアチェックばかりに追われ、鑑賞は半分程度では意味もなく、現在はWOWOWのみを残しております。
それにしても431本とは一日に一本強ですから、素晴らしいの一語に尽きます。私なんぞは本当に映画ファンの端くれで、プロフェッサーのような方こそ敬愛をこめ シネフィル (お好きな言葉ではないかもしれませんが) と呼ばせていただきたいと思います。
「Ray/レイ」 良かったですね~私も非常に楽しみました。映画も音楽も、ジェイミー・フォックスの成りきりぶりにも。
2位がいきなり 「祇園の姉妹」 は反則のような(笑)
溝口は代表作数本のみしか鑑賞しておらず、「祇園の姉妹」も未見。いつかまとめて観てやろうと考えております。
「運命じゃない人」の内田の才能には期待を寄せています。
確かにこの頃は、時系列を破壊した作品が多すぎますよね。私も好みません。ただし、プロフェッサーが以前に映画小僧とおっしゃっていた「パルプ・フィクション」のタランティーノですが、彼の才能は誰にも書けないようなファンクな会話を織り込んだ脚本にあると私は思っております。
「海を飛ぶ夢」のアメナーバルは私も大好きでございます。「シックス・センス」と「アザーズ」を比較して、前者が圧倒的に面白いとするあるレビューを読み「映画としての格調が違うわい!」と反論したくなったこともございました^^;
「ミリオンダラー・ベイビー」のイーストウッド演出は見事でした。役者も撮影も素晴らしかった。でも、作品自体はそれほど好きではありません^^;
ナレーションは、老トレーナーの回顧という形で観客に語りかけているのだと思っていたのですが、違うのでしょうかね?
「ヒトラー~最後の12日間~」も非常に良かったです。けれど、「なーんだ、言っちまうのか。つまんないの」 と私も感じました。観客へのサービスの意味では良いのですが、作品の余韻を変えてしまうラストの証言は蛇足かと。
3位、8、9、10位は未見です^^;
ギドクは今年、集中して観る予定でございます。
「ベルヴィル・ランデブー」 の音楽、良かったですよね~!
それに、田中裕子の選出、ありがとうございます!(笑)
どうかどうか、お体に気をつけて、これからも楽しく映画を紹介してくださいませ^^
姐さんも寄らないし、皆素通りかとがっかりしていたところですから涙が出てきました。
>シネフィル
いや有難いです。かつては映画館とフィルムセンターやその他の施設を駆けずり回ったものです。大学時代、食事代は尽く映画料金に消え、骨と皮ばかりになりました。今体が優れないのはその時の無理がたたっているようです。
NHK-BSの衛星放送を見ても観ていない作品は殆どありません。観ていない映画が多い人が羨ましい。昔の作品の方が掛値なしに上手く、映画的に刺激的ですから。
「Ray/レイ」は明らかに褒めすぎなのですが、回想場面の扱いなども上手く、ハックフォード久しぶりにやるじゃんと思いましたね。
続く・・・
必ずしも悪い意味ではないですし、評価をしていないわけではありません。が、彼の「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」が全く新しい映画だったのかとなると批判的にならざるを得ません。彼は映画をそれこそ私のように観まくって、その中でキューブリックと「羅生門」から作り上げたのが上記作品、ということが映画を観るだけで解ります。勿論従来のものを一つに併せるのも個性であることは認めますが、世間は騒ぎすぎのような気がしていましてね。寧ろ世間が無視したら私は推すでしょう。
>「ミリオンダラー・ベイビー」
いや、あれはイーストウッドの断絶した娘へ宛てた手紙なんですよ。娘は最後に少しだけ出てきます。それがある故にイーストウッドとヒラリー・スワンクの擬似父娘の意味そしてあの結末が重くなるのです。
さらに、観流すだけでなく、
しっかりと考察しているところが尚すごいです。
私は、まだまだ足許にも及ばないのですが、
いいレビューをたくさん読むことで、
映画の見方や感じ方を学べればいいなぁと思っています。
恐れ入ります。調べてみたら、総本数はともかく初鑑賞作品が少なくて見落とした作品も相当あったはずとがっかりしました。
映画鑑賞の力は他人の意見を尊重する謙虚さを持っていると上達すると思いますが、自分の好きな作品を貶されたという理由だけで誹謗中傷する輩も少なくありません。どちらが正しいかという問題ではなく、映画の理解度を相互に深める折角のチャンスを棒に振っているんです。非常に勿体ないと思います。
映画をどのように評価するのか、というのは個人の主観の問題ですからとかく難しいですよね。誰の意見が絶対か、なんてわかりゃしませんもの。でも同じ作品でも、百人の人間が観れば百通りの解釈の仕方があるわけです。違う意見を目にするのは当たり前。“自分と同じ意見”ではなく、むしろ尊重すべきは“違う意見”だということをこの1年で学びました。
この中では私は「Ray」しか観ていません・・。ははは。
現在は願掛けのため、映画断ちをしています。好きなものを断つという事で。なのでオカピーさんの鑑賞本数には、まぁ今までも追いついたことはないのですが、今年もかなわないと思います。
オカピーさんの映画評を読んで、観たつもりになりたいと思います。
そう、映画の評価とは難しいものです。主観に対してはとやかく言うのは野暮というものです。
但し、客観的に理解できる範囲のことはきちんと理解してから評価を下さないと意味がありません。その上で色々と解釈できるものは解釈し、評価する。それが作者に対する礼儀というものでしょうね。
例えば、「宇宙戦争」は批判が多い映画で、「ナレーションだけの説明で終っている」という人が多いのですが、よく観ていないと言わざるを得ません。
ご覧になりましたか?
古い映画のご鑑賞が多いですからね。戦後の小津も再鑑賞したいなあと思いますが、なかなか。
>映画断ち
いつまでですか? ここは人気のないブログですから、カカトさんのような方がいらっしゃらないと大変です。早めに復帰してください(笑)。
もっと面白い文章なら良いのですけど、本編より面白くては仕方がないでしょうから(笑)。