映画評「僕が9歳だったころ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2004年韓国映画 監督ユン・イノ
ネタバレあり
韓国映画にはトーンが一定しない為に泥臭く感じられる作品が多いが、思春期初期の少年の恋を描いた本作はどうでありましょうか。
韓国中部の慶尚北道の山村、小学校三年生のヨミン少年(キム・ヨク)は喧嘩が滅法強くてガキ大将となっているが、目を悪くした母親を思って些細なバイトで小銭をこつこつと貯め、母親のいない友人に弁当を分けてやる情に厚い少年でもある。
ある日ソウルからおしゃれなウリム嬢(イ・セヨン)が転校して来る。二人は互いに好意を覚えるが、反発するようなそぶりを見せ合う。
<喧嘩するほど仲が良い>を地で行くようなお話しだが、ちょっとややこしいことに、気の強い別の少女クムボクも彼が好きで、ウリム嬢との間に激しい恋の鞘当てが始まる。
恋の鞘当てと言っても二人の少女ともひた隠しにしているので、「アメリカ帰りなんて嘘やろ」などと全く別の事柄にかこつけて言い争うといった、対抗心の燃やし方が微笑ましい。
ウリム嬢は確かに嘘を言っているのであるが、それは父親(継父?)との不仲が原因で、その辺りは終盤で明らかになって行く。
この部分を含めて親子の情が本作の基調と言って良いのだが、母思いの彼が母親にサングラスを買おうと金を溜めようと変な仕事をしているのを母親がひどく責める場面には胸を締め付けられる。母親は文字通り愛の鞭を少年に与えるが、最近の邦画ではなかなか見られない厳しい場面である。
監督はユン・イノ。ウサギを追っていった少女が川で溺れかけ少年が救う挿話に象徴されるように些か舌足らずな部分もあるが、気取りがなく素朴なところが内容に合致していて非常に宜しい。
担任教師は些かおっちょこちょいだが厳しく、母親の態度を含めて、日本ではすっかりたがが緩んでしまった子供の躾という問題も考えさせられます。
2004年韓国映画 監督ユン・イノ
ネタバレあり
韓国映画にはトーンが一定しない為に泥臭く感じられる作品が多いが、思春期初期の少年の恋を描いた本作はどうでありましょうか。
韓国中部の慶尚北道の山村、小学校三年生のヨミン少年(キム・ヨク)は喧嘩が滅法強くてガキ大将となっているが、目を悪くした母親を思って些細なバイトで小銭をこつこつと貯め、母親のいない友人に弁当を分けてやる情に厚い少年でもある。
ある日ソウルからおしゃれなウリム嬢(イ・セヨン)が転校して来る。二人は互いに好意を覚えるが、反発するようなそぶりを見せ合う。
<喧嘩するほど仲が良い>を地で行くようなお話しだが、ちょっとややこしいことに、気の強い別の少女クムボクも彼が好きで、ウリム嬢との間に激しい恋の鞘当てが始まる。
恋の鞘当てと言っても二人の少女ともひた隠しにしているので、「アメリカ帰りなんて嘘やろ」などと全く別の事柄にかこつけて言い争うといった、対抗心の燃やし方が微笑ましい。
ウリム嬢は確かに嘘を言っているのであるが、それは父親(継父?)との不仲が原因で、その辺りは終盤で明らかになって行く。
この部分を含めて親子の情が本作の基調と言って良いのだが、母思いの彼が母親にサングラスを買おうと金を溜めようと変な仕事をしているのを母親がひどく責める場面には胸を締め付けられる。母親は文字通り愛の鞭を少年に与えるが、最近の邦画ではなかなか見られない厳しい場面である。
監督はユン・イノ。ウサギを追っていった少女が川で溺れかけ少年が救う挿話に象徴されるように些か舌足らずな部分もあるが、気取りがなく素朴なところが内容に合致していて非常に宜しい。
担任教師は些かおっちょこちょいだが厳しく、母親の態度を含めて、日本ではすっかりたがが緩んでしまった子供の躾という問題も考えさせられます。
この記事へのコメント
本作のTBを持参させていただきました。
ご指摘の韓国映画でトーンが変調する恋愛物が苦手な私も、本作はとても楽しめました。大雑把な言い方になりますが、作風は邦画に近いのではないでしょうか。
なんと申しましょうか、相も変わらず子供が出てくる作品には、甘いというか弱いというか、やっぱり好きなんですよね、私^^;
次は 「ステップ!ステップ!ステップ!」 の記事を持参させていただきます。
>作風は邦画に近い
韓国・朝鮮の文化が古代日本の生活に及ぼした影響は大きいですし、元来最も近い民族であるし、言語も恐らくは同じグループであるし、朝鮮征伐以降には日本文化の逆輸入もあったはずの韓国、その映画でありますから、本来似ていて当然でありまして、韓国人も素直に作ればこういうのが作れるということです。
日本は戦前から米国・欧州映画に追随して映画先進国だった故に現在技術ばかりが優先された結果面白い映画が少なくなってしまい、一部ジャンルで後進的な韓国映画に凌駕された感がなきにしもあらずですが、ロマンス・コメディを見ると韓国映画はまだまだの感があります。
素朴ながらこれは良いと思いましたね。「おばあちゃんの家」も日本と勘違いしそうな部分があってなかなかでした。