映画評「何がジェーンに起ったか?」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1962年アメリカ映画 監督ロバート・オルドリッチ
ネタバレあり
昨年12月に見た「蝋人形の館」の映画館で掛けられていたのが本作。
いくら僕でもこれを観たのは作られてから大分後の80年代半ばだったと思うが、怖かったですね、ベティー・デーヴィスの化粧が(笑)。
二人の姉妹の50年に渡る憎しみの変遷をベースに作られたロバート・オルドリッチ監督によるニューロティック(異常心理)・スリラーである。ホラーと言っても良い。
子供時代綺麗な妹ベイビー・ジェーンが芸能界の大スターで地味な姉は芽が出ないが、20年後立場はすっかり逆転、そこへ妹が姉を轢く事故を起し、姉ブランチは車椅子の生活を余儀なくされる。
それ以来20年以上も妹が面倒を見ているのだが、姉が今でも人気があるのに嫉妬して動けない姉をいじめ尽くし、歌も碌に歌えないのに芸能界に復帰しようと見果てぬ夢を追ってピアニストを求める。
洋の東西を問わず、かつてのスター女優が恐怖映画に活路を見出す例は少なくなく、日本では化け猫女優になった入江たか子が思い浮かぶが、本作の妹に扮したベティー・デーヴィスと姉に扮したジョーン・クロフォードもお仲間に加えてよろしい。ベティーは「ふるえて眠れ」「誰が私を殺したか」、ジョーンには「血だらけの惨劇」「姿なき殺人」というホラーの出演作がある。
本作では車椅子の姉は二階にいて、電話が一階にあるという設定が巧く使われ、隣の家が細い道を挟んで立っているという環境描写もがっちり。
それを効果的に使ったのが、ピアニスト求人の為に妹が出版社に出かけている間に異常じみてきた妹を入院させたいと思っている姉が階下に降りられないので隣の家に目がげて丸めたメモを投げるが、隣人の代りに戻ってきた姉が拾ってしまう、という場面である。ドキドキしますなあ。
妹の不在中に今度は何とか下に降りた姉が電話を掛けるが途中で妹が戻って来るというサスペンスをカットバックで構成する場面もある。ヒヤヒヤするもののヒッチコックのように超弩級というわけには行かない。やはり妹の留守の間に家政婦が監禁された姉を救おうとしてこれまた途中で戻ってきてしまうサスペンスを同じカットバック処理で描いたのは益々まずい。
が、その少し前バスを待っていたはずの家政婦が画面手前のべティーの車が去りバスが通り過ぎた後も道に立っているのを望遠で捉えたセミロング・ショットは素晴らしかった。サスペンス映画を見ているという気分が盛り上がる。オルドリッチの馬力も大したものだ。
この作品にはどんでん返しがある。
最近はどんでん返しの為ヒッチコックがしてはいかんと主張した<映像によるインチキ>がまかり通っていてサスペンス映画の存在そのものを危うくしているが、事実を巧みに隠すのはインチキではない。
本作でもオープニング・タイトル部分で既に真相がきちんと描かれているのだが、99.9%の人が誤って思い込むように関係者の姿が隠されている。しかし、よく音を聞けば真相が分るのだ。この辺りは映画が映画であった時代の作品という感を強くする。
本作で何と言っても怖いのは、深い皺に刻まれた顔に白粉と口紅を塗りたくった大女優ベティーの老醜であり、その彼女が10歳の時と同じように歌う場面の不気味さはきっと夢に出てきますな。
終ってみれば人間の業の悲しさが心に残る作品。
1962年アメリカ映画 監督ロバート・オルドリッチ
ネタバレあり
昨年12月に見た「蝋人形の館」の映画館で掛けられていたのが本作。
いくら僕でもこれを観たのは作られてから大分後の80年代半ばだったと思うが、怖かったですね、ベティー・デーヴィスの化粧が(笑)。
二人の姉妹の50年に渡る憎しみの変遷をベースに作られたロバート・オルドリッチ監督によるニューロティック(異常心理)・スリラーである。ホラーと言っても良い。
子供時代綺麗な妹ベイビー・ジェーンが芸能界の大スターで地味な姉は芽が出ないが、20年後立場はすっかり逆転、そこへ妹が姉を轢く事故を起し、姉ブランチは車椅子の生活を余儀なくされる。
それ以来20年以上も妹が面倒を見ているのだが、姉が今でも人気があるのに嫉妬して動けない姉をいじめ尽くし、歌も碌に歌えないのに芸能界に復帰しようと見果てぬ夢を追ってピアニストを求める。
洋の東西を問わず、かつてのスター女優が恐怖映画に活路を見出す例は少なくなく、日本では化け猫女優になった入江たか子が思い浮かぶが、本作の妹に扮したベティー・デーヴィスと姉に扮したジョーン・クロフォードもお仲間に加えてよろしい。ベティーは「ふるえて眠れ」「誰が私を殺したか」、ジョーンには「血だらけの惨劇」「姿なき殺人」というホラーの出演作がある。
本作では車椅子の姉は二階にいて、電話が一階にあるという設定が巧く使われ、隣の家が細い道を挟んで立っているという環境描写もがっちり。
それを効果的に使ったのが、ピアニスト求人の為に妹が出版社に出かけている間に異常じみてきた妹を入院させたいと思っている姉が階下に降りられないので隣の家に目がげて丸めたメモを投げるが、隣人の代りに戻ってきた姉が拾ってしまう、という場面である。ドキドキしますなあ。
妹の不在中に今度は何とか下に降りた姉が電話を掛けるが途中で妹が戻って来るというサスペンスをカットバックで構成する場面もある。ヒヤヒヤするもののヒッチコックのように超弩級というわけには行かない。やはり妹の留守の間に家政婦が監禁された姉を救おうとしてこれまた途中で戻ってきてしまうサスペンスを同じカットバック処理で描いたのは益々まずい。
が、その少し前バスを待っていたはずの家政婦が画面手前のべティーの車が去りバスが通り過ぎた後も道に立っているのを望遠で捉えたセミロング・ショットは素晴らしかった。サスペンス映画を見ているという気分が盛り上がる。オルドリッチの馬力も大したものだ。
この作品にはどんでん返しがある。
最近はどんでん返しの為ヒッチコックがしてはいかんと主張した<映像によるインチキ>がまかり通っていてサスペンス映画の存在そのものを危うくしているが、事実を巧みに隠すのはインチキではない。
本作でもオープニング・タイトル部分で既に真相がきちんと描かれているのだが、99.9%の人が誤って思い込むように関係者の姿が隠されている。しかし、よく音を聞けば真相が分るのだ。この辺りは映画が映画であった時代の作品という感を強くする。
本作で何と言っても怖いのは、深い皺に刻まれた顔に白粉と口紅を塗りたくった大女優ベティーの老醜であり、その彼女が10歳の時と同じように歌う場面の不気味さはきっと夢に出てきますな。
終ってみれば人間の業の悲しさが心に残る作品。
この記事へのコメント
おとなしかったですね~。
(でも誰かとおんなじで辛らつな“クチジカラ”は健在)(笑)
>10歳の時と同じように歌う場面の不気味さは・・・
D・リンチの「イレイザーヘッド」のあの白塗り、
プックリほっぺたの歌手は絶対本作のデーヴィスを
リンチが怖がりながら自作に組み込んだと
私は想像しているんです。(笑)
形相での醜悪さはデーヴィスに軍配ですが、
心根の陰湿なイジワルさはクロフォードの演技が
優れていたと思います。
パティ・ペイジの「ふるえて眠れ」が懐かしいです。
ああ~、「イヴの総て」が観たくなりました。
allcinemaのコメントでテンポが遅いとありましたが、サスペンス醸成にこれくらいの時間を掛けないでどうするの、あんた(と頭の中で言いました)。
>「八月の鯨」
年下のベティが年上のリリアン・ギッシュの姉役でした。彼女は全盛期を過ぎてどうも実際の年齢より老け役が多かったですね。
「イヴの総て」は昨年観ましたが、体調不良で居眠りをこいてしまったので、UPなし。どんな良い映画も眠気には勝てません(笑)。
>「イレイザーヘッド」
99%そうでしょうね。
リンチのあのアングラ映画はブニュエルの「アンダルシアの犬」とどうも関連付けたくなります。
J・クロフォードは「雨」という映画が素晴らしかったですが、あの太い眉が結構怖い(笑)。
「ふるえて眠れ」はテープですが、音源ありますよ。
好き度は普通ですけど、立派なもんです。
彼女のような根性のある女優が色々といらっしゃるであろうハリウッドであるから、「イヴの総て」のような生き馬の目を抜くような熾烈な映画界を描く作品もできるのでしょうね。
ベティーも「イヴの総て」も凄い。
姉が隣の家にメモを投げる。あるいは医師に電話する。そこに妹が帰って来る。ハラハラしながら見ました。
ウィキペディアでロバート・アルドリッチ監督の事を調べました。『何がジェーンに起ったか?』でベティ・デイヴィスに演技指導をするアルドリッチ。そう言う写真が載っています。妹が姉を蹴る場面でしょうね。
>ロバート・アルドリッチ監督
僕は【スクリーン】派ですので、オルドリッチと書きます。この辺りをめぐってコメント欄で少々もめた記憶がありますが、一番近いのはオールドリッチでしょう。次の発音を参考のこと。あの時にこういうのがあれば僕の正しさが証明できたのですけどねえ。
https://www.youtube.com/watch?v=UE-zEzdE6mc
オルドリッチは、戦争映画と西部劇が主たるフィールドで、本作や「ふるえて眠れ」は例外ですね。
男性にファンが多い監督です。
>【スクリーン】派ですので、オルドリッチと書きます。
そこに来ましたか!youtubeまでありがとうございました。
>男性にファンが多い監督です。
「飛べ!フェニックス」「カリフォルニア・ドールズ」が面白かったです。
>「女優篇」
持っておらんです。
>「飛べ!フェニックス」「カリフォルニア・ドールズ」が面白かったです。
いいですね。
「飛べ!フェニックス」は、赴任したばかりの新社長が、来日中の外国人を接待した際話題にしたのを思い出します。僕の上司がそのまま“Fly Phoenix"と訳したので、原題は違うのだがなあと思いつつ原題を思い出せなかった、という残念な記憶!
オルドリッチは、その他「北国の帝王」「ロンゲスト・ヤード」「合衆国最後の日」辺りが面白いですよ。
「特攻大作戦」も傭兵もの。これも挙げておきましょう。