映画評「テレフォン」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1977年アメリカ映画 監督ドン・シーゲル
ネタバレあり
続けてロシア(ソ連)絡みのテロ映画となったのは全くの偶然で、こちらは27,8年ぶりの再鑑賞。観るなら断然こちらをお奨め致します。
アクション映画の職人ドン・シーゲルが映画化したスパイ映画。
原作はテロ・サスペンスが大好きウォルター・ウェイジャーの小説で、ピーター・ハイアムズとスターリング・シリファントという才人二人組が脚色に当たっている。
プロローグはモスクワ。ソ連のKGBがダルチムスキー(ドナルド・プレズンス)という人物を急襲するがもぬけの殻。
7週間後アメリカはデンヴァーで、自動車修理工が電話で詩の一節を聞いた途端に車を走らせ、兵器倉庫に体当たりして爆死するという事件が起き、CIAはロシア・タカ派高級官吏が24名も殺された怪事件とこちらの事件の関連性を取り沙汰する。
本作が作られたのは1977年、60年代末からのデタント(緊張緩和)で冷戦ムードが吹き飛び、自由主義体制の敵がソ連からテロリストに変りつつある時代で、その辺りの当惑がCIAでも起こっていることを感じさせるのが大変興味深い。
さて、タカ派ダルチムスキーは緊張緩和ムードが気に入らず、冷戦の最中に薬物催眠してアメリカに送り込んでいた無自覚工作員たちに電話を掛けて事件を起させていたことが徐々に判って来るが、核戦争勃発を恐れるKGBは少佐チャールズ・ブロンスンをアメリカに送り、アメリカ人の女性局員リー・レミックと夫婦を偽装させ、男の暗殺を謀る。
ブロンスン主演の映画としてはアクションよりは頭脳重視のサスペンスで、薬物催眠や完全記憶(フォトグラフィック・メモリー)といった言葉がスパイ映画気分を盛り上げ、シーゲルの演出は序盤の急襲場面から馬力全開。質実だが力強い描写は見応え満点である。
余分な要素を取り去った脚本もやはり才人の作品の感ありで、力のない作家に限ってメッセージなどのまやかしで誤魔化そうとする。幕切れもアメリカ映画らしく気が利いている。
といった次第で、この時代のブロンスン主演映画としては断然の秀作と言うべし。
因みに、原題がTelephoneではなくTelefonなのは、ロシア語の暗号名Телефонを逐一西欧式に置き換えたからである。
1977年アメリカ映画 監督ドン・シーゲル
ネタバレあり
続けてロシア(ソ連)絡みのテロ映画となったのは全くの偶然で、こちらは27,8年ぶりの再鑑賞。観るなら断然こちらをお奨め致します。
アクション映画の職人ドン・シーゲルが映画化したスパイ映画。
原作はテロ・サスペンスが大好きウォルター・ウェイジャーの小説で、ピーター・ハイアムズとスターリング・シリファントという才人二人組が脚色に当たっている。
プロローグはモスクワ。ソ連のKGBがダルチムスキー(ドナルド・プレズンス)という人物を急襲するがもぬけの殻。
7週間後アメリカはデンヴァーで、自動車修理工が電話で詩の一節を聞いた途端に車を走らせ、兵器倉庫に体当たりして爆死するという事件が起き、CIAはロシア・タカ派高級官吏が24名も殺された怪事件とこちらの事件の関連性を取り沙汰する。
本作が作られたのは1977年、60年代末からのデタント(緊張緩和)で冷戦ムードが吹き飛び、自由主義体制の敵がソ連からテロリストに変りつつある時代で、その辺りの当惑がCIAでも起こっていることを感じさせるのが大変興味深い。
さて、タカ派ダルチムスキーは緊張緩和ムードが気に入らず、冷戦の最中に薬物催眠してアメリカに送り込んでいた無自覚工作員たちに電話を掛けて事件を起させていたことが徐々に判って来るが、核戦争勃発を恐れるKGBは少佐チャールズ・ブロンスンをアメリカに送り、アメリカ人の女性局員リー・レミックと夫婦を偽装させ、男の暗殺を謀る。
ブロンスン主演の映画としてはアクションよりは頭脳重視のサスペンスで、薬物催眠や完全記憶(フォトグラフィック・メモリー)といった言葉がスパイ映画気分を盛り上げ、シーゲルの演出は序盤の急襲場面から馬力全開。質実だが力強い描写は見応え満点である。
余分な要素を取り去った脚本もやはり才人の作品の感ありで、力のない作家に限ってメッセージなどのまやかしで誤魔化そうとする。幕切れもアメリカ映画らしく気が利いている。
といった次第で、この時代のブロンスン主演映画としては断然の秀作と言うべし。
因みに、原題がTelephoneではなくTelefonなのは、ロシア語の暗号名Телефонを逐一西欧式に置き換えたからである。
この記事へのコメント
これ、中学生のときにリアル・タイムで観に行きました。同時上映は、リメイクの『恐怖の報酬』。こちらを観たくて言ったのですが、『テレフォン』の方が断然面白かった。
むかしは、2本併映が一般的でしたから、本命ではないもう一本の方の「掘り出しもの」ってありましたよね。
リー・レミックとブロンソンの中年同士のスパイ・アクション
そしてラスト・シーンは双方とも両国家当局を出し抜いてのロマンスの逃避行。敵同士の男女スパイの恋愛ゲームなんかは007の影響でしょうかね?いずれにしても、面白いものは面白かったです。
では、また。
私は大学生でした。もう東京で一人で貧乏学生をやっていました。
東京を選んだ最大の理由が名画座があること。その名画座も今残っているらしいのは早稲田松竹くらい。それも2,3年前の情報なので今は分りません。
仰るように田舎はロードショーでも二本立てですから、本命ではないおまけのほうが面白いということもありましたね。当時はパンフレットも買いました。150円から200円くらい。いや、懐かしいですね。
30年弱ぶりですが、抜群に面白かったです。残念なのは映像の褪色。NHKのBSハイビジョンでやってくれる映画は殆ど発色が抜群で新品同様ですが、これは駄目でした。
この映画「テレフォン」は、監督がドン・シーゲル、脚本がピーター・ハイアムズとスターリング・シリファント、そして主演がチャールズ・ブロンソンと、これだけの面子が揃ったら、そりゃあ、面白くないわけがありません。
とにかく、抜群に面白いサスペンス・ミステリー映画ですね。
ソ連のKGBの職員ダルチムスキー(ドナルド・プレザンス)が、「テレフォン名簿」というトップ・シークレットを盗み出し、アメリカに逃亡を図ります。
名簿には、54人のアメリカ人の氏名と電話番号が記されています。
かつての米ソの東西冷戦の時代に、ソ連政府によって拉致され、洗脳された後、母国アメリカに送り返された54人の市民たち。
「森は美しく、また暗く深い----」で始まる、ロバート・フロストの詩を聞くと、潜在意識下に仕掛けられたスイッチがオンになり、彼らは指定された米軍基地を破壊する"人間兵器"に変貌するのです。
そして、KGBの予想通り、全米各地で謎の爆発事件が連続して発生しますが、それらは、ダルチムスキーが電話を使って"人間兵器"を一人づつ動かし始めたのです。
米ソの東西冷戦の時代は既に終わっており、このままでは事情を知らないアメリカ政府が、モスクワへの核攻撃で報復を開始する可能性もあり得るのです。
この事態を重く見たKGBの首脳の命令で、ボルゾフ少佐(チャールズ・ブロンソン)がアメリカに極秘裏に潜入し、在米の女スパイ、バーバラ(リー・レミック)と合流し、ダルチムスキーを追う事になるのです。
しかし、このバーバラは、CIAとも通じる二重スパイで、ボルゾフ暗殺指令を受けていたのです----------。
この映画でチャールズ・ブロンソンが演じる、アメリカの地理にやたらと精通しているソ連軍人という妙な役柄が抜群に面白く、「レッド・ブル」のアーノルド・シュワルツェネッガーや、「レッド・スコルピオン」のドルフ・ラングレンを軽くしのぐミスマッチさがご愛敬で、嬉しくなってしまいます。
おまけに驚異的な記憶力の持ち主という知的な役柄。
こんなブロンソンは、他ではなかなか見れません。
しかし、相棒のリー・レミックには指一本触れようともせず、やはりここでも、ブロンソンは実の奥さんのジル・アイアランド第一主義かと思わせてくれて、長年のブロンソン・ファンとしては、ニヤリとしてしまいます。
対するドナルド・プレザンスは、セリフがほとんどない役で、フロストの詩を電話口で囁くくらいなのですが、ベスト・パフォーマンスを見せてくれるのです。
遠隔地から電話をかければいいのに、わざわざ標的の家まで赴き、玄関前の公衆電話から指示を送るという間抜けさ。
しかも、サボタージュが成功するかどうかを自分の目で確かめ、自己満足に浸りたいがため、車で延々と"人間兵器"を追いかけ、ソワソワと、そして嬉々として、いつまでも事のなりゆきを見守っているという、この小心者ぶりが実にイカシているのです。
全面核戦争にも繋がる大胆な犯行に及んだのにもかかわらず、動機について、「彼は好戦的で、執着心が強い異常者だから---」としか、言われないあたりも、実にかわいそうな人なのです。
そんな小悪党なので、ブロンソンとの丁々発止の対決とはいかず、クライマックスは驚くほど、あっけないのです。
また、ブロンソンとレミックの絡みもひねりが不足しているという難点はあるのですが、しかし、そこはドン・シーゲル監督、そんな短所を補って余り有る、プログラムB級映画特有の、ふてぶてしさと痛快さをたっぷりと堪能出来る映画に仕上げていて、さすがですね。
>おまけに驚異的な記憶力の持ち主という知的な役柄。
>こんなブロンソンは、他ではなかなか見れません。
ここまで長く映画を観て来た映画ファンを、ニヤリとさせましたね。