映画評「ダーク・ウォーター」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督ウォルター・サレス
ネタバレあり

「リング」により映画ファンにも十分知られることになった恐怖小説家・鈴木光司の「仄暗い水の底から」は既に中田秀夫監督が映画化しているが、「リング」に続いてハリウッドが食指を動かした。

離婚調停中のジェニファー・コネリーが娘アリエル・ゲイドを引き連れ、本土とマンハッタン島の間にある小さなルーズベルト島の寂れたアパートに越して来る。
 階上の住人は越したはずだが、上から水漏れして天井に染みが広がっていき、しぶる管理人ピート・ポスルスウェイトを説得して修繕して貰う。ハイティーンの悪ガキ二人の仕業らしいが、直した後も再び染みは広がる一方で、娘はいないはずの少女と友達となる。空想の産物と思われた少女は階上にかつていた夫婦の娘で行方不明となっていることが判明、ジェニファーは娘を守る為に少女の霊と交渉する羽目になる。

とぼけた面白さのあるフランス映画や情細かやな日本映画がアメリカでリメイクされた場合オリジナルの持っている良さが合理性に台無しにされることが殆どだが、本作も序盤から離婚調停が強調され散文的でがっかり。娘を守ろうと奮闘する母親の愛を恐怖仕立てで表現したオリジナルに比べ、理が情に勝ち過ぎて興醒める部分があるのだ。
 オリジナルでは幕切れで娘が母親に<再会>するのは約10年後だが、こちらでは僅かに3週間後。10年という長さは母親の愛の強さを示す指標でもあったので、この幕切れにもがっかり。

しかし、どうも主題が違うようである。主題が違う以上は同じ土壌で単純に比較しても仕方がない。このリメイクでは、母の娘に対する強い愛情より、都会で奮闘するシングルマザーの孤独が浮び上がって来る。ブラジル人監督ウォルター・サレスがその辺りを丹念に描いているので、結果として採点はオリジナルと同じになった。が、母親の愛情にほだされて流した涙が懐かしいというのが本音である。

この記事へのコメント

viva jiji
2007年03月24日 08:15
怖がらせてもらいたい、
泣かせてもらいたい、
笑わせてもらいたい・・・

映画を観に行く目的はさまざまでしょうけれど
上記のような「~たい、~させてもらいたい」という
動機が昨今、各レヴューに目に付くのですが、
プロフェッサーは、いかがでしょう?

私は「純粋に映画そのものが観たい!」
「映画に逢いに」行くのですが~。

鑑賞後の結果として
「ああ~、楽しかった、切なかった、笑ったわね~」・・
なんですけどね。

「セントラル・ステーション」の監督は
プロフェッサーの書かれているように
失望感と孤独でいっぱいの若い母親が幼い娘を
抱えて荒涼とした人の砂漠のような都会で
生かねばならない苦渋の選択を軸に持ってきました。

“水に流す”という日本独特の諦念は
海を渡った大国では、あのように大量なものに
なりましたが。(笑)

オリジナル未見のまま、鑑賞して私の場合は
良かった、と思っています。
viva jiji
2007年03月24日 08:25
訂正します。

生かねばならない→生きなければならない、に。

イカニモ、ヘン・・・でした。
(全く笑えない、ズルコケ、ダジャレでした)(苦笑)
オカピー
2007年03月24日 15:23
viva jijiさん

ピンポ~ン!
一言も付け足すことがございません。

私も、映画を見に行く。それだけです。
だから、監督名以外の情報は基本的に得ないようにしています。映画を観てまず驚きたい。ひどい場合は役者の顔ぶれを観て感激したり、なんてことも。期待は監督に関するものだけです。

「~したい」という方は、その対象が必ずしも映画ではなくても良いのではないかとさえ思いますね。真っ白な壁を埋めていくのが映画を見る楽しみの一つなのですが。
本作も母の愛云々と言いましたが、それを期待して観たわけではないです。どういうふうにリメイクされているかなと楽しみにしてはいました。本作はハリウッド・テイストとは言えないものの、離婚問題の扱いがアメリカ的だとは思いましたね。オリジナルの記憶も曖昧になっていますが。

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