映画評「黒水仙」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1946年イギリス映画 監督マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
ネタバレあり
マイケル・パウエル=エリック・プレスバーガーの監督コンビの中期代表作である本作は今日まで観られずにいた。今回廉価のDVDを購入しやっと観ることができたが、後述するように画質に問題あり。
カルカッタで修行を積んでいた修道女デボラ・カーが、領主がヒマラヤの絶壁にある古い宮殿を改造した修道院に四人の修道女を率いて院長として赴任、病院や学校の目的も兼ねて布教活動を行うが、高地の辺境という特殊な環境が彼女たちの信仰に揺らぎを与えて行く。
というお話はルーマー・ゴッデンの小説で、異国の環境が外国人の精神に影響を与えるという頗る現代的なテーマが興味を引くが、領主の甥サブーが身につけた黒水仙の香り(映画では伝わらないものの描写がそれを補う)の悩ましさ、領主が連れてきた物乞い娘ジーン・シモンズの官能、近隣にたった一人しかいない白人男性であるデーヴィッド・ファーラー、村民の因習的考えといった要素が具体的に散りばめられていて、巧みに不安を誘引するムードが醸成されている。
終盤には肉欲を呼びさまされる若い尼僧キャスリーン・バイロンを巡ってゴシック・ホラー的な恐さも出て来るが、1946年という製作年を考えると本作最大の収穫は情景を色鮮やかに捉えた撮影(ジャック・カーディフ、アカデミー撮影賞受賞)であろう。しかし、今回のDVDはオリジナルの色彩が維持されていないのはやむを得ないとしても、色ずれが激しく気分良く見られるレベルとは言えない。豊かな色彩美は辛うじて伺える程度なので、これが完全ならば★が一つ分増える可能性がある。
1946年イギリス映画 監督マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー
ネタバレあり
マイケル・パウエル=エリック・プレスバーガーの監督コンビの中期代表作である本作は今日まで観られずにいた。今回廉価のDVDを購入しやっと観ることができたが、後述するように画質に問題あり。
カルカッタで修行を積んでいた修道女デボラ・カーが、領主がヒマラヤの絶壁にある古い宮殿を改造した修道院に四人の修道女を率いて院長として赴任、病院や学校の目的も兼ねて布教活動を行うが、高地の辺境という特殊な環境が彼女たちの信仰に揺らぎを与えて行く。
というお話はルーマー・ゴッデンの小説で、異国の環境が外国人の精神に影響を与えるという頗る現代的なテーマが興味を引くが、領主の甥サブーが身につけた黒水仙の香り(映画では伝わらないものの描写がそれを補う)の悩ましさ、領主が連れてきた物乞い娘ジーン・シモンズの官能、近隣にたった一人しかいない白人男性であるデーヴィッド・ファーラー、村民の因習的考えといった要素が具体的に散りばめられていて、巧みに不安を誘引するムードが醸成されている。
終盤には肉欲を呼びさまされる若い尼僧キャスリーン・バイロンを巡ってゴシック・ホラー的な恐さも出て来るが、1946年という製作年を考えると本作最大の収穫は情景を色鮮やかに捉えた撮影(ジャック・カーディフ、アカデミー撮影賞受賞)であろう。しかし、今回のDVDはオリジナルの色彩が維持されていないのはやむを得ないとしても、色ずれが激しく気分良く見られるレベルとは言えない。豊かな色彩美は辛うじて伺える程度なので、これが完全ならば★が一つ分増える可能性がある。
この記事へのコメント
画質がびっくりするほど悪いです。彼らの作品の命と言ってもよいほどの、あの芳醇な色彩美が半減以下。DVDでこの画質ではがっかりですね。ご指摘の通り、扱うテーマは現代的でもあり、息詰まるような心理ドラマでもあり、非常に興味深いです。デボラ・カーの美しさが話題になりがちですが、ディテールもかなりしっかりしていて良かったと思います。
最近体調を崩しておりまして、ご無沙汰しておりました。気分の良い時にはまたボチボチコメントを入れさせていただきますので、どうぞ相手をしてやってください<(_ _)>。
体調が今一つでしたか。可愛いお子さんもいらっしゃるのですから、お気をつけてくださいね。
「黒水仙」がお好きなはずだったのにどうして何の反応もないのかあ、もしや振られてしまったかなあと不安になっておりました(笑)。
>画質
恐らくはビデオの再利用なのでしょう。DVDとは言え、廉価版は気をつけないといけませんや。
この作品を見る前にフォースターの「インドへの道」を読んでいたので余計に面白かったです。あの作品もインドの濃厚なムードがヒロインに影響を与えてしまいましたね。
デボラー・カーは、二人のコンビ作の「老兵は死なず」で珍しく女性兵士を演じていました。珍品と言うべきでしょう。
>画質
僕が見た500円DVDは、いずれも、タイミングのずれたビデオ映像を見ているように、対象物が移動すると色ずれを起こし非常に不愉快でしたね。
発色自体もかなりお粗末でした。
その一方で、大昔の作品でも全く素晴らしい発色、鮮度の作品もありますから保存レベルの問題も少ないないようですね。