映画評「君とボクの虹色の世界」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督ミランダ・ジュライ
ネタバレあり
ミランダ・ジュライという女性アーティストが出演も兼ねて作り上げたインディ映画。
高齢者タクシーの運転手をしながらデジタルビデオ・アーティストを目指しているミランダは、妻と別居してやがて離婚することになる靴屋店員ジョン・ホークスに片思いをし、紆余曲折の末に思いは通じる。
という話を中心に、ミランダが憧れている女性アーティストが裏ではホークスの息子たちとインターネットで猥褻話をしていた事実、ミランダの送迎している老人の恋、ホークスの同僚と女子高生二人組を巡る奇妙な物語などが相互に関連しながら並行して展開する。
相変わらず群像劇は多いが、これは拾い物的な佳作と言って良い。
登場人物たちはビデオやインターネット、言葉といったイメージの世界の中では頗る積極的に行動出来るが、現実となると全く弱気になってしまう。それを象徴し代表するのがミランダであり、ハリウッド映画のような華やかでない等身大の恋模様の数々に、知り合いの話でも聞いているような親近感が湧き、「人生は楽しいもの」と思えてくる。
登場人物の多さに拘らず複雑さで勝負せず衒いや気取りがないのも好印象に繋がっているが、ミランダ・ジュライというアーティストが自らをヒロインとオーヴァーラップさせているところに一種の二重構造ドラマとしての興趣があります。
2005年アメリカ映画 監督ミランダ・ジュライ
ネタバレあり
ミランダ・ジュライという女性アーティストが出演も兼ねて作り上げたインディ映画。
高齢者タクシーの運転手をしながらデジタルビデオ・アーティストを目指しているミランダは、妻と別居してやがて離婚することになる靴屋店員ジョン・ホークスに片思いをし、紆余曲折の末に思いは通じる。
という話を中心に、ミランダが憧れている女性アーティストが裏ではホークスの息子たちとインターネットで猥褻話をしていた事実、ミランダの送迎している老人の恋、ホークスの同僚と女子高生二人組を巡る奇妙な物語などが相互に関連しながら並行して展開する。
相変わらず群像劇は多いが、これは拾い物的な佳作と言って良い。
登場人物たちはビデオやインターネット、言葉といったイメージの世界の中では頗る積極的に行動出来るが、現実となると全く弱気になってしまう。それを象徴し代表するのがミランダであり、ハリウッド映画のような華やかでない等身大の恋模様の数々に、知り合いの話でも聞いているような親近感が湧き、「人生は楽しいもの」と思えてくる。
登場人物の多さに拘らず複雑さで勝負せず衒いや気取りがないのも好印象に繋がっているが、ミランダ・ジュライというアーティストが自らをヒロインとオーヴァーラップさせているところに一種の二重構造ドラマとしての興趣があります。
この記事へのコメント
これ、良い映画でしたね~。意外なほど(笑)
群像劇の場合、観客が物語に入りこむまで時間を要するものが多いですが、これはツカミがしっかりしているから最初からスルリと映像世界に乗れました。
お父さんの手が燃えるシーンや、車のボンネットの上に乗った金魚など、序盤のエピソードが解りやすくて、気が利いている。
しかも、それぞれの登場人物を程よくイントロデュースしてくれるので、群像の交通整理がとっても親切で巧い。
back and forth forever. なんて、とんでもないことを言い出す弟に対して、お兄ちゃんが 「お前、逮捕されるぞ」 と言うあたりのオカシイこと(笑)
まさしく 「人生は楽しいもの」 と思わせてくれる作品。
「人間は不器用だから面白くて好き」 といった演出家の優しい眼差しが心地よく、やっぱり 「映画は楽しいもの」 と思いました♪
TB持参いたしました。よろしくお願いします^^
>交通整理
「クラッシュ」のように勿体ぶってなかなか関係を見せないことでを売りにする作品に比べ、潔い。
ああいう一般ドラマのミステリー化とでも言うべき作品群は確かに「なるほどなあ」と思わせる部分がある反面、その謎解き効果で本質的パワーを誤魔化している感が否めず、私の場合はすんなりと「素晴らしい」とならないことが多いです。実際分解して整理してみればその通りなのですから、改める必要も感じません。
>人間は不器用だから面白くて好き
全く同意です。作者の視線は優しく、観客が登場人物に自分と似た部分を発見し、若しくは発見できずとも、彼らの不器用さに元気付けられる、そんな作品でしたね。
芸術的な完成度とは別の次元で語りたい作品です。
敢えて言えば、明るい人間喜劇です。【人間喜劇】は、実は、悲劇の別称でもあり、神の視点で捉えた人間ドラマと私は解釈しています。
本作の場合は大事件や悲劇性はないですが、人間喜劇と言いたいところがありませんか。
幼い少年があの書き込みの主だったと知ったアーティストの心境はどうだったか。彼女は恐らく自嘲したでしょう。少年に軽くキスをして去っていく。これが人生だとばかりに。
可笑しいけれど、人間というのはどこか悲しい。しかし、彼らを見ている我々は元気付けられますよね。