映画評「クライング・フィスト」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年韓国映画 監督リュ・スンワン
ネタバレあり

偶然一日にボクシング絡みを二本も観ることになるとは驚きましたなあ。こちらは韓国のドラマで、韓国大衆映画の平均レベルよりは上でありましょう。

下層でうごめく二人の男が主人公である。
 一人は、1990年のアジア大会銀メダリストのチェ・ミンスクで、経営していた工場の火災と後輩への融資のこげつきで妻と不和になり離婚、叩かれ屋をして日銭を稼ぐ路上生活者に零落するが、ある日ボクシングの新人王戦の開催を知り、鍛え直して決勝にまで漕ぎ着く。
 片や、喧嘩とカツアゲで日々を過ごしていた不良青年リュ・スンボムが強盗の現行犯で逮捕され、刑務所の中でボクシングを習う。根性は大して変わらないが、父親の事故死と祖母の入院に気持ちを入れ替え刑務所の代表となって、新人王戦でチェの相手をすることになる。

<一粒で二度美味しい>を狙った作品だが、1+1=2とならないのが映画である。夫々の人生模様は見ごたえがあるが、最後の試合では観客はどちらに応援したら良いのでしょう?
 「いやあ、そういうお話ではないのですよ」という声もあろうが、序盤から夫々の人生を描いた上での展開なのだから、当然どちらかに感情移入する必要がある。

僕ら中年組からすれば「チャンプ」の父親と似たような立場、年齢のチェを応援したくなるが、更生したらしいリュを無碍に無視することも出来ない。つまり設計がまずく、終盤観客はどうしたものかと思い悩むことになる。1+1=0.8くらいになった印象と言って良い。欲をかかず潔く一人に集中して作れば、リメイク版「チャンプ」程度の出来にはなったでしょう。

試合の描写は「俺に賭けた奴ら」から見ればぐっと本格的に処理していて、なかなか宜しい。

この記事へのコメント

viva jiji
2007年05月30日 07:54
はい、DVDで観ました。記事は書いてませんが。

知人がウルウルした目で「どっちもね、勝って欲しい!ってね、
それはそれは切なくて見ごたえのある映画なのよ~」って
言うので、観たのです。
殴られ屋役のチェ・ミンスクの一ファンとしてもね。(笑)

プロフェッサーのご指摘通り、後半は試合のシーン以外は
ダンダラだらだら、完全失速状態。^^

ミンスクはいつものミンスクで(彼、太り過ぎ!・笑)、
いい意味で期待を裏切ったのは目つきの鋭い若いスンボムでした。

韓国映画。
飽きられてきているのは確かですが(大衆はすぐ飛びつきすぐ飽きる)
ギドクやあの復讐3部作のチャヌクがアタマひとつ出て及第点を
クリア出来てると私は改めて思うのですが。

拙記事にもカスッと触れていますがギドクの新作は思いっきり
「×」でした。(悲しい!)
そのうち、プロフェッサーの目にも入ると思いますわ。(^^;)
オカピー
2007年05月31日 00:48
viva jijiさん

映画はキャラメルと違って一粒で二度おいしいはなかなか難しい。私は明らかな設計ミスと思いますね。感情移入など排除するこれが芸術映画なら別ですが。

ミンスクは140パウンド(63kg)ですが、ちょっとインチキ臭い。70は優にあるでしょう(笑)。

>韓国映画
恋愛映画とコメディーは泥臭くて戴けないのに、公開されるのは圧倒的にこの二つ(と言いますか、恋愛映画は半分だけコメディーというパターン)ばかり。
それ以外のジャンルは精選されて輸入されている感がありますので、まずまずでしょう。

>ギドク
読みました。ある意味楽しみになりました(笑)。優秀な監督のものほど<失敗>と言われると観たくなりますね。(^^)

この記事へのトラックバック

  • クライング・フィスト-(映画:2007年78本目)-

    Excerpt: 監督:リュ・スンワン 出演:チェ・ミンシク、リュ・スンボム、イム・ウォニ、チョン・ホジン、ピョン・ヒボン、ソ・ヘリン 評価:71点 公式サイト (ネタバレあります) アジア大会銀メダリストとい.. Weblog: デコ親父はいつも減量中 racked: 2007-07-15 21:00