映画評「ダイ・ハード」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1988年アメリカ映画 監督ジョン・マクティアナン
ネタバレあり
クラシックなシリーズもの復興の気運があり、日本の「犬神家の一族」にびっくりしたが、「ロッキー・ザ・ファイナル」には仰天。そこまでは行かないものの、既にクラシックと言って良い本シリーズも「4」が待機中でござる。監督のジョン・マクティアナンの名はこれで知れ渡ったが、殊勲は脚本のジェブ・スチュアートとスティーヴン・E・デ・スーザだと思う。
ロスアンジェルス、別居中の妻ボニー・ベデリアが幹部をしている日系企業のパーティに招かれたニューヨークの警官ブルース・ウィリスが控えの部屋で待機している時に、テロリストを偽装したドイツ人強盗アラン・リックマンの一味がパーティを急襲、6億ドルの株券引渡しに応じない社長ジェームズ繁田を射殺する。
管轄外だが正義の血が騒いだ彼は単独で1ダースほどから成る一味に立ち向かって行く。
この作品の面白さは、勤務中ではない警官が単独で武装した多勢に向っていく西部劇的な面白さである。別居中の妻を配した脚本は明らかに「真昼の決闘」をベースにしていて、本編中で「このジョン・ウェインはグレース・ケリーと立ち去ることはできないが」と言う強盗野郎に対して「ゲイリー・クーパーだ、あほんだら」と切り返す部分が証明している。
「真昼の決闘」では町の人間が非協力を決め込むが、こちらももっと悪い。FBIを含めた間抜けな白人官憲たちが単独で奮闘する主人公の立場を危うくし、テレビ局の馬鹿者ウィリアム・アサートンが火に油を注ぐのである。
対照的なのは黒人たちで、最初はどじな行動を繰り広げながら最終的には格好良く終っているのが黒人を持ち上げ始めた80年代らしい。強盗団がテロリストを偽装するのもこの時代らしいと言って良い。
面白くなったもう一つの理由は、主人公ウィリス(役名ジョン・マクレーン)が【ついていない男】ぶり、即ち、「真昼の決闘」同様英雄らしくない英雄ぶりを大いに発揮して、ぶつぶつ独り言を言いながら八面六臂の活躍をすることで、「好きなのはロイ・ロジャース」といった台詞も気が利いている。
一味が株券の収められた金庫室を開けるのに成功する場面(上の画像)で、ドイツ強盗野郎の歓びを表現すべくベートーヴェンの「歓びの歌」がかかる洒落っ気も良い。
勿論、攻防戦の息詰まる緊張感が素晴らしく、CGではなくSFXを活用したアクションも迫力満点。今はアクションにまで露骨に漫画チックなVFXを使う時代だが、さあ、「4」の出来栄えは如何でしょうかな。
1988年アメリカ映画 監督ジョン・マクティアナン
ネタバレあり
クラシックなシリーズもの復興の気運があり、日本の「犬神家の一族」にびっくりしたが、「ロッキー・ザ・ファイナル」には仰天。そこまでは行かないものの、既にクラシックと言って良い本シリーズも「4」が待機中でござる。監督のジョン・マクティアナンの名はこれで知れ渡ったが、殊勲は脚本のジェブ・スチュアートとスティーヴン・E・デ・スーザだと思う。
ロスアンジェルス、別居中の妻ボニー・ベデリアが幹部をしている日系企業のパーティに招かれたニューヨークの警官ブルース・ウィリスが控えの部屋で待機している時に、テロリストを偽装したドイツ人強盗アラン・リックマンの一味がパーティを急襲、6億ドルの株券引渡しに応じない社長ジェームズ繁田を射殺する。
管轄外だが正義の血が騒いだ彼は単独で1ダースほどから成る一味に立ち向かって行く。
この作品の面白さは、勤務中ではない警官が単独で武装した多勢に向っていく西部劇的な面白さである。別居中の妻を配した脚本は明らかに「真昼の決闘」をベースにしていて、本編中で「このジョン・ウェインはグレース・ケリーと立ち去ることはできないが」と言う強盗野郎に対して「ゲイリー・クーパーだ、あほんだら」と切り返す部分が証明している。
「真昼の決闘」では町の人間が非協力を決め込むが、こちらももっと悪い。FBIを含めた間抜けな白人官憲たちが単独で奮闘する主人公の立場を危うくし、テレビ局の馬鹿者ウィリアム・アサートンが火に油を注ぐのである。
対照的なのは黒人たちで、最初はどじな行動を繰り広げながら最終的には格好良く終っているのが黒人を持ち上げ始めた80年代らしい。強盗団がテロリストを偽装するのもこの時代らしいと言って良い。
面白くなったもう一つの理由は、主人公ウィリス(役名ジョン・マクレーン)が【ついていない男】ぶり、即ち、「真昼の決闘」同様英雄らしくない英雄ぶりを大いに発揮して、ぶつぶつ独り言を言いながら八面六臂の活躍をすることで、「好きなのはロイ・ロジャース」といった台詞も気が利いている。
一味が株券の収められた金庫室を開けるのに成功する場面(上の画像)で、ドイツ強盗野郎の歓びを表現すべくベートーヴェンの「歓びの歌」がかかる洒落っ気も良い。
勿論、攻防戦の息詰まる緊張感が素晴らしく、CGではなくSFXを活用したアクションも迫力満点。今はアクションにまで露骨に漫画チックなVFXを使う時代だが、さあ、「4」の出来栄えは如何でしょうかな。
この記事へのコメント
印象的な小道具はトランシーバーとガラス。
裸足になったのが、幸か不幸かという筋回し。
奥さんのパンチでスカッとするラストがいいですねぇ。
なんだそうです。^^
きょう観た新作映画の前に予告編たっぷり観せられました。(笑)
日本人向けにウィリスがたどたどしい日本語で「ミテクダサイ!」
って言ってました。
予告編を観た限りではあの「BAD BOYS」+「アイランド」の
ドッチャングッチャンCGテンコ盛り要素の強い活劇みたいです。
あまり期待しないようにして観には行きますが・・・。(^^;)
先ほど観ました。
あれだけ観てもCGが思いっきり使われていました。CGとSFXでは行って来るほど違うんですがねえ。CGのほうがコストがかからないのかなあ。
80年代SFXはほぼ究極まで来ていたのに、21世紀に入って実写で撮れる場面までCGを使うようになってきたのは問題。
「タワーリング・インフェルノ」と並んで、一つの高層ビルをテーマにした二大名作ですね。
>奥さんのパンチ
殴られるのはアサートン君ですね。彼が最初に印象に残ったのは「ミスター・グッドバーを探して」だったかな。
>4.0
コンピューターのヴァージョンではないのですから、素直に4で良いのに。タイトルを付ける連中もコンピューターべったりですね。
監督をしているのが吸血族と狼男族が戦う人間不在映画「アンダーワールド」の監督と聞きましたから、大いに“期待”できますね(笑)。
人間不在という意味では似たようなレベルの「アイランド」もびっくりの怪作にならなければ良いですがねえ。
お恥ずかしいのですが、最近、レトロな作品ばかり買っております。(笑)
未知の映画ばかりなのでプロフェッサーの評価と感想をと。
ずらっと5本並べますのでお時間のあるときでけっこうですので
短いお言葉いただけましたら嬉しいのですが。
「ミッドウェーの戦い/メンフィス・ベル」
これ、凄い!フォードとワイラーのドキュメンタリーらしいの!
「異常な愛」(ルイス・マイルストン)
「夜歩く男」(アルフレッド・ワーカー)
これは題名とR・ベースハートが気になって。(笑)
「ホブスンの婿選び」(デヴィッド・リーン)
リーンはもちろん、大好きなC・ロートンが出てまして。
「悪い種子」(マービン・ルロイ)
衝撃的な舞台劇の映画化!というコピーに惹かれまして。
勝手な申し出おゆるしくださいませ。
いまや、懐かしい作品ですね。何度も鑑賞しました。
おっしゃる通り、黒人の相棒がいいのと(相棒といっても基本はひとり立ち向かうのですが、)、ついていない男、英雄らしくない点がいいですよね。
あと、変なところに目がいく私は、小道具として、使っていた銃、ベレッタM92F(S)が印象的でした。私の中では、香港映画「男たちの挽歌」で強烈に登場したこの銃、米画では「リーサル・ウェポン」でメル・ギブソン扮するリッグスが好んで使い、その後、この作品でマクレーンが使ったことにより広くしられたんではないでしょうか(以前にも使用している作品はあるかもしれませんが)。構造上左ききにも使いやすい点と、そのスタイリングの美しさと装弾数15発という点が映画向きだっただと思います。変なコメントですみません。
「リーサル・ウェポン」も4までつくりましたが、あれは全て同じ監督でキャラをふやして、主人公の老いを描き、かなりアットホーム的にまとめましたが、こちらはタイプが違うのでどうでしょう。
ただ、ダイハードの場合、厳密には違いますが、「ダーティー・ハリー」のような例もあるので、どうでしょうかね。歳老いてもたまに描くのはやりようによってはいいのかも。
いやいや、ご遠慮なく。こういうのは楽しみの一つですから。
既に購入済みなんですよね? なら多少気が楽です(笑)。
●ミッドウェーの戦い/メンフィス・ベル
ワイラーとフォードが共同監督なんてあったかなあと思ったら、二本立てなんですね。ああ、びっくりした。^^;
どちらも戦争ドキュメンタリーですね。ワイラー「メンフィス・ベル」は有名ですが、日本未公開で未見。ワイラーのドキュメンタリーというだけで観る価値は十分ですね。その後同じ題名でワイラーの娘さんが劇映画化しました。
「海ゆかば」というフォードのドキュメントを集めた編集映画で、恐らくこの「ミッドウェーの戦い」というのも収めていると思います。
●異常な愛
ルイス・マイルストンというのが興味をそそりますが、これも未公開ですね。ということでこれも未見。しかし、バーバラ・スタンウィック主演のフィルムノワールらしいから、期待値は高いです~。
●夜歩く男
やっと日本公開作品ですが、なかなか思い出せなかった(笑)。
戦後流行ったセミ・ドキュメンタリーの中級犯罪映画。撮影は良かった気がします。ベースハートとしてはちょっと珍しい役で、今観れば却って良いかも。
同じ頃の作品ならジュールス・ダッシンの「裸の町」とか「街の野獣」が凄いです。御覧になりました? 私としては有名な前者より後者の方が良いと思います。おっと、話がそれましたね。
●ホフマンの婿選び
大作に移行する前のリーンの秀作。英国らしい地味な喜劇ですが、これがなかなか良いんです。チャールズ・ロートンは時々オーヴァーアクトになるますが、この映画は巧かったですよ。
●悪い種子
怖い映画です。マーヴィン・ルロイというのが些か畑違いでちょっと押しが弱いかなあと思いつつ、それでも相当怖い。ヒロインが「噂の二人」の少女の従姉というのは・・・嘘です(笑)。
私は武器・銃器は弱いです。観るだけ。
知人に詳しい人がいますから、話があうかも。まさかイエローストーンさんはその本人ではないでしょうね?(笑)
取手ですから違いますね。^^;
「リーサル・ウェポン」の第1作も面白かったですね。
いやあ、私は批判的ではないんですが、こうぞろぞろ出てくるのはリメイク・ブームと並んでネタ不足を露呈し、そしてCG閲覧会をそんなにやりたいとのかあという思いがするだけなんです。
CGではなくSFXなら良いんですがねえ。CGは細工がどうしても分ってしまう。CGに頼る監督はショットが下手ですしね。オールド・ファンとしては寂しい時代になったものです。
>ああ、びっくりした。^^;
ああ~、ごめんなさ~~い!(^^;)
字数の兼ね合いではしょってしまったんです。(ペコッ)
>スタンウィック主演のフィルムノワールらしいから
でしょう?^^あの作品を彷彿とさせますもの~、うふふ。
>「街の野獣」が凄いです。御覧になりました?
観たいと思ってもDVDになっているかどうか・・・
>チャールズ・ロートンは時々オーヴァーアクト・・・
わかります、わかります。(笑)
才気走り的なゴリ押し芝居をする人でもあります。(笑)
>マーヴィン・ルロイというのが
そうなんです!あのメロメロものの大家(笑)が
この題材をどう扱っているか変な興味がわきまして。^^
いやほんとに優一郎さんがおっしゃっている通り素晴らしいですね!
映画の「生き字引」!「歩く映画辞書」!
もっと言いましょうか?「山奥の双葉センセ」!!♪(^^)
実はまだ他にもあるんですが(しつこいですわね・笑)、
「掲示板」のほうでお聞きしたほうが良いでしょうか?
お役に立てたでしょうか。
人間、いかんせん記憶に限界があるもので、どんな勘違いをしているやら。
それから、よく観たら「ホブスンの婿選び」が「ホフマンの婿選び」になっていますし、てにをはも出鱈目ですし、あははは。実は同じ年代に「ホフマン物語」という映画があったものですから、頭の中で思わず混線しました。わが灰色の脳細胞も大分いかれちまったわいな(泣)。
>他にも
いえいえ、こちらのほうが読む人が多いので、こちらにどうぞ。別の記事の方がいいかもしれませんが。
最近毎日ブルース・ウィリスであります(苦笑)。
無料の民放はCMカットがあるので基本的に見ませんが、タイアップというよりは一方的にすがっている感じもありますね。
「4.0」というのはやはりコンピューター時代らしいバージョン表記のつもりでしょう。くだらないです。
アクション映画は実写が基本ですが、CMでやった場面でも明らかにVFXなので、早くも興醒めしています。映像はともかく、話が面白ければまあ良いですけど。
ええーそれで「4.0」ですか!格好悪るーーいなぁ。
<CMカット
うーっむ、それは仕方ないなぁという感で観てます。今回はエンディング曲もカットされておるーとかそいう観賞もイイでしょ^^;)?
場面のカットよりCMによる中断が大きな問題でしてね。
映画監督はコンマ数秒の単位で映画を作っている。呼吸を大事にしているわけです。最初からCMを頭に入れて作っているTV映画とはそこが違います。
そうなると民放方式の放映は、内容が解るだけと言われても仕方がないでしょうね。
30年前ヒッチコックの傑作「フレンジー」のハイライトを分割して放映したのを観て、映画批評家・滋野辰彦氏はその場でTVを消しました。私も怒りまくりました。映画の命である連続的場面を二つに分けたんですよ。TVでは次のお楽しみというのでハイライトを二分しますが、映画の場合は作品が大きく傷つきます。
ヒッチコックがこれを観たら、日本のTV局にはもう売らんと言ったでしょう。そのくらいひどい放映でした。