映画評「ロシアン・ドールズ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年フランス映画 監督セドリック・クラピッシュ
ネタバレあり
エラスムス計画で国際交流する若者たちの青春群像を描いた「スパニッシュ・アパートメント」の続編に当たるドラマだが、僕の趣味から言えば、いかにも群像劇的な散漫さで退屈するところもあった正編より面白い。監督は勿論変らず、セドリック・クラピッシュで、デジタル時代のトリュフォーといった感触を残す。
前作から5年後、30才になったロマン・デュリスは軽い小説を書く一方で、TVドラマの脚本を共同執筆しているケリー・ライリーやゴーストライターとして知り合った人気モデルなどと付き合いながら、昔の恋人オドレー・トトゥとも腐れ縁が続いている。
ケリーの弟ケヴィン・ビショップがロシア人バレリーナとゴールインする模様を加え、軽佻浮薄な生活を送ってきたデュリスもそろそろそうした人生にケリをつけようかという心境になる幕切れは捨て難い味を残す。トリュフォー「恋愛日記」やルネ・クレマン「しのび逢い」のような喜悲劇的な苦味ではなく、通り過ぎていった女性たちをロシアン・ドールズ即ちマトリョーシカに喩える、青春回顧調の甘酸っぱい味である。
主人公が大口を叩く時(?)に使われる笛を吹く姿のオーヴァーラップ、彼が英仏間を移動する度に挿入されるユーロスター(高速列車)のショット、歩くモデルを延々と追うカメラワークなど、全編に渡り洒落っ気満点で、アントワーヌ・ドワネルものを演出するトリュフォーを思い出して嬉しくなった。
「ルパン」ではミスキャストとしか思えなかったデュリス君もこのシリーズでは等身大の若者を好演。
日本でも大口を叩くことを法螺を吹くと言います。
2005年フランス映画 監督セドリック・クラピッシュ
ネタバレあり
エラスムス計画で国際交流する若者たちの青春群像を描いた「スパニッシュ・アパートメント」の続編に当たるドラマだが、僕の趣味から言えば、いかにも群像劇的な散漫さで退屈するところもあった正編より面白い。監督は勿論変らず、セドリック・クラピッシュで、デジタル時代のトリュフォーといった感触を残す。
前作から5年後、30才になったロマン・デュリスは軽い小説を書く一方で、TVドラマの脚本を共同執筆しているケリー・ライリーやゴーストライターとして知り合った人気モデルなどと付き合いながら、昔の恋人オドレー・トトゥとも腐れ縁が続いている。
ケリーの弟ケヴィン・ビショップがロシア人バレリーナとゴールインする模様を加え、軽佻浮薄な生活を送ってきたデュリスもそろそろそうした人生にケリをつけようかという心境になる幕切れは捨て難い味を残す。トリュフォー「恋愛日記」やルネ・クレマン「しのび逢い」のような喜悲劇的な苦味ではなく、通り過ぎていった女性たちをロシアン・ドールズ即ちマトリョーシカに喩える、青春回顧調の甘酸っぱい味である。
主人公が大口を叩く時(?)に使われる笛を吹く姿のオーヴァーラップ、彼が英仏間を移動する度に挿入されるユーロスター(高速列車)のショット、歩くモデルを延々と追うカメラワークなど、全編に渡り洒落っ気満点で、アントワーヌ・ドワネルものを演出するトリュフォーを思い出して嬉しくなった。
「ルパン」ではミスキャストとしか思えなかったデュリス君もこのシリーズでは等身大の若者を好演。
日本でも大口を叩くことを法螺を吹くと言います。
この記事へのコメント
デュリスに「学習しようよ」と画面にツッコみました・笑。
続きがあって欲しい気がします。
ちのさんと違う意味かもしれませんが、面白かったです(笑)。
私は最後はなかなか良い味だったと思うのですが。
もちろんドワネルもの好きですよ~♪
ドワネルもしょうがない奴ですからね。どこまでトリュフォーの実像と重なるんだろうか。
因みに「恋愛日記」のあの足フェチおじさんはどうでしょうか? あれは単なるすけべと言っても良いのでしょうが(笑)。
前作スパニッシュ・アパートメントも若者の雑居感が好きでした。少し落ち着いて、でもまだ青い彼ら。本作は劇場で見たのでが、ぼちぼち見直してもP様のコメント読んで思いました。デュリスは動きが魅力的な役者ですね。
アントワーヌ物みたいに、このコンビでシリーズ考えているって監督コメントありましたね。
フランス映画に多いタイプでしょうね。実際のフランス人がそうなのかは解りませんが。
デュリスは私の英雄ルパンには似合わずぶーぶー言ったのですが、こちらはさすがに良いです。
監督のコメントは知らないのですが、シュエットさんのコメントから思い立って検索してみたら、そんなことが書いてある記事を発見しました。別の記事では本作は「恋愛日記」に影響されていると書かれていましたよ。勘だけは結構いいなあ、と自分に感心した次第(笑)。
「ロシアン・ドールズ トリュフォー」で検索したら本記事がトップで、照れました。
権威なんてことはないですが、最初の笛吹き場面からドワネルものを思い出しましてね。主人公の何だかよく解らない性格もダブりますし。
ドワネルものではない「恋愛日記」の最後は全く違いますが、女性遍歴を小説にしようといった発想にはどこか似たものを感じます。
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