映画評「うつくしい人生」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1999年フランス映画 監督フランソワ・デュペイロン
ネタバレあり

一昨日観た「クレールの刺繍」はフランスの景観の中に少女の心理の動きを描いて全く素晴らしかったが、これも作風としては近いドラマである。

南仏、収支やりくりに苦しんでいるところへ狂牛病の為飼っていた牛を始末する羽目になり袋小路に入った農場主が縊死、言われるまま農業を手伝い惰性的に生きていたらしい長男エリック・カラヴァカはこの先の人生について悩み始め、祖父は衝撃を受けて認知症を発病する。
 青年はその直前種子を買った帰りに乗せた山村に住む元オペラ歌手イザベル・ルノーに惹かれるが、実際には恋に恋するような曖昧な心境である。最終的にこれが自宅を引き払って麓の小屋に移るモチベーションとなり、再会したイザベルと新しい人生を歩む決心をする。

食べられるだけのお金があればいいと思うがそれさえ上手く行かず苦悩する青年が、山村の生活に必ずしも満足し切れていない若い寡婦と互いを慰め合うような形で再生して行く物語だが、心理や心情に曖昧なところが多くて面白いとは言いにくい。図式としては理解出来るが、具体的に伝わって来ないのである。

時々挿入される風景は美しく、アッバス・キアロスタミを思わせるロング・ショットは大変素晴らしい。「クレールの刺繍」と同じく絵画的な魅力が持ち味なわけだが、残念ながら主人公の心理がその映像にそれほど深く沈潜していず、素直に感動するところまでは行かない。

この記事へのコメント

2007年08月06日 10:46
<アッバス・キアロスタミを思わせるロング・ショット
なるほど、あの美しく静かな風景はキアロスタミっぽい感じもしますね。「クレールの刺繍」は未見ですが、こちらよりも良かったというご意見なので宿題リストに入れておきたいです。
オカピー
2007年08月07日 03:21
ぶーすかさん

好みの問題もありますが、「クレールの刺繍」のほうがすんなりお話が入ってきましたね。やはり景色を大事にした作品ですが、景色にヒロインの心情が上手く沈潜していると言いますか、それでいて説明的ではないんですよ。

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