映画評「忘れえぬ想い」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2003年香港映画 監督イー・トンシン
ネタバレあり

わが市に乗合タクシーと言うのがある。タクシーと行ってもマイクロバスで、公営である。運転手は公務員で生活に何の不安もない。
 一方、香港ではミニバスの運転手は組合に所属しているが、事実上個人経営だから個人タクシーの感覚に近く、客の奪い合いとなる。その辺りがよく解るのがこの作品最大の収穫と言って良い。

ミニバスの運転手だった子持ちの青年が交通事故で死に、結婚直前だった恋人セシリア・チャンは何としても彼の子供(原島大地)を自分の手で育てようと一念発起、事故を起したバスを修理して自ら運転手になる。
 青年の最期を見届けた同僚ラウ・チンワンが運転技術も競争力もない彼女に見かねて色々指導するが、組合への加入など残す課題は多く、姉との関係がぎくしゃくした挙句に、遂に子供を手放そうとする。
 しかし、妻子との生活を棒に振った過去のあるラウは二人との生活に未来への想いを馳せ、思い留まらせる。

ロマンスというよりは人生ドラマ寄りの作りで、死んだ青年の両親、彼女の両親と姉、少年の母、ラウの別れた妻を交わらせて実感が醸成されているのが大いに宜しい。

その一方で、セシリアが青年の携帯へ電話を掛けるショットを何度も繰り返し、そこから回想場面に入って小出しに説明していくのがくどく、些か興醒める。彼女の「忘れえぬ想い」をもう少し上手く処理していたらぐっと好感度も上がったのだが。

日本ならミニパトで違法駐車取締りの奪い合い、なんてことはないです。^^;

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック