映画評「RENT/レント」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督クリス・コロンバス
ネタバレあり
観客がリアリズム志向になる中でミュージカル映画は80年代以降幻想か楽屋裏のような方法に逃げることが多かったが、本作はそういう言い訳のないミュージカル映画らしい作品である。その意味では大変気に入った。
原作は本番を観る前に故人となったジョナサン・ラースンのブロードウェイ・ミュージカル(ロック・オペラ)。
1989年年末のニューヨークはイースト・ヴィレッジが舞台である。
元の仲間テイ・ディッグズに立ち退きを迫られる映像作家アンソニー・ラップとミュージシャン志望のアダム・パスカル、ラップの元恋人で再開発をパフォーマンスで抗議するイディナ・メンデル、彼女の今の恋人で女性弁護士トレイシー・トムズ、哲学教授を辞めて戻ってきた黒人インテリのゲイシー・L・マーティンを暴漢から助けて恋仲になるゲイの青年ウィルスン・ジャーメイン・ヘレディア、パスカルと恋に落ちるSMクラブの踊子ロザリオ・ドースン。
この8人が繰り広げる群像劇で、ヘレディア、パスカル、ロザリオの三人はエイズ患者ということで、時代性をたっぷり織り込んだ内容であるわけだが、ミュージカル・コメディーとくくられた時代があったようにミュージカルとコメディーは不可分だったのに、「ウェスト・サイド物語」以降社会性のないミュージカルは殆ど評価されなくなり、本作も気に入ったと言いながらもまだ本来の姿ではないと思う次第。
クリス・コロンバスは余り感心しない監督なので些か心配だったが、かつて「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」でフランク・オズが見せたような映画的ダイナミズムは認められないものの、舞台ミュージカルの映画化として無難と言って良い。正義の為に反体制的な行動を取り、現実と理想との落差に苦しみ、やがて希望を見出していく若者たちがしっかりと点出されて感動的である。
ミュージカルとしての評価を決める部分については、ラースンが一人で書いたとは思えぬほど楽曲はバラエティーに富むのが気に入ったが、やはりテーマ曲とでも言うべき「52万5600分」(正確にはSeasons of Love)が秀逸。舞台からやってきた演技者たちの歌唱はさすがに見事で、その中に混じって一般女優のロザリオ・ドースンも遜色がない。
虹の彼方にサンホセへの道があったとさ。
他の方のレビュー⇒
「RENT/レント」(風に吹かれて)
2005年アメリカ映画 監督クリス・コロンバス
ネタバレあり
観客がリアリズム志向になる中でミュージカル映画は80年代以降幻想か楽屋裏のような方法に逃げることが多かったが、本作はそういう言い訳のないミュージカル映画らしい作品である。その意味では大変気に入った。
原作は本番を観る前に故人となったジョナサン・ラースンのブロードウェイ・ミュージカル(ロック・オペラ)。
1989年年末のニューヨークはイースト・ヴィレッジが舞台である。
元の仲間テイ・ディッグズに立ち退きを迫られる映像作家アンソニー・ラップとミュージシャン志望のアダム・パスカル、ラップの元恋人で再開発をパフォーマンスで抗議するイディナ・メンデル、彼女の今の恋人で女性弁護士トレイシー・トムズ、哲学教授を辞めて戻ってきた黒人インテリのゲイシー・L・マーティンを暴漢から助けて恋仲になるゲイの青年ウィルスン・ジャーメイン・ヘレディア、パスカルと恋に落ちるSMクラブの踊子ロザリオ・ドースン。
この8人が繰り広げる群像劇で、ヘレディア、パスカル、ロザリオの三人はエイズ患者ということで、時代性をたっぷり織り込んだ内容であるわけだが、ミュージカル・コメディーとくくられた時代があったようにミュージカルとコメディーは不可分だったのに、「ウェスト・サイド物語」以降社会性のないミュージカルは殆ど評価されなくなり、本作も気に入ったと言いながらもまだ本来の姿ではないと思う次第。
クリス・コロンバスは余り感心しない監督なので些か心配だったが、かつて「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」でフランク・オズが見せたような映画的ダイナミズムは認められないものの、舞台ミュージカルの映画化として無難と言って良い。正義の為に反体制的な行動を取り、現実と理想との落差に苦しみ、やがて希望を見出していく若者たちがしっかりと点出されて感動的である。
ミュージカルとしての評価を決める部分については、ラースンが一人で書いたとは思えぬほど楽曲はバラエティーに富むのが気に入ったが、やはりテーマ曲とでも言うべき「52万5600分」(正確にはSeasons of Love)が秀逸。舞台からやってきた演技者たちの歌唱はさすがに見事で、その中に混じって一般女優のロザリオ・ドースンも遜色がない。
虹の彼方にサンホセへの道があったとさ。
他の方のレビュー⇒
「RENT/レント」(風に吹かれて)
この記事へのコメント
(ちあきなおみの「喝采」のフレーズで^^)
去年、「プロデューサーズ」「ナイロビの蜂」など
素晴らしい大作の中に地味に公開された本作、
ちょうど宣伝攻勢狂奔(笑)の「ダヴィンチ~」ばかりに
話題も偏り興行的には・・・シュエットさんあたりの
大都会ならいざ知らず、特に北国など鳴かず飛ばずの
入りだったかと。
でも「プロデューサーズ」とは全く違った趣きの
パワフルな青春群像ミュージカル!
題材は暗いけれどあの熱気に溢れた映像と音楽は
くっきりと思い出せます♪
時代が求めていたとも言える「ウェスト・サイド物語」・・・
往年のミュージカル・コメディの存在価値を
でんぐり返してしまった、云わば罪なヤツ・・ですか(^^)
一人の作者が作ったものとしては実にバラエティーに富み、かつ印象的な曲が多いですが、クリス・コロンバスは舞台色を残し、映画として余り冒険しなかった、という印象で、舞台で八人を映したオープニングがインパクトを与えるのは皮肉であります。
それが曲を聴いても映像が浮んでこないという理由かもしれませんね。
「プロデューサーズ」は既に観るチャンスがあったのですが、次回に延期しています。具合ちゃんはどうなのかな。
>興行的には・・・
昨日のアクセス3件が、本作への関心の低さを物語っていました。昔から日本人はミュージカル嫌いですから、ちょっとショックでした。
しかし、今日のアクセスは順調で、二日でトータル20に届きました。^^)v
これなら平均以上かも。
本作の様な躍動感を観ますと、内容は全く違いますが、「ジーザス・クライスト・スーパースター」が登場した70年代初めを思い出します。言わばロックオペラ台頭期。同じ年に「ゴッドスペル」も公開されていますが、こちらは未見。面白そうなんですが。
>ウエスト・サイド物語
この場合、映画にも作者にも罪はありません。(特にアメリカの)批評家や映画マニアの狭量がいけんのですわい(笑)。
やはり地域カラーって出るんですね。大阪ではこれ案外口コミで予想以上の入りだったみたい。友人に教ええあげて、友人が見にいったらパンフが品切れで、後日買いに行ったそうです。
ブログの初日がアクセス不調だったので「あれっ?」と思ったのですが、翌日大分挽回してくれました。^^
こういう作品は当然当地のような田舎には来ません。
ましてミュージカルの舞台など観られるはずもありません。
「笑の大学」について映画化する必要があるのかというコメントを目にしましたが、何でも利用できる都会人の発想。
勿論原作たる舞台を離れて映画的になったほうが嬉しいわけですが、そのままでも観られるだけで十分価値があるというものです。
田舎者の愚痴でした。^^;
「I should tell you」(←綴りはいい加減です)が、愛してると聞こえてきて、パスカルとロザリオがみつめあいながら愛を語り合っているシーンは、耳を疑ってしまいました。
迸るような情熱を感じ、若いっていいなぁと感じられました。
難しいことは、わからないのでこのへんで(^o^;
>52分5600分
正確には、Seasons of Love と言うらしいです。^^;
>I should tell you
No problem.
あははは、【空耳アワー】だ。確かに「あいしてる」だ。
大発見ですね!
ミュージカルは本来観た後元気が出ないとね。リアリティは他のジャンルに任せて、という感じ。
TBさせていただきますね。
TB&コメント、有難うございました。
意識的に舞台色を残したこうした作品では、やはり、舞台の躍動感が感じさせることを目的としているんでしょうね。観ていてわくわくしてきました。描かれている内容には悲惨なものもありますが、未来に希望を託したんでしょうね。
カメラの扱いが演芸ドキュメンタリーみたいだった「プロデューサーズ」より映画として楽しみました。