映画評「時をかける少女」(1983年版)
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1983年日本映画 監督・大林宣彦
重要なネタバレあり、未観賞の方は避けられたし
筒井康隆のジュブナイルSF小説「ラベンダーの香り」の二度目の映像化。最初は1972年NHKが「タイムトラベラー」で、観たような記憶もあるが、どうもはっきりしない。その後4度映像化され、最後はご存知のように凡そ20年後の続編的リメイクのアニメ。
こちらは勿論リアル・タイムで観たが、あれから24年。デビュー作だった主演の原田知世も今年40歳になる。この映画のインパクトが大きくてその後代表作たるものがないという評判を聞くが、僕は異論ありで、なかなか真価が理解されない「早春物語」こそが彼女の代表作ではないかと思っている。
高校1年生の少女・芳山和子(原田)は、実験室でフラスコから出たラベンダーの香りのする煙を吸って失神、手当てを受けて帰宅するが、それから調子がおかしくなる。次の日の経験を先にしてしまうのである。
厳密には、時は不可逆なので、彼女自身が過去に戻る力を得たことになる。映画ではタイム・リープという言葉で説明されているが、一般的にはタイム・トラベル若しくはタイプ・トリップで十分。
彼女には同級生、深町一夫(高柳良一)と堀川五郎(尾美としのり)と幼馴染で、乙女心を寄せているのは深町君のほう。しかし、彼には幼年時代に作ったはずの指の傷痕がなく、逆に堀川君にあることに気付く。
それに絡んで、深町は最後に意外な告白をする。
彼は27世紀の医学博士で、薬草の研究をしに20世紀にタイム・トリップしてきたこと、本物の深町少年は両親と共に交通事故死していること(和子が彼の部屋に上がった時に両親の写真を見るのが伏線となっている)、彼との思い出は堀川からの借り物であること、プロローグの旅行で彼らは初めて出会ったこと、等々。
初観賞時に「日本では珍しいタイム・トリップもの」と書いているように、当時の日本ではタイム・トリップ若しくはタイプ・スリップを扱うことが稀で、元来この手のお話が好きだったので相当興味深く見た。今観てもディテールに殆ど矛盾がない。
序盤が青春模様が中心で些かまだるっこいが、SF映画以上に青春映画として作りたいという作者側の思いが強かったのであろう。結果的には、タイム・トラベルものの面白さもさることながら、和子の思春期らしい心情をデリケートに追った部分が印象に残る。「転校生」「さびしんぼう」を始め、大林監督はファンタジーの形式で青春像を描くのをライフワークとしていると言って良いと思う。尾道を舞台にするのが彼の拘りであるのは周知の通り。
ストップ・アニメーションを併用した8mm的な手作り感覚も大林監督らしく、全体の古めかしい印象も意図的なものである。「ハウス」以降の作品を殆ど観ているが、これが余りに華麗に流麗になるのは良し悪し、却って面白味がなくなってしまう。
最後のタイトルバックもユニーク。舞台セットに演技陣のいる中を原田知世が主題歌を歌って歩くのである。大林監督ならではの洒落っ気で、これをプロモーション・フィルムと言うのは些かセンスレスである。
大林監督には、和子が「東京物語」の老夫婦(尾道に暮している)に出会う話をこしらえてもらいたいです-小津と大林のファンより
1983年日本映画 監督・大林宣彦
重要なネタバレあり、未観賞の方は避けられたし
筒井康隆のジュブナイルSF小説「ラベンダーの香り」の二度目の映像化。最初は1972年NHKが「タイムトラベラー」で、観たような記憶もあるが、どうもはっきりしない。その後4度映像化され、最後はご存知のように凡そ20年後の続編的リメイクのアニメ。
こちらは勿論リアル・タイムで観たが、あれから24年。デビュー作だった主演の原田知世も今年40歳になる。この映画のインパクトが大きくてその後代表作たるものがないという評判を聞くが、僕は異論ありで、なかなか真価が理解されない「早春物語」こそが彼女の代表作ではないかと思っている。
高校1年生の少女・芳山和子(原田)は、実験室でフラスコから出たラベンダーの香りのする煙を吸って失神、手当てを受けて帰宅するが、それから調子がおかしくなる。次の日の経験を先にしてしまうのである。
厳密には、時は不可逆なので、彼女自身が過去に戻る力を得たことになる。映画ではタイム・リープという言葉で説明されているが、一般的にはタイム・トラベル若しくはタイプ・トリップで十分。
彼女には同級生、深町一夫(高柳良一)と堀川五郎(尾美としのり)と幼馴染で、乙女心を寄せているのは深町君のほう。しかし、彼には幼年時代に作ったはずの指の傷痕がなく、逆に堀川君にあることに気付く。
それに絡んで、深町は最後に意外な告白をする。
彼は27世紀の医学博士で、薬草の研究をしに20世紀にタイム・トリップしてきたこと、本物の深町少年は両親と共に交通事故死していること(和子が彼の部屋に上がった時に両親の写真を見るのが伏線となっている)、彼との思い出は堀川からの借り物であること、プロローグの旅行で彼らは初めて出会ったこと、等々。
初観賞時に「日本では珍しいタイム・トリップもの」と書いているように、当時の日本ではタイム・トリップ若しくはタイプ・スリップを扱うことが稀で、元来この手のお話が好きだったので相当興味深く見た。今観てもディテールに殆ど矛盾がない。
序盤が青春模様が中心で些かまだるっこいが、SF映画以上に青春映画として作りたいという作者側の思いが強かったのであろう。結果的には、タイム・トラベルものの面白さもさることながら、和子の思春期らしい心情をデリケートに追った部分が印象に残る。「転校生」「さびしんぼう」を始め、大林監督はファンタジーの形式で青春像を描くのをライフワークとしていると言って良いと思う。尾道を舞台にするのが彼の拘りであるのは周知の通り。
ストップ・アニメーションを併用した8mm的な手作り感覚も大林監督らしく、全体の古めかしい印象も意図的なものである。「ハウス」以降の作品を殆ど観ているが、これが余りに華麗に流麗になるのは良し悪し、却って面白味がなくなってしまう。
最後のタイトルバックもユニーク。舞台セットに演技陣のいる中を原田知世が主題歌を歌って歩くのである。大林監督ならではの洒落っ気で、これをプロモーション・フィルムと言うのは些かセンスレスである。
大林監督には、和子が「東京物語」の老夫婦(尾道に暮している)に出会う話をこしらえてもらいたいです-小津と大林のファンより



この記事へのコメント
今日は残業を投げ出して帰ってきました。北海道も毎日暑いですよ。そちらは、どうですか?
さて、「タイム・トラベラー」ですが、NHK少年ドラマシリーズ、わたしはしっかり見ていました。「続・タイム・トラベラー」というのもあって、これは筒井康隆の原作ではありませんが、スタッフ・キャスト同じだったようです。鶴書房刊の単行本も持っています。
それから、内田有紀のTV版もありましたよ。安室奈美恵が妹でした。
南野陽子版、モーニング娘のなっち版もあるようです。
大林監督は、尾道シリーズのころが一番素敵でした。
では、また。
どうも失礼致しました。
昨日ノートパソコンを購入してどこでもインターネットができる環境が整い、作業も順調に進むようになったので、今後はこういうことが減ると思います。
2、3日前から暑くなりました。山なので夜寝苦しいことは殆どありませんが。
「タイムトラベラー」はどうもはっきりしません。眉村卓の「ねらわれた学園」と混同してしまって。^^;
「ラベンダーの香り」はもう一つ映画版があるようで、安本奈奈とかいう女優が主演。全く聞いたことがないですね。
大林監督は一部のやらされ仕事を除くと良い仕事をしてきました。私は今も好きで「なごり雪」のナイーブさも彼ならではと思いましたよ。
>すっぱい感じ
若い人が見るとこの作品は妙に古風な感じがすると思いますが、83年当時でも既にノスタルジックな印象でしたね。
それが大林監督の持ち味!
>カマチくん
なぬなぬっ?
深町君?
ではでは。