映画評「世界中がアイ・ラヴ・ユー」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1996年アメリカ映画 監督ウッディー・アレン
ネタバレあり
昨今ミュージカル映画が復調気味で、幻想や劇中劇といったパターンから脱却しつつあるのは誠に結構だが、依然<突然歌い出す>といった王道のミュージカルは少ない。「レント」や「プロデューサーズ」はその意味で大変なご馳走だったが、まだ王道とは言えない。
しかし、ウッディー・アレンが96年に作った本作は古典的な作り方で、10年前同様今回もご機嫌になった。
作家アレンの元妻がゴールディー・ホーンで、その現在の夫がアラン・アルダ。アルダとの間に二人の娘と、アレンとの間に娘一人を設けたゴールディーがリベラルな生き方に邁進して囚人ティム・ロスの保釈に頑張った結果、エドワード・ノートンと婚約中の長女ドリュー・バリモア(アルダが先妻との間に設けた娘)がその囚人に走ってみたり、失恋常連男アレンが娘ナターシャ・リオンに吹き込まれた個人情報を大いに活用して人妻ジュリア・ロバーツと宜しくなるが、結局は逃げられる。
といった離合集散が、一家の住むニューヨークとアレンの暮らすパリ、そして旅先のヴェニスを舞台に賑々しく展開するが、基本的に屈託のないところがいかにもミュージカルらしくて宜しい。
最後は、【マルクス兄弟】パーティーで男女を問わずマルクス兄弟の格好をして踊る、というお遊び的シーン。ワイヤーを使ったゴールディーとアレンのダンス場面が楽しめる。
使われる楽曲は既成曲、余りに古くて殆ど知らないものばかりだが、耳触りの良いものが多い。
ミュージカル要素以外の部分については、アレン独自の自嘲的なムードは抑え気味だが、一家の息子(アルダの先妻の子供)が妙に強硬な保守共和党シンパだったのが脳の病気と判明、それが治るや否やリベラルに転向という一幕で彼のシニカルさが大いに発揮されて面白い。
ニューヨークの四季が美しく捉えた撮影も優秀。
世界中が失恋病。
1996年アメリカ映画 監督ウッディー・アレン
ネタバレあり
昨今ミュージカル映画が復調気味で、幻想や劇中劇といったパターンから脱却しつつあるのは誠に結構だが、依然<突然歌い出す>といった王道のミュージカルは少ない。「レント」や「プロデューサーズ」はその意味で大変なご馳走だったが、まだ王道とは言えない。
しかし、ウッディー・アレンが96年に作った本作は古典的な作り方で、10年前同様今回もご機嫌になった。
作家アレンの元妻がゴールディー・ホーンで、その現在の夫がアラン・アルダ。アルダとの間に二人の娘と、アレンとの間に娘一人を設けたゴールディーがリベラルな生き方に邁進して囚人ティム・ロスの保釈に頑張った結果、エドワード・ノートンと婚約中の長女ドリュー・バリモア(アルダが先妻との間に設けた娘)がその囚人に走ってみたり、失恋常連男アレンが娘ナターシャ・リオンに吹き込まれた個人情報を大いに活用して人妻ジュリア・ロバーツと宜しくなるが、結局は逃げられる。
といった離合集散が、一家の住むニューヨークとアレンの暮らすパリ、そして旅先のヴェニスを舞台に賑々しく展開するが、基本的に屈託のないところがいかにもミュージカルらしくて宜しい。
最後は、【マルクス兄弟】パーティーで男女を問わずマルクス兄弟の格好をして踊る、というお遊び的シーン。ワイヤーを使ったゴールディーとアレンのダンス場面が楽しめる。
使われる楽曲は既成曲、余りに古くて殆ど知らないものばかりだが、耳触りの良いものが多い。
ミュージカル要素以外の部分については、アレン独自の自嘲的なムードは抑え気味だが、一家の息子(アルダの先妻の子供)が妙に強硬な保守共和党シンパだったのが脳の病気と判明、それが治るや否やリベラルに転向という一幕で彼のシニカルさが大いに発揮されて面白い。
ニューヨークの四季が美しく捉えた撮影も優秀。
世界中が失恋病。
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