映画評「モンゴリアン・ピンポン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2005年中国映画 監督ニン・ハオ
ネタバレあり

中国内蒙古自治区のモンゴル民族の日常を描いた中国映画だが、内蒙古と言っても草原における人々の暮らしぶりは国境を挟んで接しているモンゴルと全く変わらない。

草原地帯に暮らしている10歳くらいの少年ビリグが、川で冷やしていたビールを引き上げる時にぷかぷか浮いている白いピンポン玉を発見するが、この地方の人は誰も見たことがないので、神様の宝物だの輝く真珠だの適当なことを言う。
 ビリグや喧嘩友達のダワーやエルグォートゥは購入したばかりのTVの音声(!)がピンポン玉が【国家の玉】と話すのを聞く。実際には一人の選手の球種が物凄いという比喩だったのだが、とにかく、二人は馬に跨り、一人はスクーターに乗って【国家の玉】を返還しに北京を目指す。

戦前の子供時代、僕の父親は【すごく遠い】を表現する為に「東京くらい遠い」と言っていたそうだが、こちらの子供たちは逆に北京がどのくらい遠いか知らず、日本の3倍の広さのある自治区の僻地から1000kmは離れているであろう北京を目指すのが可笑し味となっている。

が、実際に彼らが行動を始めるのは後半に入ってからで、その冒険も警官に咎められてあっさりと終わってしまう。少年の冒険談は取っ掛かりで、実際には子供たちの行動を通して内蒙古のモンゴル遊牧民の生活と定住へと変わりゆく現状を描き出した作品と理解すれば良いが、殆ど固定カメラに終始する撮影には甚だ冷淡な印象があり、子供たちの活気が余り伝わって来ないのが残念。リアリズムではなく、お話が想像させる寓話的な方向で進めた方が興趣が出たように思う。

さらに、草原で自家製のアンテナを使ってTVを見る風景など全体的に新味不足、まして今年の初めに「天空の草原のナンサ」という決定的秀作を見た後では大分物足りない。

但し、繰り返される月夜の美しさは、思わずアンリ・ルソーの「眠るジプシー女」を思い出させ、惚れ惚れとした。

モンゴル版「スタンド・バイ・ミー」不発。

この記事へのコメント

2008年06月07日 10:46
<モンゴル版「スタンド・バイ・ミー」
なるほど!少年の目線で描かれた世界観はそうかも。
「天空の草原のナンサ」は未見です。いつか見れるといいなぁ…。
<アンリ・ルソーの「眠るジプシー女」
ルソーの絵は大好きです。砂漠の月夜の絵では一番詩的で美しいんじゃないかと、私も思います^^)。
オカピー
2008年06月08日 00:46
ぶーすかさん、こんばんは!

>「天空の草原のナンサ」
そう遠くない未来にNHK-BSでやってくれそうな雰囲気がありまする。
>アンリ・ルソー
確かにあの絵は詩的ですね。
シンプルでとても良い絵です。

この記事へのトラックバック