映画評「ローマ帝国の滅亡」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1964年アメリカ映画 監督アンソニー・マン
ネタバレあり

リドリー・スコットの「グラディエーター」を観た時はまるで思い付きもしなかったが、今回見直して同作が事実上本作のリメイクであることに気づいた。

紀元180年、ローマ帝国五賢帝最後の皇帝マルクス=アウレリウス(アレック・ギネス)が、愚かな息子コモドゥス(クリストファー・プラマー)を擁立して力を付けようと企む配下により毒殺される。
 新帝は広大な領土を巧く治める為に先帝が取っていた懐柔策を廃して暴政を敷き、それに反旗を翻した武将リヴィウス(スティーヴン・ボイド)は広場で剣闘士として実力を誇る皇帝と対決することになる。

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「グラディエーター」では終盤の対決をフィーチャーし、全般的にも闘技場面が多かったわけだが、本作は種々のスペクタクル場面が網羅されていて、中盤「ベン・ハー」よろしく戦車でつばぜり合いをする場面が特に楽しめる。
 人物配置は、コモドゥス、リヴィウス、先帝の娘ルシラ(ソフィア・ローレン)との間でバランスを取る形になっていて、ルシラがリヴィウスと愛し合いながら政略結婚で蛮地アルメリア(スペイン南部)の王に嫁ぐメロドラマの要素も盛り込まれている。

僕の好みでは、似たり寄ったりの戦闘場面をもう少し抑えて権謀術数を繰り出す仕立てにしたほうが楽しめたと思うが、ストーリーの弱さを補うのがスペインにロケした城塞場面とローマのセットの見事さ。セットでかような迫真性を出す撮影技術とフィルムの魔術に脱帽する思いである。「グラディエーター」のCGに些かの空しさを覚えたのとは大違い。

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監督は「エル・シド」により史劇でも素晴らしい腕前を示したアンソニー・マンだが、チャールトン・ヘストンのカリスマ性を前面に押し出して成功した同作に比べると、主役を三人に分割した為にドラマとして腰が弱く、出来栄えは相当に落ちる。

史実に照らしてみれば、実際の皇帝親子の関係は共同統治だったので映画のような関係ではなく、コモドゥスの最期も暗殺だが、コモドゥスが悪政を敷いた愚帝でローマ帝国の滅亡への端緒となったというのは歴史家の定評のようである。

この記事へのコメント

2008年03月15日 17:14
「グラディエーター」が「ベン・ハー」のように拳闘シーンや戦闘シーンが多いスペクタクルものだったのに対して、こちらはロマンス部分が中心でちょっと退屈な感じがしました。また大好きなソフィア・ローレンも、今一歩魅力を発揮できてなかったようにも思えて残念です。
オカピー
2008年03月16日 02:28
ぶーすかさん、こちらへもようこそ。

>ロマンス
恐らく、八方美人的な作り方で、夫々の扱い方が悪いんですよ。

>ソフィア・ローレン
彼女は、こういう真面目くさった役ではいきないでしょうね。
オンリー・ザ・ロンリー
2008年09月01日 09:02
ミクロやベン・ハーでも頑張ったS・ホイドは精悍だしちょっとふてぶてしく好きでしたが早死にですか?。J・スチュワートとの西部劇では同監督かなり観ましたが大作史劇に手を出すとは当時意外でびっきりしました。ご都合主義な部分があると言え「シェナンドー河」は好感持てました。あー、それにしても近年は手創りの映画がなくて私みたいな古い人間にはツマラーン!。
オカピー
2008年09月01日 21:17
オンリー・ザ・ロンリーさん、こんばんは。

>スティーヴン・ボイド
70年代半ばに40代で亡くなった記憶があります。

>アンソニー・マン
ジェームズ・スチュワートとのコンビは相当多いですね。「グレン・ミラー物語」が有名ですが、「怒れる河」や「シェナンドー河」などの西部劇に好きな作品が多いです。
しかし、「エル・シド」は見直したら素晴らしかった。

>手創りの映画
CGは勿論編集もコンピューターでほいほいとできるはずなのに(だから?)、良い編集が少ないですね。考えられない繋がりもありますが、あれがアナログでできたら僕は頭を下げます(笑)。
アナログ時代は一度捨てたフィルムは再生できないわけですから凄い緊張だったでしょうねえ。
オカピー
2008年09月02日 00:40
オンリー・ザ・ロンリーさん、訂正です。

>怒れる河
勿論「怒りの河」の間違いです。
この間NHK-BSでやったばかりと言うのに。とほほ。

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