映画評「口紅殺人事件」
☆☆★(5点/10点満点中)
1956年アメリカ映画 監督フリッツ・ラング
ネタバレあり
追及するのが新聞社という設定を除けば、犯人を追及する間に人間の出世欲、功名心が描かれるという図式は、先般WOWOWが先行放映した「犯人に告ぐ」と、同工異曲と言って良い。しかも監督がフリッツ・ラングなので楽しみにしていたわけだが、今回が三度目の正直、やっとご本尊を拝むことと相成った。
専用TV局を有する新聞通信社の社長が死に、代って社長の椅子に就いたぐうたら御曹司ヴィンセント・プライスが片腕になる人物を、編集長トーマス・ミッチェル、通信部長ジョージ・サンダース、写真部長ジェームズ・クレイグの三人の中から選ぶという。
その条件となるのが、女性ばかりを狙った連続殺人事件を解決することで、ミッチェルはピューリツァー賞受賞の敏腕記者にしてTV解説者デーナ・アンドリューズを味方に付け、クレイグは不倫中の社長夫人ロンダ・フレミングを動かそうとし、サンダースは女性記者アイダ・ルピノにアンドリューズに接近させる。彼はサンダースの秘書サリー・フォレストと婚約中だが、アイダの暗躍でちょっとややこしいことになる。
題名からミステリー若しくはサスペンスかと思って見始めたのだが、すぐに新聞社の権力闘争を主軸とした群像劇となり、暫く停滞気味の場面が続く。アンドリューズが犯人に呼びかける辺りからスリラー的な場面が増えて面白味を増すが、ゴタゴタ内幕劇は深みを見せず、サスペンスは強烈には程遠く、焦点が合わないままに終わってしまった憾みがある。「犯人に告ぐ」が序盤こそ狙いが不鮮明に思えたが終わってみればすっきりしたのとは対照的。そもそも警察ではなく記者に犯人を追わせるという設定も捻っているようで、その間警察は何をやっているのだという疑問を引き起こす。
ひとえにラングの責任には帰せないものの、パワーの衰えは禁じえず、些か寂しい出来と言わざるを得ない。楽しみにしていただけに落胆も甚だしいわけであります。
しかし、IMDbの評価は7.0と悪くはない。構成などどうでも良くて、現代的なテーマに乗せられてしまったのではないかな?
アメリカに おわす間に ランク落ち ラング・ファンの 嘆き聞こゆる
1956年アメリカ映画 監督フリッツ・ラング
ネタバレあり
追及するのが新聞社という設定を除けば、犯人を追及する間に人間の出世欲、功名心が描かれるという図式は、先般WOWOWが先行放映した「犯人に告ぐ」と、同工異曲と言って良い。しかも監督がフリッツ・ラングなので楽しみにしていたわけだが、今回が三度目の正直、やっとご本尊を拝むことと相成った。
専用TV局を有する新聞通信社の社長が死に、代って社長の椅子に就いたぐうたら御曹司ヴィンセント・プライスが片腕になる人物を、編集長トーマス・ミッチェル、通信部長ジョージ・サンダース、写真部長ジェームズ・クレイグの三人の中から選ぶという。
その条件となるのが、女性ばかりを狙った連続殺人事件を解決することで、ミッチェルはピューリツァー賞受賞の敏腕記者にしてTV解説者デーナ・アンドリューズを味方に付け、クレイグは不倫中の社長夫人ロンダ・フレミングを動かそうとし、サンダースは女性記者アイダ・ルピノにアンドリューズに接近させる。彼はサンダースの秘書サリー・フォレストと婚約中だが、アイダの暗躍でちょっとややこしいことになる。
題名からミステリー若しくはサスペンスかと思って見始めたのだが、すぐに新聞社の権力闘争を主軸とした群像劇となり、暫く停滞気味の場面が続く。アンドリューズが犯人に呼びかける辺りからスリラー的な場面が増えて面白味を増すが、ゴタゴタ内幕劇は深みを見せず、サスペンスは強烈には程遠く、焦点が合わないままに終わってしまった憾みがある。「犯人に告ぐ」が序盤こそ狙いが不鮮明に思えたが終わってみればすっきりしたのとは対照的。そもそも警察ではなく記者に犯人を追わせるという設定も捻っているようで、その間警察は何をやっているのだという疑問を引き起こす。
ひとえにラングの責任には帰せないものの、パワーの衰えは禁じえず、些か寂しい出来と言わざるを得ない。楽しみにしていただけに落胆も甚だしいわけであります。
しかし、IMDbの評価は7.0と悪くはない。構成などどうでも良くて、現代的なテーマに乗せられてしまったのではないかな?
アメリカに おわす間に ランク落ち ラング・ファンの 嘆き聞こゆる
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