映画評「記憶の棘」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2004年アメリカ映画 監督ジョナサン・グレイザー
ネタバレあり
色々と話題を呼んだようだが、結局主演二人の演技を見る映画である。
青年科学者がジョギング中に急死、時を同じくしてある一家に赤ん坊が生まれる。
10年後未亡人ニコール・キッドマンが3年間付き合ってきたダニー・ヒューストンと結婚を決意するが、母親ローレン・バコールの誕生日パーティーに突然現れた10歳の少年キャメロン・ブライトに「僕は、君の夫だ」と告げられて動揺、夫しか知らない情報も知っていたことから徐々に彼に傾倒し、少年を家に泊めてデートごっこにふける。結局彼の恋人だったアン・ヘッチ(ヘッシュ)の登場から少年の正体が脆くも暴かれ、彼女は婚約者の許に戻っていく。
序盤アン・ヘッチが何かを隠す場面がトリックになっていて、純文学的なテーマをちらつせた割に終盤の展開が余りに一般ミステリーの種明かし的になって感心できないのだが、それでもヒロインが少年の登場により心を揺さぶられ、やがて信じ込んでいく様は大変興味深く見られる。扮するニコール・キッドマンが堂々たる演技を披露しているからである。劇場で正面を見ているようで実は何も観ていないヒロインを捉えた2分に及ぶ長回しにおける演技は白眉と言うべし。
しかし、それ以上に立派なのではないかと思われるのが少年を演じる撮影当時11歳だったキャメロン君である。昨日の「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」でも出番は少ないながら強い印象を残していたが、本作のあの世でも見るように研ぎ澄まされた表情には鬼気迫るものがある。二人の丁々発止の演技合戦がピークに達するのはバス・ルームでのショットで、緊迫感が極めて高い。
表面的なテーマである輪廻や、それが導く30代の女性と10歳の少年の性的な接触はセンセーショナルではあるが、それほど取り沙汰するほどのものとも思えず、観終えた後も全くすっきりしないので、見どころは演技に尽きると思った次第である。まだ本作を内容的に把握し切れていないというのも事実なのだが。
トーンの沈んだ撮影(ハリス・サヴィデス)は優秀。
2004年アメリカ映画 監督ジョナサン・グレイザー
ネタバレあり
色々と話題を呼んだようだが、結局主演二人の演技を見る映画である。
青年科学者がジョギング中に急死、時を同じくしてある一家に赤ん坊が生まれる。
10年後未亡人ニコール・キッドマンが3年間付き合ってきたダニー・ヒューストンと結婚を決意するが、母親ローレン・バコールの誕生日パーティーに突然現れた10歳の少年キャメロン・ブライトに「僕は、君の夫だ」と告げられて動揺、夫しか知らない情報も知っていたことから徐々に彼に傾倒し、少年を家に泊めてデートごっこにふける。結局彼の恋人だったアン・ヘッチ(ヘッシュ)の登場から少年の正体が脆くも暴かれ、彼女は婚約者の許に戻っていく。
序盤アン・ヘッチが何かを隠す場面がトリックになっていて、純文学的なテーマをちらつせた割に終盤の展開が余りに一般ミステリーの種明かし的になって感心できないのだが、それでもヒロインが少年の登場により心を揺さぶられ、やがて信じ込んでいく様は大変興味深く見られる。扮するニコール・キッドマンが堂々たる演技を披露しているからである。劇場で正面を見ているようで実は何も観ていないヒロインを捉えた2分に及ぶ長回しにおける演技は白眉と言うべし。
しかし、それ以上に立派なのではないかと思われるのが少年を演じる撮影当時11歳だったキャメロン君である。昨日の「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」でも出番は少ないながら強い印象を残していたが、本作のあの世でも見るように研ぎ澄まされた表情には鬼気迫るものがある。二人の丁々発止の演技合戦がピークに達するのはバス・ルームでのショットで、緊迫感が極めて高い。
表面的なテーマである輪廻や、それが導く30代の女性と10歳の少年の性的な接触はセンセーショナルではあるが、それほど取り沙汰するほどのものとも思えず、観終えた後も全くすっきりしないので、見どころは演技に尽きると思った次第である。まだ本作を内容的に把握し切れていないというのも事実なのだが。
トーンの沈んだ撮影(ハリス・サヴィデス)は優秀。
この記事へのコメント
FC2にTB出来るようなったのですね☆よかったです~
私もオカピーさんとほぼ同じ感想でした~
ショーンの生まれ変わりの種明かしはちょっと、あらあらという感じはしましたが、学校での夢から覚めたかのようなショーンの様子から、結論づけられていない神秘的な部分をも残しつつ、なお、もしかしたらと言う可能性も残されている終わり方をしていましたので、私は見終わった後の余韻がどちらかというと、キャメロン君演じるショーンは、やはりダニー・ヒューストン演じるショーンの生まれ変わりだったのかも知れないなぁ~という感じで混沌としていて、大変余韻が残る映画でした。
結論は巷の意見が二分された感じですね~。私はキャメロン君のショーンは嘘をついていたわけではなかったのじゃないかと思う派です。
>生まれ変わり
確かに手紙の山があっても、あれほど正確に質問に答えられるかという疑問は解消できないわけで、その意味では生まれ変わり説も否定できませんね。
いずれにしても、曖昧さを残す映画であることは確かで、昨今はこの手の作品が多いような気がします。一種の逃げのような気もして諸手を挙げて賛同できない作り方とは思われませんか?
そうですね。狙いが不鮮明という点については私も同じように感じました。
彼女の幻影ということはないでしょうが、まず少年が本当に生まれ変わりなのかどうかをミステリー的に追求するという表面的な狙いがあったような感じは致しました。その一方で彼女の心象風景を追うという純文学的な狙いがあったでしょう。
しかし、映画全般としては後者に重きを置いたのに、種明かしは純ミステリー風で、しかもそれだけでは輪廻の問題は必ずしも解決してないもやもや感が残ります。
昨今流行の【理解は観客にお任せ】映画なんでしょうが、この傾向は余り感心しませんね。
二コールの映画は欠かせないと思って劇場に赴いたのですが、理解力の欠如ゆえかあまり楽しめませんでした。
>観終えた後も全くすっきりしない
そうなんですよね~。
キャメロン君って天才子役と名高いですが、これから難しいティーン時代を無事切り抜けていい俳優になってもらいたいです。
理解力がないなんてとんでもない。
映画がはっきりした結論を出していないだけでしょう。^^
>天才子役
成功組は、エリザベス・テイラーとかダイアン・レインとかいますね。
ナタリー・ウッドは出演作は結構ありましたが、成功組とは言えないような?
子役出身の男優の名前が出てこないところをみると、男性のほうが難しいのかも?
キャメロン君は、キューピーちゃんのようなぽっちゃり体型だったので、いやらしさはまったくなかったですけどね(笑)
>ぽっちゃり
あははは。意図的だったのかも?
しかし、2年後の「X-MEN」では成長してもっと鋭くなっていました。
他人の子供は成長するのが早いというけれど。(笑)
なんとも言いがたい作品でした。
別に付き合っていた女性が出てきて「くに」っと意志が揺らぐってところの表現が弱いような気もしますけど、どう描けと言うんだと言われれば思いつきません・笑。
嫌いではないですけどね。
あそこは、彼女が隠したものをこっそり拾って憶えたという種明かしなので、少年としては「ばれちゃったか」ということなのですが、ところが、本当に読んだ憶えただけなのかと思わせるところがあってはっきりしないんですよね。
左脳人間だけにどうもすっきりしないと嫌なわけですが(笑)、演技は抜群だったかな、と思います。撮影も上の部類。