映画評「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年ロシア映画 監督アレクサンドル・ソクーロフ
ネタバレあり

ムスティスラフ・ロストロポーヴィチは、クラシック音楽に疎い僕でも名前だけは知っているが、業績その他は殆ど知らない。また、ドキュメンタリーはドラマ映画と違って作りより内容について評価すべきであろうから、益々書きにくい。彼の音楽については全く語らないことをお断りしておきます。

元来TV用だったのか、前後51分の二部構成。ドキュメンタリーだからさほど気にならないものの、ソクーロフ作品の例に洩れずビデオ撮影なのが難点ではある。

ロストロポーヴィチはソ連・ロシアのチェリストで、師事したショスタコーヴィチやプロコフィエフを正確に解釈した指揮者としても知られている。
 夫人は1歳年上の名ソプラノ、ガリーナ・ヴィシネフスカヤ。彼女はその前に軍人と結婚、儲けた息子を早々に失った後、1955年に結婚したチェリストとの間に二人の娘を儲けている。

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監督アレクサンドル・ソクーロフは、この二人を常にペアで捉える(一緒にという意味ではない)構成を取っていて、そこが映画的な工夫と言って宜しいと思う。二人の絆を強く印象付ける演出なのである。伝記的に紹介する部分は勿論、インタビューも並べている。
 第2部の前半で、ロストロポーヴィチが弟子とみなす小澤征爾の指揮するウィーン・フィルと共演する場面と、ガリーナが弟子を指導する場面とを音的に途切れなく繋げたカットバック(正確にはクロス・カッティング)が圧巻。映画的に凄いというよりは二人のエネルギーの総和に心を打つものがあるのである。

幕切れは夫に応える夫人の微笑み。夫婦の絆の強さを表わすようで、感慨を生む。

なお、稀代の名チェリストは本年4月に亡くなった。合掌。

この記事へのコメント

2007年10月15日 01:22
ロストロポーヴィチの名演が聴けるのではないかと思って録画しておきましたが、その意味ではまったく裏切られました。
 それより奥さんのガリーナ・ヴィシネフスカヤの若い頃の実力、年取ってからの貫禄に圧倒されました。
オカピー
2007年10月15日 14:46
まいじょさん、お久しぶりです。^^

まいじょさんはクラシック通みたいですね。
クラシックの有名曲を数多く知っていたので会社ではクラシック通みたいに思われていましたが、私の場合は完全に知識だけです。

>名演
そうでした。演奏は第2部の前半だけで、それもオーケストラとの共演ですから。しかも細君の指導場面とカットバックで、演奏を聴くという感じではありませんでしたね。

>ガリーナ
かかあ天下な印象がありましたね。
ロシア女性は年を取ると若い頃が想像できないほど太る人が多いのですが、彼女の場合は程々。精神的な貫禄の方が優っていたようです。(笑)

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