映画評「クリムト」

☆☆★(5点/10点満点中)
2006年オーストリア=フランス=ドイツ=イギリス映画 監督ラウル・ルイス
ネタバレあり

伝記映画の人気は一向に冷めてこないが、これはちょっと異色である。19世紀末から20世紀初めにかけて活躍したオーストリアの画家グスタフ・クリムトの晩年を心象風景ドラマ風に描いている。

1918年、エゴン・シーレ(ニコライ・キンスキー)が脳卒中で倒れた師匠的存在クリムト(ジョン・マルコヴィッチ)を見舞うが、保守派の眉をひそめさせる裸婦画や反抗的な態度の為に他に訪れる者もない。

というプロローグの後、舞台はパリでの人気に反して批判に晒されている1900年のウィーンに移り、モデルたちの間に何人もの子供がいるほど女色に目がない彼は、パリ万博で上映された映画の女優レア(サフロン・バローズ)に心を奪われるが、彼女のパトロンである公爵の屋敷で出会ったレアが果たして本物なのか解らなくなる。

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物語はあってなきが如く、史実をベースに、本物と偽物のレアが入れ替わり立ち替わり出てきたり、レアは実は死んでいると告げられたり、クリムトが自身の偽物を殴ったのに起き上がるのは本物、といったように幻想的な場面が入り乱れる。
 それもそのはずで、現在の場面以外は全てクリムトの死に際の混濁した脳に浮かび上がる妄想的回想と解釈できる構成が取られているのである。

脚本と監督を担当したラウル・ルイスはクリムトの絵の幻想性を物語に導入し、紙の雪や金箔が降り注ぐ場面などでは絢爛たる装飾的画風にダブらせるように映像を設計したように思われ、さほど絵画好きでなくても楽しめる部分はある。しかし、映画としての総合力を考えると、独善が目立ち、充実した出来栄えとは言いにくい。

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  • 映画 【クリムト】

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  • クリムト

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  • ★「クリムト」

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  • <クリムト> 

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