映画評「ウルトラヴァイオレット」
☆☆(4点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督カート・ウィマー
ネタバレあり
カート・ウィマーの前作「リベリオン」は若い人の間ではなかなか評判が良いものの、フランソワ・トリュフォーの秀作「華氏451」を「マトリックス」風に味付けしてアクション化したような感じで僕は余り楽しめなかった。こちらの新作は如何でありますか。
21世紀末、新種のウィルスの感染者は余命が12年しかない代わりに優れた頭脳と運動能力を持つ超人となり、“ファージ”と呼ばれて非感染者と差別された為に地下に潜り、“ファージ”絶滅を図る人類政府と対決している。
その中でも最強の殺し屋ミラ・ジョヴォヴィッチが、厳重な識別システムをかいくぐって政府が開発した最終兵器を奪い去り、政府側の軍勢を次々となぎ倒していく。
「リベリオン」にも似たお話の構図は単純だが、設定が細かいので単純さの利点を生かしきれず、「バイオハザード」と似たりよったりのアクションが執拗にくり返されるうちに退屈することは必定。
ひねりとしては、最終兵器が抗原を血液中に埋め込まれた少年(キャメロン・ブライト)で、息子を体制側に奪われた母親としての傷が疼く、といった辺りだが、言い訳みたいなものである。キャメロン君も「記憶の棘」には程遠い出来栄え。
肝要な部分故に詳らかに言うわけには行かないが、少年の幕切れの扱いは全く意味がない。彼はその特殊性故に最初から“ファージ”の力は不要だったのである。観客の理解力を馬鹿にしてはいけないぞよ。
それ以上に気になったのは、映像がソフトフォーカスのようにぼけ気味で、特にミラの顔が人形みたいにのっぺらぼうに見えたことである。恐らくデジタルでレタッチした部分も相当にあるのではないかと想像され、そのせいで実写映画を見ている気分が遂ぞ湧き上がって来ず、非常に困った。いっそフルCGにすれば良いと思えた《何ちゃって実写映画》ではあるが。
情景がかなりアニメ的に見えるのは半ば意図的なのだろうが、「スカイ・キャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」が映像を1920~30年代の古典映画風に見せかける為に行ったような明確な意図が感じられない。監督は進歩どころか後退、お粗末じゃね。
こういう作品を観ると、10年ほど前に一部の役者が「仕事を奪う」として行ったささやかなCG排斥運動に思いを馳せずにはいられない。
大分ファジーな映画でした。
2006年アメリカ映画 監督カート・ウィマー
ネタバレあり
カート・ウィマーの前作「リベリオン」は若い人の間ではなかなか評判が良いものの、フランソワ・トリュフォーの秀作「華氏451」を「マトリックス」風に味付けしてアクション化したような感じで僕は余り楽しめなかった。こちらの新作は如何でありますか。
21世紀末、新種のウィルスの感染者は余命が12年しかない代わりに優れた頭脳と運動能力を持つ超人となり、“ファージ”と呼ばれて非感染者と差別された為に地下に潜り、“ファージ”絶滅を図る人類政府と対決している。
その中でも最強の殺し屋ミラ・ジョヴォヴィッチが、厳重な識別システムをかいくぐって政府が開発した最終兵器を奪い去り、政府側の軍勢を次々となぎ倒していく。
「リベリオン」にも似たお話の構図は単純だが、設定が細かいので単純さの利点を生かしきれず、「バイオハザード」と似たりよったりのアクションが執拗にくり返されるうちに退屈することは必定。
ひねりとしては、最終兵器が抗原を血液中に埋め込まれた少年(キャメロン・ブライト)で、息子を体制側に奪われた母親としての傷が疼く、といった辺りだが、言い訳みたいなものである。キャメロン君も「記憶の棘」には程遠い出来栄え。
肝要な部分故に詳らかに言うわけには行かないが、少年の幕切れの扱いは全く意味がない。彼はその特殊性故に最初から“ファージ”の力は不要だったのである。観客の理解力を馬鹿にしてはいけないぞよ。
それ以上に気になったのは、映像がソフトフォーカスのようにぼけ気味で、特にミラの顔が人形みたいにのっぺらぼうに見えたことである。恐らくデジタルでレタッチした部分も相当にあるのではないかと想像され、そのせいで実写映画を見ている気分が遂ぞ湧き上がって来ず、非常に困った。いっそフルCGにすれば良いと思えた《何ちゃって実写映画》ではあるが。
情景がかなりアニメ的に見えるのは半ば意図的なのだろうが、「スカイ・キャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」が映像を1920~30年代の古典映画風に見せかける為に行ったような明確な意図が感じられない。監督は進歩どころか後退、お粗末じゃね。
こういう作品を観ると、10年ほど前に一部の役者が「仕事を奪う」として行ったささやかなCG排斥運動に思いを馳せずにはいられない。
大分ファジーな映画でした。
この記事へのコメント
トラバ欄が無いので、たまにはコメント入れさせてもらいますね。
アニメチックな映像は斬新なんだか、雑なんだか・・・とは思いますが・・・
まず、ミラ・ジョヴォヴィッチの格闘キャラ有りき・・・という印象でした。
あらら、TB欄がなかったとは。
こちらから押しかけておいて何たる不始末!
申し訳ございませんでした。
ミラ嬢のアクションもすぐに飽きてしまいました。
しかも、あののっぺらぼうな顔を見たら、げんなり。
あんなにCPでいじってはダメでしょうに。(笑)
だはは、、、きびし~!
これは、ミラさま万歳映画です!
ミラさま、かっこえ~!
そんなに厳しいですか。^^;
「バイオハザード」シリーズの方が出来栄えは上と見ました。
しかしですよ、ミラの顔が余りのっぺりとしていて、あれでは役者も困るのではないかなあ。ボケ君の画像に加えコンピューターでレタッチもしていますよね。<なんちゃってミラ様>ですよ、あれでは。
彼女のイメージは「ジャンヌ・ダルク」で戦う女に決まってしまったようですね。
レタッチのせいですかね、あの100億かけた「ファイナルファンタジー」映画版と、こちらは実写ではありますが、同じような平板さを感じました。
最初目が急に悪くなったのかと思ったほどぼけぼけで、しかも人間の肌ではないような感じが気になってそれだけで、どうも困っちまいました。
気力を振り絞って観たもののアクションの変化も乏しいし。
ファージとファジーを掛けたダジャレを解って戴けましたでしょうか。^^;