映画評「プライドと偏見」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2005年フランス=イギリス映画 監督ジョー・ライト
ネタバレあり
1940年製作の本邦劇場未公開作「高慢と偏見」のDVDは本作を観る為に昨年の春先に買ったわけだが、肝心の本編がWOWOWに登場する迄こんなに待たされるとは予想だにしなかった。
ブロンテ姉妹以上の大作家にも拘らずジェーン・オースティンは華美な物語性で勝負しない作家故に意外と映像化が少なかったわけだが、90年代半ばにわかに映画界での人気が沸騰。それ以来人気は衰えず、大作とも言える本作が本場英国より登場した。
枝葉末節に違う部分が相当にあっても、相続権が男性のみに認められていた時代故に起こる恋愛騒動を描く根幹は同じなのでストーリーは40年版を参考にして貰うと致しまして、長編映画第1作となるジョー・ライトはかなり健闘している。
脚本のおかげもあるがきびきびと展開、上映時間の短い40年版より短く感じるのである。その一方、場面転換にぎくしゃくする部分があり、秀作というにはやや物足りない。
作劇はぐっと現実的で、ベネット家の母親(ブレンダ・ブレシン)の俗っぽさや従兄コリンズの凡夫ぶりが40年版のように強調されず、キャサリン夫人(ジュディ・デンチ)は原作どおりに冷淡で愚か。40年版ではすっきりとしたハッピー・エンドにする為に夫人は洞察力のある賢い女性になっていた。
ヒロインであるエリザベスの勝気ぶりは正に現代的解釈で、それをキーラ・ナイトリーが溌剌と演じているが、映画自体も原作に近づける為に彼女の心理を大分前面に出している。例えば、姉ジェーン(ロザムンド・パイク)の破談をダーシー(マシュー・マクファーデン)が演出したと知って彼女が雨の中を走り出す。勿論雨は彼女の泣き出したい心境の暗喩でもあり、その直後の彼女の周りが急速に暗くなるといった早回し風の演出もその一つである。
一番年少の娘リディア(ジェナ・マローン)が原作ほど絡んで来ないのをけしからんと言われる方もいらっしゃるが、3時間の映画という前提ならともかく、2時間の上映時間では無理だし、リディアを重視すれば人物風刺的な側面を持つ原作より純粋な恋愛映画として作ろうとしたはずの作者側の狙いがぼけてしまう。映画は原作通りに作れば成功というものではない。
2005年フランス=イギリス映画 監督ジョー・ライト
ネタバレあり
1940年製作の本邦劇場未公開作「高慢と偏見」のDVDは本作を観る為に昨年の春先に買ったわけだが、肝心の本編がWOWOWに登場する迄こんなに待たされるとは予想だにしなかった。
ブロンテ姉妹以上の大作家にも拘らずジェーン・オースティンは華美な物語性で勝負しない作家故に意外と映像化が少なかったわけだが、90年代半ばにわかに映画界での人気が沸騰。それ以来人気は衰えず、大作とも言える本作が本場英国より登場した。
枝葉末節に違う部分が相当にあっても、相続権が男性のみに認められていた時代故に起こる恋愛騒動を描く根幹は同じなのでストーリーは40年版を参考にして貰うと致しまして、長編映画第1作となるジョー・ライトはかなり健闘している。
脚本のおかげもあるがきびきびと展開、上映時間の短い40年版より短く感じるのである。その一方、場面転換にぎくしゃくする部分があり、秀作というにはやや物足りない。
作劇はぐっと現実的で、ベネット家の母親(ブレンダ・ブレシン)の俗っぽさや従兄コリンズの凡夫ぶりが40年版のように強調されず、キャサリン夫人(ジュディ・デンチ)は原作どおりに冷淡で愚か。40年版ではすっきりとしたハッピー・エンドにする為に夫人は洞察力のある賢い女性になっていた。
ヒロインであるエリザベスの勝気ぶりは正に現代的解釈で、それをキーラ・ナイトリーが溌剌と演じているが、映画自体も原作に近づける為に彼女の心理を大分前面に出している。例えば、姉ジェーン(ロザムンド・パイク)の破談をダーシー(マシュー・マクファーデン)が演出したと知って彼女が雨の中を走り出す。勿論雨は彼女の泣き出したい心境の暗喩でもあり、その直後の彼女の周りが急速に暗くなるといった早回し風の演出もその一つである。
一番年少の娘リディア(ジェナ・マローン)が原作ほど絡んで来ないのをけしからんと言われる方もいらっしゃるが、3時間の映画という前提ならともかく、2時間の上映時間では無理だし、リディアを重視すれば人物風刺的な側面を持つ原作より純粋な恋愛映画として作ろうとしたはずの作者側の狙いがぼけてしまう。映画は原作通りに作れば成功というものではない。
この記事へのコメント
WOWOWでの鑑賞を元にブログを書かれている方が今朝アップされていたので、もしやと思っておりましたら、ピンポン♪でした。
原作の細かい筋は忘れていましたので、映画のロマンチックな雰囲気を楽しみました。キーラちゃんもご贔屓だったので。
ズバリ賞でしたね。^^
1年半も前に40年版のDVDを買ったのに、まさか公開からこんなに時間がかかるとは。待った甲斐もあり、ハイビジョン放送ならではの田園地帯の美しさは堪能できました。最近はTVと言えども馬鹿にしたものではないですなあ。
私も原作は忘れたので、ダンボール箱にしまいこんであった文庫本を取り出してぺらぺらしてみましたが、余り参考にはならず。^^;
>キーラちゃん
私もウィノーナ・ライダーやナタリー・ポートマンのようなタイプが好みなので、観ていて楽しいですね。
一昔前に映画化されたらウィノーナ辺りが演じることになったかもなあ、と思って観ておりましたよ。
関連記事TBさせていただきます。
僕も、まあよく2時間でこのお話をうまく収めたなあ、と感心しました。
>キーラ
確かに。
私が現代的解釈と言うのもその辺が頭にありまして、まあ元気があってよいか、というのが評価。
容姿は好みですが、走り方は良くなかった。ちょっと品がない。(笑)
>D・サザーランド
いや全く。父親に関しては40年版が断然良かったですよ。夫婦揃うと完全に漫才になってしまうのですが。^^;
確かに2時間前後では恋愛映画にするしかないので、どうしても不利で。しかもあちらさんのミニシリーズはしっかり作っているんですよね。日本はやはりどうしてもTVのものは映画に大分劣ります。
原作の狙いを映像に移そうとすれば、3時間でも収まらないと思いますが、商業映画のネックを利用して恋愛(心理)映画を狙いにしたのでしょうね。そうすれば主役二人に焦点を当てることができますから。