映画評「レディ・イン・ザ・ウォーター」
☆☆(4点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督M・ナイト・シャマラン
ネタバレあり
僕はM・ナイト・シャマランを余り評価していない。
絶賛されている「シックス・センス」は確かに幕切れに驚かされてしまったが、客観ショットにヒッチコックをして「絶対してはならない」と言わしめた嘘を入れて騙したに過ぎない。
残念なことはこの一本が【映像の嘘】というパンドラの箱を開けてしまったことで、ドンデン返し一点の為に「シークレット・ウィンドウ」のような嘘ばかりの映画が作られるようになったことである。【映像の嘘】は主観ショットのみに許されることを映像作家は肝に銘じなければならない。
とにかく、それ以降サスペンス映画は観客と監督の場外乱闘の場と化してしまい、観客は映画の中でサスペンスを楽しむという基本を忘れてしまうことになる。
しかし、「シックス・センス」自体には☆☆☆★を進呈。後続の作品は大体☆☆☆だが、さすがに内容空疎な「サイン」はどんなに大盤奮いしても☆☆★がやっとだった。1000万ドルの脚本料の作品としては実にお粗末ではあるものの、コスト・パフォーマンスの悪さを減点材料にするわけにはいかない。シャマランに関する総評はそんなところ。
さて、1000万ドル以上の脚本料かもしれない最新作である本作は「サイン」のムードをそのまま使って、さらに不明瞭にしたような、ちょっと紹介に困るお話と内容である。
妻子を強盗に殺され医師を廃業したポール・ジアマティは現在アパートメントの管理人をしているが、プールで目撃した謎の妙齢女性ブライス・ダラス・ハワードが韓国人母娘の語る妖精“ナーフ”であることに気付き、世界を平和にする力のある彼女を元の世界“ブルー・ワールド”に帰す為に、邪魔をする怪物を退けるべくアパートの住民に協力を仰ぐ。
というおとぎ話だが、妖精の正体が極めて曖昧で、彼女を元の世界に帰すことが登場人物や人類にどんな結果をもたらすのか具体的に解らないから、ジアマティがいくら奮闘しても力が入らない。眠気を誘うだけである。
例えば、スーパーマンがピンチに陥れば人類が困ることは誰にでも解る。そこに感情移入の要素がある。シャマランは意図的にその最低線まで曖昧にしたようで、少なくとも左脳人間の僕は登場人物たちが頑張れば頑張るほど白けていくという悪循環に入りこんでしまった。【平和】などという抽象に逃げてもらっては困るのだ。
ジアマティ扮する管理人の過去が勿体ぶって紹介されているが、かと言って彼の再生を真面目に描く気でもないらしい。
ちょっと面白いのは、妖精の名前がストーリーであり、登場人物たちに役割を宛がう展開になっていることである。つまり、これは映画なり小説なりの物語(ストーリー)を作り上げる過程をシャマランの心情を交えて綴ったものと理解すれば全く別の作品として楽しむことができる。しかし、それには主体となるストーリーが面白くなくては何にもならない。
シャマラン つまらん しまらん
2006年アメリカ映画 監督M・ナイト・シャマラン
ネタバレあり
僕はM・ナイト・シャマランを余り評価していない。
絶賛されている「シックス・センス」は確かに幕切れに驚かされてしまったが、客観ショットにヒッチコックをして「絶対してはならない」と言わしめた嘘を入れて騙したに過ぎない。
残念なことはこの一本が【映像の嘘】というパンドラの箱を開けてしまったことで、ドンデン返し一点の為に「シークレット・ウィンドウ」のような嘘ばかりの映画が作られるようになったことである。【映像の嘘】は主観ショットのみに許されることを映像作家は肝に銘じなければならない。
とにかく、それ以降サスペンス映画は観客と監督の場外乱闘の場と化してしまい、観客は映画の中でサスペンスを楽しむという基本を忘れてしまうことになる。
しかし、「シックス・センス」自体には☆☆☆★を進呈。後続の作品は大体☆☆☆だが、さすがに内容空疎な「サイン」はどんなに大盤奮いしても☆☆★がやっとだった。1000万ドルの脚本料の作品としては実にお粗末ではあるものの、コスト・パフォーマンスの悪さを減点材料にするわけにはいかない。シャマランに関する総評はそんなところ。
さて、1000万ドル以上の脚本料かもしれない最新作である本作は「サイン」のムードをそのまま使って、さらに不明瞭にしたような、ちょっと紹介に困るお話と内容である。
妻子を強盗に殺され医師を廃業したポール・ジアマティは現在アパートメントの管理人をしているが、プールで目撃した謎の妙齢女性ブライス・ダラス・ハワードが韓国人母娘の語る妖精“ナーフ”であることに気付き、世界を平和にする力のある彼女を元の世界“ブルー・ワールド”に帰す為に、邪魔をする怪物を退けるべくアパートの住民に協力を仰ぐ。
というおとぎ話だが、妖精の正体が極めて曖昧で、彼女を元の世界に帰すことが登場人物や人類にどんな結果をもたらすのか具体的に解らないから、ジアマティがいくら奮闘しても力が入らない。眠気を誘うだけである。
例えば、スーパーマンがピンチに陥れば人類が困ることは誰にでも解る。そこに感情移入の要素がある。シャマランは意図的にその最低線まで曖昧にしたようで、少なくとも左脳人間の僕は登場人物たちが頑張れば頑張るほど白けていくという悪循環に入りこんでしまった。【平和】などという抽象に逃げてもらっては困るのだ。
ジアマティ扮する管理人の過去が勿体ぶって紹介されているが、かと言って彼の再生を真面目に描く気でもないらしい。
ちょっと面白いのは、妖精の名前がストーリーであり、登場人物たちに役割を宛がう展開になっていることである。つまり、これは映画なり小説なりの物語(ストーリー)を作り上げる過程をシャマランの心情を交えて綴ったものと理解すれば全く別の作品として楽しむことができる。しかし、それには主体となるストーリーが面白くなくては何にもならない。
シャマラン つまらん しまらん
この記事へのコメント
禁じ手手法かもしれませんが正直に「シックス・センス」
初見時、私は驚かされましたわ~。^^
期待感で大きく大きく上げたアドバルーンは
「サイン」のあの薄汚い火星人登場でもろくも
数百羽のカラスにつつかれ、地上にブ落ちましてからに、
「怖いもの見たさ」のつい釣られて観た本作。
ほんと、思いっきり、つまらくて、つまらなくて
ギッチラコ、ギッチラコ、船を漕ぎに漕いでしまいまして
フッっと飛び起きましら、まだジアマティが眉間に
シワ寄せて走り回っておりました・・・という次第。(--)
「ヴィレッジ」はシュマランです。「サイン」や本作よりは一般的な感覚では大分面白いはずです。^^;
「シックス・センス」はあの作品限りで終われば良かったのですが、追従する作品が何本も出てきたことのほうが大問題でして。凡作「フライト・プラン」もそこに乗った感じでした。
どう考えても人類や我々の生活に関わってこないお話。ゲーム脳なら楽しめるかもしれませんが、映画脳の人間には楽しめませんて。こんなんで1000万ドルなんて詐欺やで。(笑)
どうせなら、<ストーリー>を中心に「8・1/2」みたいな心情吐露映画にすれば面白かったかも。本文でも書いたように一部そうなっていたようにも思ったんですが。
「シックス・センス」は騙すためにご法度のインチキ使ってしまったから、やはり後味が悪かったんですよね。騙すのはまず隠すこと、もう一つは登場人物の視点を使った主観ショットなら良いんです。腹が立つより呆れました。
「アザーズ」は監督がハリウッド出身ではないですし、私も結構楽しみました。発想は似ていたかもしれませんけど、見せ方が違いましたね。
>口直し
意識するどころか観る前から計画していたりして。^^;
同じジャンル、同じ国、同じ品格の映画は余り続けないように計画を立てることもありますよ。
口直しをする時は、やはり手持ちの好きなビデオを見ます。
ヒッチコックなどやはり良いんじゃないでしょうか。^^
<シャマラン つまらん しまらん
まさしく!「シックス・センス」「アンブレイカブル」はまあいいとして、「サイン」とこれは駄目駄目です。「ヴィレッジ」未見ですが、これもアカンようですね…^^;)。「1000万ドルの脚本料」だったんですか!元はとれたのかな?それとも制作料が足りなくなってあんなチープな仕上がりになったのか…。
シャマランは作る毎に小手先になってつまらなくなってきましたね。
「サイン」で相当ミソを付けたのに、これはさらに輪をかけて曖昧模糊としてつまらなくなっていたのには参りました。^^;
3年くらい前はシャマランの脚本料が一番だったと思います。それと別に監督料を貰っていたかは定かではないですが。