映画評「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督ブレット・ラトナー
ネタバレあり
ミュータント(突然変異人間)同士の対立を描いたシリーズの第3作。
第1作は期待していなかったので予想外に楽しめ、第2作は期待に加えブライアン・シンガーの監督作として観た反動もあって余り面白からず、この第3作は監督が中継ぎ投手クラスのブレット・ラトナーに代わって余り期待もしなかったのだが、いやいやどうして楽しめた。
お話は至って単純、ミュータントと人類との共存を願って学校を作り力の平和的な使い方を教えているプロフェッサー、パトリック・スチュアートとその弟子たち(ヒュー・ジャックマン、ハリー・ベリーなど)が、彼と袂を分かち人類との対決姿勢を鮮明にしたイアン・マッケランのグループから、ミュータントの力を無力化する薬を作るベースとなっている少年を守る、というだけである。
キュア(治療薬)はミュータントであることに苦しむ者にとっては妙薬、そうでない者にとっては迷惑というわけだが、爆発的な力を持つファムケ・ヤンセンが二重人格に苦しんで結局悪漢グループに加わっていく模様が傍流として描かれ、翼が生えてくる少年のエピソードと共に最後に本流に合流して盛大な見せ場を作る、という具合になかなか上手く構成されている。
ところが、世間の評価は高い方から第2作、第1作、第3作となっていて僕とまるで逆なので、ちょっと驚くと同時に、純娯楽映画(ジャンル映画と言っても良い)に関する価値観が恐らくこの20年間くらいでかなり転倒しているので、さもありなんと納得。純娯楽映画においてはテンポを鈍重にするので本来極力避けられるべき性格描写が妙に有難がられ、展開を早くする為に避けられない単純さが馬鹿にされている現実があるのである。
似たような場面が繰り返されたり、クンフー映画みたいに一つのアクションが延々と続かない限りは、映像で見せる物語である映画の真価を最も発揮するものとしてシンプルなプロット、単純な作品を僕は大いに歓迎したい。
本作では夫々特徴を持つミュータントがこぞって登場、様々な見せ場を展開してくれるので、忍者映画の忍術合戦でも見ているような楽しさがある。
しかし、老人二人の扱いをみると、どうもこれで終わりではないようですぞ。
プロフェッサーと言っても僕ではありません。(笑)
2006年アメリカ映画 監督ブレット・ラトナー
ネタバレあり
ミュータント(突然変異人間)同士の対立を描いたシリーズの第3作。
第1作は期待していなかったので予想外に楽しめ、第2作は期待に加えブライアン・シンガーの監督作として観た反動もあって余り面白からず、この第3作は監督が中継ぎ投手クラスのブレット・ラトナーに代わって余り期待もしなかったのだが、いやいやどうして楽しめた。
お話は至って単純、ミュータントと人類との共存を願って学校を作り力の平和的な使い方を教えているプロフェッサー、パトリック・スチュアートとその弟子たち(ヒュー・ジャックマン、ハリー・ベリーなど)が、彼と袂を分かち人類との対決姿勢を鮮明にしたイアン・マッケランのグループから、ミュータントの力を無力化する薬を作るベースとなっている少年を守る、というだけである。
キュア(治療薬)はミュータントであることに苦しむ者にとっては妙薬、そうでない者にとっては迷惑というわけだが、爆発的な力を持つファムケ・ヤンセンが二重人格に苦しんで結局悪漢グループに加わっていく模様が傍流として描かれ、翼が生えてくる少年のエピソードと共に最後に本流に合流して盛大な見せ場を作る、という具合になかなか上手く構成されている。
ところが、世間の評価は高い方から第2作、第1作、第3作となっていて僕とまるで逆なので、ちょっと驚くと同時に、純娯楽映画(ジャンル映画と言っても良い)に関する価値観が恐らくこの20年間くらいでかなり転倒しているので、さもありなんと納得。純娯楽映画においてはテンポを鈍重にするので本来極力避けられるべき性格描写が妙に有難がられ、展開を早くする為に避けられない単純さが馬鹿にされている現実があるのである。
似たような場面が繰り返されたり、クンフー映画みたいに一つのアクションが延々と続かない限りは、映像で見せる物語である映画の真価を最も発揮するものとしてシンプルなプロット、単純な作品を僕は大いに歓迎したい。
本作では夫々特徴を持つミュータントがこぞって登場、様々な見せ場を展開してくれるので、忍者映画の忍術合戦でも見ているような楽しさがある。
しかし、老人二人の扱いをみると、どうもこれで終わりではないようですぞ。
プロフェッサーと言っても僕ではありません。(笑)
この記事へのコメント
私もブレット・ラトナーだったので期待していなかったのですが、なかなかどうして快調でしたね。シリーズ通しての印象も、1と3が面白く、2が中だるみ。間が凹んでしまった感じです。
>忍者映画の忍術合戦
おっしゃる通り! 私も全く同じことを考えながら見ておりましたよ(笑)
ちなみに『明日へのチケット』のオムニバス3作の印象も、プロフェッサーとほぼ同意見でございます。
また「女番長 野良猫ロック」を高評価くださるプロフェッサーの寛容さと見識の深さに、改めて敬意を表させてください!
人物像構築やら社会性やらに余り拘る人は駄目だと思います。
シュエットさんは如何?
私はSFやサスペンスといった、ジャンル映画中のジャンル映画にそうしたものを入れることには余り感心しません。
勿論内容と狙いと作り方によっては必ずしも当てはまりませんが、基本的には100年前の映画黎明期のスタンスで作り、観るべきタイプのジャンルとしてこの手の超人ものを観ることが多いわけです。本作はかなり直球でしたよ。
だからライミの「スパイダーマン」よりドナーやレスターの「スーパーマン」のほうがご贔屓なんです。
確かシュエットさんは「スパイダーマン」がお好きだったような記憶があるので言いにくいのですが。^^;
しかし、仕事でご多忙なのは大いに結構、どんどん書かれて大いに儲けて下さい。^^
優一郎さんも基本に忠実なんですねえ。^^
頭脳明晰だからと言ってテーマ性ばかり追い求めるのは娯楽映画を観る上では本末転倒。
と言って余りにミーハーが良いわけでもなく、きちんと出来栄えを判断できる分析力は持ちたいものです。
この映画は忍者映画の乗りでしょう。その昔観た「怪竜大決戦」という忍術+怪獣映画がこんな乗りだったなあ。勿論40年も前のチープな作品ですけど、好きでした。
>野良猫ロック
過分なご評価です。
なかなか日が当たらない映画でつい数年前までは無視していましたが、急に興味が出始めて全作観てみました。あの時代は根暗な作品が多いですが、このシリーズの暗いようで明るい方向性に邦画もなかなかやるわいと思いましたね。
調べてみたら「狼の挽歌」の公開の方が後でした。寧ろこちらが影響を与えていたりして?
おお、そうですか。
しかし、シュエットさんには「つまらん」と言われそうだなあ。(笑)
つまらないと思われても、騙されたと怒らないで下さいね、あくまで忍者映画の乗りなので。^^;
>トビー・マグワイア
可愛い男優ですよね。
マーク・ウォールバーグだったらつまらんでしょうね。(爆)
世間ではそんな評価なのですか?、私もオカピーさんと同じ評価です。
私も単純な娯楽映画が好きです。
こちらこそ有難うございます。
>世間の評価
私が最も信頼しているIMDbでも日本のallcinemaでも同じくらいの評価でしたので、そう言っても良いと思います。
単純な映画は作るのが難しい、ということを世間はもっと知るべきだと思いますね。そうすればもう少し価値判断が変わってくると思うのですが。
1年半も前に観たのですっかり忘れていたので、調べてみました。
ケン・レオン(Ken Leung)
です。