映画評「ウィンター・ソング」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年香港映画 監督ピーター・チャン
ネタバレあり
恋愛映画を専門としている感のある香港人監督ピーター・チャンの恋愛映画。
香港の人気映画スター金城武がジャッキー・チャンが監督する中国製ミュージカル映画に出演する為に上海を訪れる。共演する中国のトップ女優ジョウ・シュンは10年前に恋した相手だが、下積み時代を知られたくない為に容易に心を開かない。一方、監督は長年の恋仲でもあるジョウを何とか引き留めようと苦悩する。
という物語が、記憶を失った女性がサーカス団に引き取られ団長と恋仲になるうちにかつての恋人が入団してくる、というミュージカルの内容とオーヴァーラップしながら展開していく。
撮影中の映画の内容が実生活にダブり、過去の恋と現在の恋が二重構造的に描かれるという重層的な構成が注目に値するが、そこに問題点も内在している。
かつて若きアヌーク・エメが主演したフランス映画「火の接吻」が撮影中の「ロミオとジュリエット」とシンクロしながら恋愛模様を進行させていたのにやや似ているのだが、あちらの主役は男女優ではないので展開がぐっと明解だった。ところが、本作では本人同士が三角関係を演じ、とりわけ金城の風采の差が劇中と実生活の間で意外と少ないので時々こんがらがり、心情的に盛り上がりにくい。ムード優先で解り易さに努めず、ちょっと気取り過ぎである。
ミュージカル場面はロックオペラ風で、香港映画としてはかなり本格的な出来栄え。ハリウッド映画に比べると洗練され切ってはいないもののなかなかである。楽曲的に2004年の「オペラ座の怪人」を彷彿とするものもあるが、香港映画だけにその香港版「夜半歌聲 逢いたくて、逢えなくて」を思い出したりもする。あちらも10年の時を隔てた物語だった。
さて、映画の中では団長の墜落死で終わり、外では映画の完成により監督が区切りを付けようとするが、男優は寄りを戻した瞬間に女優を捨てるという計画を実行する。
と言ってもビター・エンドというわけではなく、勿論ハッピー・エンドでもない。天使も出てくるミュージカル仕立ての割には現実的なアプローチで、もっと夢を見せてくれても良いのではないかという不満が残る。
色々と文句を言ってきたが、邦画は遂にミュージカル部門でも香港映画に抜かれたかという思いにはさせてくれますぞ。
2005年香港映画 監督ピーター・チャン
ネタバレあり
恋愛映画を専門としている感のある香港人監督ピーター・チャンの恋愛映画。
香港の人気映画スター金城武がジャッキー・チャンが監督する中国製ミュージカル映画に出演する為に上海を訪れる。共演する中国のトップ女優ジョウ・シュンは10年前に恋した相手だが、下積み時代を知られたくない為に容易に心を開かない。一方、監督は長年の恋仲でもあるジョウを何とか引き留めようと苦悩する。
という物語が、記憶を失った女性がサーカス団に引き取られ団長と恋仲になるうちにかつての恋人が入団してくる、というミュージカルの内容とオーヴァーラップしながら展開していく。
撮影中の映画の内容が実生活にダブり、過去の恋と現在の恋が二重構造的に描かれるという重層的な構成が注目に値するが、そこに問題点も内在している。
かつて若きアヌーク・エメが主演したフランス映画「火の接吻」が撮影中の「ロミオとジュリエット」とシンクロしながら恋愛模様を進行させていたのにやや似ているのだが、あちらの主役は男女優ではないので展開がぐっと明解だった。ところが、本作では本人同士が三角関係を演じ、とりわけ金城の風采の差が劇中と実生活の間で意外と少ないので時々こんがらがり、心情的に盛り上がりにくい。ムード優先で解り易さに努めず、ちょっと気取り過ぎである。
ミュージカル場面はロックオペラ風で、香港映画としてはかなり本格的な出来栄え。ハリウッド映画に比べると洗練され切ってはいないもののなかなかである。楽曲的に2004年の「オペラ座の怪人」を彷彿とするものもあるが、香港映画だけにその香港版「夜半歌聲 逢いたくて、逢えなくて」を思い出したりもする。あちらも10年の時を隔てた物語だった。
さて、映画の中では団長の墜落死で終わり、外では映画の完成により監督が区切りを付けようとするが、男優は寄りを戻した瞬間に女優を捨てるという計画を実行する。
と言ってもビター・エンドというわけではなく、勿論ハッピー・エンドでもない。天使も出てくるミュージカル仕立ての割には現実的なアプローチで、もっと夢を見せてくれても良いのではないかという不満が残る。
色々と文句を言ってきたが、邦画は遂にミュージカル部門でも香港映画に抜かれたかという思いにはさせてくれますぞ。
この記事へのコメント
仕立ては大きいですし、仰るように可能性を秘めた作品ですが、もう少し素直に作ったほうが良いのにな、と思いましたね。
天使を出したりするのもどうなのかな。最近ナレーションで始まる映画が多いですよねえ。どうも好かんのです。本来映像で示すべき設定や伏線をここでみんな喋ってしまう。むしろその見せ方で上手いか下手か解るというのに。流行と言えば流行でしょうが、作り手に自信がないのかと疑いたくもなります。
>こじんまりした日本映画
韓国や香港の映画に比べると表現が控え目なのだからそこを逆手に取るのも悪くないですが、たまにはスケール感のある実写映画も観たいですよね。