映画評「オリヴァ・ツイスト」(1948年版)
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1948年イギリス映画 監督デーヴィッド・リーン
ネタバレあり
30回以上も映像化されているチャールズ・ディケンズの同名小説をデーヴィッド・リーンが「大いなる遺産」に続いて映像化したドラマ。
救貧院で生まれたオリヴァー(ジョン・ハワード・デーヴィス)が最初に引き取られた葬儀屋から抜け出して行き着いたロンドンで、ファギン(アレック・ギネス)を首領とするスリ団に入れられるが、仲間がスリを働いた紳士ブラウンロー氏(ヘンリー・スティーヴンスン)に救われた後再び連れ戻される。
必死に少年を取り戻そうと紳士が働きかけた結果ファギンの仲間のサイクス(ロバート・ニュートン)が愛人ナンシー(ケイ・ウォルシュ)を撲殺する事件に発展する一方で、結局悪党たちは官憲の前に倒れ、オリヴァーは祖父であるブラウンロー氏の許に戻る。
という物語の骨格は原作に極めて近く、先年観たロマン・ポランスキー版とも大きな差異はない。
ポランスキー版がブラウンロー氏と少年の血縁関係を明確にしなかったのは【少年の無垢な魂】という古くて新しいテーマを強調する狙いだったと思う。救貧院(救貧法)糾弾という時代固有の主題はさすがにリーン版でも採用されていないが、しかし、終戦直後の製作だけに貧困こそが諸悪の根源であるという一般論を散りばめ、社会風刺を維持している。
うがった見方をすれば、「靴みがき」を始め世界各国で作られている貧しい少年を主人公にした作品群に対する対抗意識がリーンにあったのかもしれない。
リーンは僕の好きな監督で、本作でもパン・フォーカスの隅々までピントのあった映像でタイトに展開、ポランスキー版より緩急自在である。路地での追いつ追われつの描写がダイナミックと言える一方で、場末の場面では最近の作品では殆ど見られなくなったアングル・ショット(所謂斜め撮りです)により心理を圧迫するムードを醸成するといったように、既に名人の境地と言うべし。但し、(現時点という意味ではなく、製作当時としても)些か古めかしいお話という感じは否めない。
ロディー・マクドウォールに似ているジョン・ハワード・デーヴィスは作品中でオリヴァーが言われるように哀れを誘う憂いがある。悪漢グループでは、サイクスを演じたロバート・ニュートンはいつも通りだが、ピーター・セラーズの前の変装役者と言えばこの人、アレック・ギネスのファギンが楽しい。
1948年イギリス映画 監督デーヴィッド・リーン
ネタバレあり
30回以上も映像化されているチャールズ・ディケンズの同名小説をデーヴィッド・リーンが「大いなる遺産」に続いて映像化したドラマ。
救貧院で生まれたオリヴァー(ジョン・ハワード・デーヴィス)が最初に引き取られた葬儀屋から抜け出して行き着いたロンドンで、ファギン(アレック・ギネス)を首領とするスリ団に入れられるが、仲間がスリを働いた紳士ブラウンロー氏(ヘンリー・スティーヴンスン)に救われた後再び連れ戻される。
必死に少年を取り戻そうと紳士が働きかけた結果ファギンの仲間のサイクス(ロバート・ニュートン)が愛人ナンシー(ケイ・ウォルシュ)を撲殺する事件に発展する一方で、結局悪党たちは官憲の前に倒れ、オリヴァーは祖父であるブラウンロー氏の許に戻る。
という物語の骨格は原作に極めて近く、先年観たロマン・ポランスキー版とも大きな差異はない。
ポランスキー版がブラウンロー氏と少年の血縁関係を明確にしなかったのは【少年の無垢な魂】という古くて新しいテーマを強調する狙いだったと思う。救貧院(救貧法)糾弾という時代固有の主題はさすがにリーン版でも採用されていないが、しかし、終戦直後の製作だけに貧困こそが諸悪の根源であるという一般論を散りばめ、社会風刺を維持している。
うがった見方をすれば、「靴みがき」を始め世界各国で作られている貧しい少年を主人公にした作品群に対する対抗意識がリーンにあったのかもしれない。
リーンは僕の好きな監督で、本作でもパン・フォーカスの隅々までピントのあった映像でタイトに展開、ポランスキー版より緩急自在である。路地での追いつ追われつの描写がダイナミックと言える一方で、場末の場面では最近の作品では殆ど見られなくなったアングル・ショット(所謂斜め撮りです)により心理を圧迫するムードを醸成するといったように、既に名人の境地と言うべし。但し、(現時点という意味ではなく、製作当時としても)些か古めかしいお話という感じは否めない。
ロディー・マクドウォールに似ているジョン・ハワード・デーヴィスは作品中でオリヴァーが言われるように哀れを誘う憂いがある。悪漢グループでは、サイクスを演じたロバート・ニュートンはいつも通りだが、ピーター・セラーズの前の変装役者と言えばこの人、アレック・ギネスのファギンが楽しい。
この記事へのコメント
ポランスキー版は壮大な俯瞰を駆使した“薄口しょうゆ”^^、
リーン版は闇に蠢く白黒画面を駆使した“濃口しょうゆ”、
な~~んちゃって。
プロフェッサー、私、ひいきのTSUTAYAクローズで、
このたび、WOWOWに加入致しました。^^
で、バッチリ!グッド・タイミング!
「ライアンの娘」鑑賞!
明日はまた「ヴァージニア・ウルフ~」が観れます。^^
そうそう、12月のNHK衛星映画では
ベルイマン特集ですね。
特に「ある結婚の風景」の放映は楽しみです。
ポランスキー版もCGとチェコでのロケを駆使して時代色再現に努めていましたが、書割の本作の方が時代色が濃く出ていたように思いますね。フィルの状態も良くて映像に堪能しました。
>WOWOW
おおっ! 久しぶりのカムバックですね?
WOWOWの回し者ではないですが、時々凄い作品も出てきますので、せいぜいご利用ください。(笑)
>ベルイマン特集
一緒に「サラバンド」を観たいのです。^^
どうしたことか、そちらの記事においてはTBも書き込みも出来ません。
無視しているわけでないので、怒らないでねえ。
申し訳ございません。
もう少し様子を見てくださいませ。
>ピーター・セラーズ
???
アレック・ギネスのことですよね?
当方の変な記事に誘導されてしまったようですね。^^
おもちろ~~~~~~いい!!(^^)
あっ、プロフェッサー、こんにちは~^^
横レスで思わず童謡を歌って、あっ、動揺して
しまって(^^)コメントしてま~~すっ(ペコリ)
また
ぶーすかさんがセラーズのノツボにスッポリ、
ハマりそうなプロフェッサーのフェイト文だもん^^
あっ、プロフェッサー、(←急に話題変るB型)
「ローマで起こった奇妙な出来事」!!
これ!
おもしろい!(初見でしたの)
笑った、笑った~~~!
ひっさしぶりにお腹抱えて笑いました!
気が向いたら記事にしたいと思いますが
いやほんと一刻たりともダレないあのホン、
良きテンポ、達者な役者・・・ラストの
あの追っかけ回しシーンの巧みなこと!!
ライヴ終わってから私こればっか観てますの(笑)
オジャマッこ、すました(ペコリ)
ぶーすかさんには何だか悪いことしました。ご免なさ~い。<(_ _)>
>ローマで起こった奇妙な出来事
何たってご贔屓リチャード・レスターですからね。^^
が、しかし、三十数年前にTVで観た時は
さほどでもなかった記憶が...
それで今回もパスしちまいましたが...
ゼロ・モステルが合わなかったのかな?