映画評「ユア・マイ・サンシャイン」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年韓国映画 監督パク・チンピョ
ネタバレあり
韓国の水準ロマンス映画は難病といった悲劇と結び付け陽と陰の極端なコントラストで泣かせようというプリミティヴな手法が目立って観る度にげんなりしているが、2002年に報道された実話をベースにしたという本作はリアリズム基調でなかなかしっかり作られている。
母親と二人暮らしの30代の農夫ファン・ジョンミンが、喫茶店に勤めるチョン・ドヨンに一目惚れ、牛乳などを届けるなどして気を引こうとするが、過去のある彼女は誠実な彼の懸命な求愛に応じようとしない。
やがて彼女が客に暴力を受けた時の甲斐甲斐しい彼の看病がその心を柔化させ、遂に結婚する。が、幸福は長続きしない。暴力的な前夫が現れ、手切れ金を確保する為にファンは牛を売って牧場経営を諦めただけでなく、妻のHIV感染を知って落ち込む。
HIV感染を知らぬドヨンは夫の落ち込みを自分の過去に由来するものと勘違いして失踪した後売春を生業とするようになるが、感染を隠して売春したかどで逮捕される。事件により行方が分ったものの彼女は有罪になり、彼は家族に疎まれ村人から差別されても愛を貫こうとする。
最初に印象に残るのが農民たちがHIV感染をエイズと同一視し、空気感染するのではないかと誤解している様子である。
僕らも当初はその区別が付かなかったものの90年代初めにはもう認識していたし、まして空気感染しないことは最初から常識だったのに比べて、2000年前後の話としては大分遅れている。無論それは田舎の旧弊な体質を象徴する現象であろうし、それに韓国に根強い<家への意識>が絡んで葛藤が生まれる。葛藤あっての純愛である。
平均的韓国映画に比べて演出や演技が節度があって宜しい。面会場面での激情ぶりは日本人から観ればやり過ぎにも思えるが、TV報道などで垣間見る韓国人の感情の激しさを考えればごく一般的なものであって、過剰な演出・演技と看做すことはできない。
終わってみれば何ということはないお話だが、ファン・ジョンミンとチョン・ドヨンがごく庶民的な風采なのも実感がある。
一心岩をも通す。
2005年韓国映画 監督パク・チンピョ
ネタバレあり
韓国の水準ロマンス映画は難病といった悲劇と結び付け陽と陰の極端なコントラストで泣かせようというプリミティヴな手法が目立って観る度にげんなりしているが、2002年に報道された実話をベースにしたという本作はリアリズム基調でなかなかしっかり作られている。
母親と二人暮らしの30代の農夫ファン・ジョンミンが、喫茶店に勤めるチョン・ドヨンに一目惚れ、牛乳などを届けるなどして気を引こうとするが、過去のある彼女は誠実な彼の懸命な求愛に応じようとしない。
やがて彼女が客に暴力を受けた時の甲斐甲斐しい彼の看病がその心を柔化させ、遂に結婚する。が、幸福は長続きしない。暴力的な前夫が現れ、手切れ金を確保する為にファンは牛を売って牧場経営を諦めただけでなく、妻のHIV感染を知って落ち込む。
HIV感染を知らぬドヨンは夫の落ち込みを自分の過去に由来するものと勘違いして失踪した後売春を生業とするようになるが、感染を隠して売春したかどで逮捕される。事件により行方が分ったものの彼女は有罪になり、彼は家族に疎まれ村人から差別されても愛を貫こうとする。
最初に印象に残るのが農民たちがHIV感染をエイズと同一視し、空気感染するのではないかと誤解している様子である。
僕らも当初はその区別が付かなかったものの90年代初めにはもう認識していたし、まして空気感染しないことは最初から常識だったのに比べて、2000年前後の話としては大分遅れている。無論それは田舎の旧弊な体質を象徴する現象であろうし、それに韓国に根強い<家への意識>が絡んで葛藤が生まれる。葛藤あっての純愛である。
平均的韓国映画に比べて演出や演技が節度があって宜しい。面会場面での激情ぶりは日本人から観ればやり過ぎにも思えるが、TV報道などで垣間見る韓国人の感情の激しさを考えればごく一般的なものであって、過剰な演出・演技と看做すことはできない。
終わってみれば何ということはないお話だが、ファン・ジョンミンとチョン・ドヨンがごく庶民的な風采なのも実感がある。
一心岩をも通す。
この記事へのコメント
鈍牛のような主人公が味がありましたねぇ。
実話を基にしたどこまでが拡張表現なのかわかりませんが、
相当改編もあるでしょうが、実話という枠組みの中では前半を一般的な韓流ロマンスのように能天気に作るわけにも行かないはずですから、それが良い面に働いたかなと思います。