映画評「ドミノ」
☆☆★(5点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督トニー・スコット
ネタバレあり
ローレンス・ハーヴェイは僕らの世代にはかなり有名な映画俳優だが、1973年に45歳で夭逝しているので最近の若い人は殆ど知らないだろう。その彼が晩年に儲けた娘が本作の主人公ドミノ・ハーヴェイであるが、かなり波乱万丈な人生を送ったようだ。過去形なのは彼女も本作のクランクアップ前に35歳で亡くなっているからである。
有名俳優とトップモデルの間に生まれて何の不自由もなく生きてきたのに、モデル業も俳優業もつまらず、大学もバカバカしてくて中退した彼女(キーラ・ナイトリー)は、保釈保証人の為に犯罪者を捕まえて分け前に与る賞金稼ぎの道を歩み、エド(ミッキー・ローク)をリーダーとする賞金稼ぎグループに加わる。
ここまでは彼女の半生を描くようなムードだが、それ以降大変入り込んだ複雑千万な、事実とは殆ど無縁の犯罪映画になる。
清廉潔白の振りをしている実業家の大金1000万ドルが四人組の覆面強盗に奪われるが、犯人は大金を放置して退散。その犯行には偽装が行われていた為にドミノのグループは関係のない四人組を捕捉してしまう。しかも、今度はFBIがこの偽装四人組の射殺を偽装。この偽装連中のうち二人がマフィアの大ボスの息子だった為に彼らは慌てて1000万ドルを掠めとった運輸局の男から奪還してラスヴェガスのタワービル最上階で引き渡しを決行した結果、そこは実業家、マフィア、賞金稼ぎ、FBIの集う修羅場と化す。
とにかく種々雑多な人物が錯綜し時間も相前後するので甚だ解りにくいが、話が掴めないほどではない。しかし、これは「犯罪群像劇かい」と皮肉も言いたくなるほどご丁寧に関係者の背景や人物像を説明するので物語がスムーズに展開せず、128分の上映時間を20分くらいがところは短縮できそうである。
それより問題なのはリドリー・スコットの不肖の弟トニー・スコットの演出である。色々な映像処理を施した極短のショットを重ねる彼の演出はいつも見づらいと思ってきたが、特に今回は閉口した。そもそも短いショットの積み重ねは全体を把握させるには難がある上に、かくもコントラストの強い映像をサブリミナル的な感覚で切り返されカメラのフラッシュのような勢いで畳み掛けられては心理的にも嫌になってしまう。やり過ぎである。その中でこれだけ複雑な話を理解しろというのは拷問に近い。
配役陣では、キーラ・ナイトリーの奮闘を認めたいが、線が細くて断然格好良いというところまでは行かず。ドミノの母親に扮するジャクリーン・ビセットは本当にご無沙汰で、ちょっと嬉しくなった。
過ぎたるは猶及ばざるが如し。
2005年アメリカ映画 監督トニー・スコット
ネタバレあり
ローレンス・ハーヴェイは僕らの世代にはかなり有名な映画俳優だが、1973年に45歳で夭逝しているので最近の若い人は殆ど知らないだろう。その彼が晩年に儲けた娘が本作の主人公ドミノ・ハーヴェイであるが、かなり波乱万丈な人生を送ったようだ。過去形なのは彼女も本作のクランクアップ前に35歳で亡くなっているからである。
有名俳優とトップモデルの間に生まれて何の不自由もなく生きてきたのに、モデル業も俳優業もつまらず、大学もバカバカしてくて中退した彼女(キーラ・ナイトリー)は、保釈保証人の為に犯罪者を捕まえて分け前に与る賞金稼ぎの道を歩み、エド(ミッキー・ローク)をリーダーとする賞金稼ぎグループに加わる。
ここまでは彼女の半生を描くようなムードだが、それ以降大変入り込んだ複雑千万な、事実とは殆ど無縁の犯罪映画になる。
清廉潔白の振りをしている実業家の大金1000万ドルが四人組の覆面強盗に奪われるが、犯人は大金を放置して退散。その犯行には偽装が行われていた為にドミノのグループは関係のない四人組を捕捉してしまう。しかも、今度はFBIがこの偽装四人組の射殺を偽装。この偽装連中のうち二人がマフィアの大ボスの息子だった為に彼らは慌てて1000万ドルを掠めとった運輸局の男から奪還してラスヴェガスのタワービル最上階で引き渡しを決行した結果、そこは実業家、マフィア、賞金稼ぎ、FBIの集う修羅場と化す。
とにかく種々雑多な人物が錯綜し時間も相前後するので甚だ解りにくいが、話が掴めないほどではない。しかし、これは「犯罪群像劇かい」と皮肉も言いたくなるほどご丁寧に関係者の背景や人物像を説明するので物語がスムーズに展開せず、128分の上映時間を20分くらいがところは短縮できそうである。
それより問題なのはリドリー・スコットの不肖の弟トニー・スコットの演出である。色々な映像処理を施した極短のショットを重ねる彼の演出はいつも見づらいと思ってきたが、特に今回は閉口した。そもそも短いショットの積み重ねは全体を把握させるには難がある上に、かくもコントラストの強い映像をサブリミナル的な感覚で切り返されカメラのフラッシュのような勢いで畳み掛けられては心理的にも嫌になってしまう。やり過ぎである。その中でこれだけ複雑な話を理解しろというのは拷問に近い。
配役陣では、キーラ・ナイトリーの奮闘を認めたいが、線が細くて断然格好良いというところまでは行かず。ドミノの母親に扮するジャクリーン・ビセットは本当にご無沙汰で、ちょっと嬉しくなった。
過ぎたるは猶及ばざるが如し。
この記事へのコメント
>やり過ぎである。その中でこれだけ複雑な話を理解しろというのは拷問に近い。
はい、わたし途中で見るのやめちゃいまして一時間と持ちませんでした。
汚れ役のキーラ・ナイトレイにミッキー・ロークと出演者はよいのにね。
トニー・スコット監督は「デジャヴ」がもう少し見やすくなってるそうなのでこちらを観たいです。
そうでしたか。
「さもありなん」と思えるがちゃがちゃぶりでしたね。^^;
一体一分間にどれくらいのカット数があるだろうと、思わず数えたくなりました。(笑)
昔の作品なら大体6~8くらいですが。
>デジャヴ
期待して観たらデ・ジャヴ、なんてならないことをお祈り致します。(爆)
今はフリージャズって言うみたいですが
トニー・スコットの本作の映像は
色の洪水と細切れ裁断分断カットてんこ盛り、
かのオーネット・コールマンやセシル・テーラーの
ような映画的前衛ジャズと私は感じました。
大きなスクリーンの光と色の中で
カッコいいBGMとともに
ずっと私は酔っておりましたが・・・
TVサイズでは、どうでしょう
うるさく感じられるだけだったのですね。
映像の前で溜息つきながら観ている
プロフェッサーをしっかり想像できますことよ。(--)^^
まぁ~、しゅべる&こぼるさんは途中でリタイアですか(笑)
たしか~「空中庭園」で気持ち悪くなったのも
しゅべる&こぼるさんだったんじゃ・・・^^;
>線が細くて
今はこういうバービー人形のような女優がうけるんでしょうね。
子供みたいな顔、発育不良バディにドでっかい銃の
ミスマッチを狙ったのかもしれませんが
絵的には、到底、無理がありましたね。
オーネット・コールマンの特別編集CDを
自分で作ったくらいですから
姐さんの仰ることが解らないでもないのですが、
4分のプロモーションVなら我慢できても、
それを32回(128分)続けて見せられたら
ちょっと逃げたくなる、といった心境でしたね。
「映画はPVではない」と同じようなことを仰る人に対しては
【我が意を得たり】と思った次第。
そんなこんなでご免なさい。^^;
費用対効果ならで時間対効果という意味でも
20分くらい無駄な描写があったような気がします。
たまにはこういうこともありますって、ね。^^
>空中庭園
私もその気(け)あり。
しかし、あの映画の画面の揺れにはリズムという
目的があるのが明白だったので
時々壁を観るようにして乗り切りました。(笑)
もう、トニースコットのおっさんは、結構なお年ですよ。
でも、成熟な巨匠になることを、どっかで拒んでいるんでしょうねぇ。
>トニー・スコット
まあそういう意味では本作のヒロインみたいなものですね。
しかし、ちょっと賑やかすぎではないですかねえ。^^;
馬鹿にされがちな「トップガン」などは寧ろ良いと思いますですよ。