映画評「あるいは裏切りという名の犬」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2004年フランス映画 監督オリヴィエ・マルシャル
ネタバレあり
製作者・脚本家としてのリュック・ベッソンはフランスのフィルム・ノワールをアメリカナイズして全くつまらない代物に変えてしまったが、本作はじれったい代わりに濃厚なムードで楽しませてくれた、60-70年代のフィルム・ノワール、特にアンリ・ヴェルヌイユ辺りの感覚を彷彿とするものがあり嬉しかった。実話をベースにした刑事映画である。
連続現金輸送車強盗事件で辛酸を舐め続けているパリ警視庁のBRI(探索出動班)を指揮するダニエル・オートゥイユとBRB(強盗鎮圧班)を指揮するジェラール・ドパルデュー。
二人は友人だったが今はオートゥイユの妻になっているヴァレリア・ゴリノを巡って恋の鞘当ても演じた後人生観の違いから決別するが、出世欲にかられるドパルデューは事件解決の功績をBRIに取られるのが面白くなく功を焦って勝手に起こした行動から犯人を取り逃がしただけに留まらず、同僚を死なせ、さらにオートゥイユを殺人事件を起こした情報提供者との共犯に仕立てて投獄、犯人と共にヴァレリアを死に至らしめてしまう。
大悪を排する為に小悪を認めたりもするが同僚の信頼の厚いオートゥイユと出世しか眼中になくその為には何でもするドパルデューの性格対比を軸にじっくりと展開、かつてのフレンチ・ノワールよりスピード感があり若干派手な印象はあるが、基本はフランス流のスローな重苦しさに支配されている。どの国の映画も同じでは映画ファンとしてはつまらないので、こういう作風は大いに歓迎したい。
さて、お話のほうは色々と曲折があるものの終わってみれば古色蒼然な勧善懲悪にすぎない。「なーんだ」てなもんだが、全くがっかりさせないのは復讐するのがオートゥイユ本人ではなく彼に親しみを覚えドパルデューの卑劣を憎んでいた部下フランシス・ルノーだからである。彼は仲間を襲った刑事グループへの復讐を狙っていたギャング団に襲われた時にドパルデューの名前を告げていたのである。観客はオートゥイユを狙うと思い込んでいるので、良い意味で肩すかしを食らう。観客の思い込みを利用したうまいアイデアで、ここに★一つを進呈したい。「ドパルデューだけが死んでオートゥイユが助かるのがどうも」などと言っているようでは本作の主題と旨味を全く理解していないことになる。
オートゥイユ逮捕に繋がる売春婦の証言やギャングがわざわざオートゥイユの出獄を7年間も待って行動を起こしたような印象を残す辺り筋立てには細かい穴が幾つもあるが、これはフレンチ・ノワールの伝統みたいなもので余り大騒ぎするには及ばぬ。
主演のお二人は丁々発止の演技合戦で見応え充分だが、立派な鼻で圧倒しているというのが妥当(笑)。
2004年フランス映画 監督オリヴィエ・マルシャル
ネタバレあり
製作者・脚本家としてのリュック・ベッソンはフランスのフィルム・ノワールをアメリカナイズして全くつまらない代物に変えてしまったが、本作はじれったい代わりに濃厚なムードで楽しませてくれた、60-70年代のフィルム・ノワール、特にアンリ・ヴェルヌイユ辺りの感覚を彷彿とするものがあり嬉しかった。実話をベースにした刑事映画である。
連続現金輸送車強盗事件で辛酸を舐め続けているパリ警視庁のBRI(探索出動班)を指揮するダニエル・オートゥイユとBRB(強盗鎮圧班)を指揮するジェラール・ドパルデュー。
二人は友人だったが今はオートゥイユの妻になっているヴァレリア・ゴリノを巡って恋の鞘当ても演じた後人生観の違いから決別するが、出世欲にかられるドパルデューは事件解決の功績をBRIに取られるのが面白くなく功を焦って勝手に起こした行動から犯人を取り逃がしただけに留まらず、同僚を死なせ、さらにオートゥイユを殺人事件を起こした情報提供者との共犯に仕立てて投獄、犯人と共にヴァレリアを死に至らしめてしまう。
大悪を排する為に小悪を認めたりもするが同僚の信頼の厚いオートゥイユと出世しか眼中になくその為には何でもするドパルデューの性格対比を軸にじっくりと展開、かつてのフレンチ・ノワールよりスピード感があり若干派手な印象はあるが、基本はフランス流のスローな重苦しさに支配されている。どの国の映画も同じでは映画ファンとしてはつまらないので、こういう作風は大いに歓迎したい。
さて、お話のほうは色々と曲折があるものの終わってみれば古色蒼然な勧善懲悪にすぎない。「なーんだ」てなもんだが、全くがっかりさせないのは復讐するのがオートゥイユ本人ではなく彼に親しみを覚えドパルデューの卑劣を憎んでいた部下フランシス・ルノーだからである。彼は仲間を襲った刑事グループへの復讐を狙っていたギャング団に襲われた時にドパルデューの名前を告げていたのである。観客はオートゥイユを狙うと思い込んでいるので、良い意味で肩すかしを食らう。観客の思い込みを利用したうまいアイデアで、ここに★一つを進呈したい。「ドパルデューだけが死んでオートゥイユが助かるのがどうも」などと言っているようでは本作の主題と旨味を全く理解していないことになる。
オートゥイユ逮捕に繋がる売春婦の証言やギャングがわざわざオートゥイユの出獄を7年間も待って行動を起こしたような印象を残す辺り筋立てには細かい穴が幾つもあるが、これはフレンチ・ノワールの伝統みたいなもので余り大騒ぎするには及ばぬ。
主演のお二人は丁々発止の演技合戦で見応え充分だが、立派な鼻で圧倒しているというのが妥当(笑)。



この記事へのコメント
それにしても、ほとんどこの作品と同じような、実際の事件があったんですね。ちょっと桜田門では想像できませんね。
日本の警官は、本作に出てきた事勿れ主義みたいな人物が多そうだから、フィルム・ノワールに使われそうな事件はなさそうですね。
自白強制などでは、今も昔もかなりやりたい放題かもしれませんけど。
そんな合間をぬって、この作品を楽しみました。
いいですねえ。ノワールは。多少あらがあっても全然気にすることはないと思いますし、良い人と悪い人がこのように固められていると却って安心ですよ。
それにしても、「仁義」のブールヴィルとイブ・モンタンを思い浮かべて鑑賞してしまったのですが、ドパルデュー自身が良識的な規範意識を持っていたならば、何らかの理由から警察を退職していたように思います。「仁義」のイブ・モンタンになったかなあ。
オートゥイユが、突きつけられる現実を直視して、大人として生きようとしていたなら、ブールヴィルのように孤独になっていたようにも思います。ちょっと非現実な自信が強くて脇が甘いんですよね。年の割には若いから、あんな風に付け込まれちゃうんですよ。
でも、わたしは、ベッソンもデ・パルマの作品も好きですが、この作品は歴史的な流れにあることで安心して観ていられました。
では、また。
これはフランス製フィルム・ノワールらしい作風で良かったですね。
>ベッソン
彼自身がメガフォンを取った作品はフランスらしさがありますが、製作に回った作品例えば「TAXi」とか「トランスポーター」とかはアメリカ的なテンポを求めすぎ、退屈はしませんが、どうもいかんです。
昔は1分くらいフィルムを見れば撮影スタイルからイタリア映画と解ったものですが、最近はロシア製もフランス製もアメリカ製も大差がなく、ベッソンに限らず、映画界のグローバル化は個性をなくして、本当につまらない。こと映画に関してはグローバル化反対。各国が協力するのは構いませんけどね。
>「仁義」
そういう伝統を感じさせる配置ではあります。
警察を退職していれば、モンタンという線も濃厚でしたね。
オートゥイユはブールヴィルで間違いないところ。
って、一体何の話をしているんだか(笑)。