映画評「この愛にすべてを」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1970年アメリカ映画 監督ジョージ・スティーヴンズ
ネタバレあり

観たことがあると思っていたが、観たのは同じくエリザベス・テイラーが出た2年後の「ある愛のすべて」だった。似た題名で紛らわしいですなあ。

リズが演ずるのはラス・ヴェガスの踊り子だが、だぶだぶの体を持て余す38歳のリズでは苦笑が出る。幸か不幸か踊る場面はない。

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そんな彼女が酒場のピアニストのウォーレン・ビーティと親しくなり、賭博に取りつかれてニューヨークへ出る為に貯めた5000ドルまですってしまった彼を同居させる。彼女にしてみれば離婚して彼女を迎えに来るはずの実業家を待っている日々で寂しさが高じて浮気心を起こしたに過ぎないが、やがて二人とも浮気を超えた気持ちになるものの、彼の賭博好きがネックになっていく。

クラブと酒場と賭博場の場面が少しある以外は全てリズのアパート内の描写で、中盤折角離婚してロンドンへ一緒に旅立とうとリズの許にやってきたのに振られてしまう可哀想なチャールズ・ブラスウェルが絡んでくる以外は殆ど二人芝居ということになる。

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誰がどう観ても舞台の映画化と解る展開で、原作はフランク・ギルロイ。同じ舞台劇の映画化でもニール・サイモン辺りだともう少しお話にひねりがあって楽しめるが、本作は監督ジョージ・スティーヴンズが真面目くさって映像化しているだけということもあって、登場人物の心情同様にもやもやしているうちに終わってしまう。

二人芝居なので「バタフィールド8」以来性格俳優的になってきたリズとビーティの丁々発止の演技合戦を楽しみたいところだが、リズが中の上くらいの出来栄え、受け止めるビーティが面白味不足で物足りないので、芝居全体も盛り上がらない。彼が姉さんのシャーリー・マクレーンくらいニュアンスの出せる役者だったら、また一味違ったドラマになったかもしれない。

「愛がすべて」はスタイリスティックス。♪I can't give you anything but my love, but my love...

この記事へのコメント

2007年12月18日 09:13
63年の「クレオパトラ」ですっかり映画関係者を振り回した
あげく多大な損失を被らせた上に自分はバートンと強烈&強引
ゴロニャ~~~ンになりあそばって・・・(--)^^

そのツケが・・・65年の「いそしぎ」あたりからの肥満体~。
本作と前後して「夕なぎ」も放映されていましたので観ましたが
ブンブクブンのリズと相まってなんじゃいこのホンは!
「いそしぎ」以降のリズははっきり言ってファンとしては辛い。

そして彼女はスターってあって役者としては、ヘタの部類。
ホントに巧い人は“脇”に、いる。
でも脇は巧くてもスターにはなれない。

唯一リズの例外は66年の「ヴァージニア~」。
しかしこれも太ったリズにとってはラッキーな役回りで
ホンと演出がズバ抜けて良かった・・・がホントのところかも。^^

あ、本作「この愛に~」は忘れるくらい前にTV放映にて鑑賞。
・・・だれが見ても“駄作”ですわ。(--)^^

プロフェッサーの“役者の私生活に興味はない”
私も同感系統ですが、いかんせん
色(身体&演技)に出にけり・・・のケースも多々ありまするぅ。^^;
オカピー
2007年12月19日 02:21
viva jijiさん

遠回しの要望に応じてわざわざおいで下さり有難うございまする。

>リズ
同感。
当方も彼女は上手いと思わないなあ。
本作の演技を「中の上」としたのはあくまで彼女の演技歴の中で、という意味でございます。それにも異議があるかもしれませんが。^^;
彼女にベルイマン映画の女優のような演技を要求しても無理なので、この程度の<大きな>演技でも良いですが、もうちょっと陰影と言うかひねりというか一工夫は欲しかったですねえ。
結局演技を見る作品ですから、ビーティの受けの芝居がもっと良ければ風俗劇的に観られたかもしれませんけれど。
しかし、駄作であろうと何であろうとスター俳優らしい時代の作品が見られるのは、今の小佳作を見るより愉快なのでした。

>役者の私生活
解ります。ただ、過程はどうでも良いですよね。

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