映画評「沈黙の追撃」

☆★(3点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督アンソニー・ヒコックス
ネタバレあり

「ザ・マークスマン」映画評の余話の中で「現在真の意味でのB級映画はない」と述べたが、今月観たウェズリー・スナイプス主演の二本や本作などビデオ映画はそれに相当するかもしれない。
 昨今のB級映画あるいはビデオ映画とは言ってもスタッフ・キャスト以外には金をかけ体裁だけは立派なものが多くて、その意味ではなかなか侮れない。本作も昔ならA級で通用する外見をしているので、問題は中身ということになる。

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ウルグアイのアメリカ大使館で大使がボディガードに撃たれ、その後ボディガードは互いに撃ち合って全滅するという事件が発生。
 CIAはゲリラを味方に引き入れた洗脳の専門家ニック・ブリンブルを事件の首謀者として捕捉する為に特殊部隊を派遣するが見事に返り討ちに遭い、数名が捕虜にされる。
 今度は組織の壊滅と捕虜の奪還を遂行すべく収監中の海軍士官スティーヴン・シーガル以下数名を釈放して任務に当たらせるが、何とか奪還した捕虜は勿論洗脳されていて移送中の潜水艦を占拠、結局本部は潜水艦ごと撃沈してしまう。
 シーガルらは事前に救命艇にて脱出して事なきを得るが、その間に一味は大統領の婚約者を洗脳、音楽会での大統領暗殺計画というクライマックスを迎える。

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ジョン・フランケンハイマーの「影なき狙撃者」を思い出させる一編だが、この肝心のクライマックスで何かのきっかけで行動を起こすという催眠術みたいな仕掛けを上手く利用しないので、サスペンスが膨らまない。ヒッチコックの「暗殺者の家」「知りすぎていた男」のようにそのきっかけを観客に事前に知らせておくことでサスペンスを生むこともできたのだが、遠隔操作で脳に刺激を与えるだけとは余りに脚本に知恵がなく、クライマックスなのにどうでもよいショットとのカットバックで分断してしまうのは論外。
 前提となるはずの頑強なボディガードや警備が厳しいはずの大統領の婚約者が簡単に拉致されて洗脳されてしまうのも腑に落ちない。

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アンソニー・ヒコックスという監督の演出はサブリミナル的な映像やスローモーションを繰り返すだけで全く貧弱で、リズムや呼吸云々のレベルに達していない。ショットの繋ぎもかなり出鱈目で事情がよく飲み込めない場面が処々あり。

Submergedというタイトルだけに「沈んじゃった」。

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