映画評「小さき勇者たち~ガメラ~」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年日本映画 監督・田崎竜太
ネタバレあり
怪獣映画が全盛期を迎えた小学生時代、僕は怪獣映画を観ずに過ごしたので、60年代のガメラ・シリーズとは比較しないが、ガメラ平成シリーズが終わって僅か7年というのに角川映画となった大映がまたもや昔の遺産に頼ろうとするとは情けない。のだが、一旦見始めてしまえばそんなことはどうでもよくなる。
1973年最初のガメラが伊勢志摩で自爆するプロローグの後、現在(2006年)の伊勢志摩に舞台を移していよいよ本番。
食堂を経営する父親・津田寛治と二人暮らしの少年・富岡涼が対岸の島で発見した亀の子供をトトと名付けて大切に育てるが、突然大きくなってガメラとなり、トカゲのイメージのある怪獣ジーダスと対決することになる。
というお話で、平成シリーズよりぐっとお子様向けの内容だが、allcinemaなどで言われているほどお粗末な作品とも思えない。強力だった平成ガメラにしても竜頭蛇尾だったわけで、観念的な3作目の「邪神<イリス>覚醒」より好感が持てるくらい。
但し、気に入らない部分も少なくない。
例えば、飛ぶことが既に判っているトトが少年を追いかける場面を感動的にしようとわざわざよちよち歩かせるなんて鼻白む。
終盤の子供がガメラを自由にさせようと自衛隊を通せんぼをする場面も大人が見るとかなり空々しい。お子様たちには感動的なのでありましょうや?
一方、突然神がかりな力が空から降ってきたとしか言いようのない不自然であざとい、子供たちがガメラの力の源である赤い石をリレーする場面は、逃げ惑う大人たちと反対方向に移動するという絵的な面白さのおかげで僕は意外と素直に観ることができた。それどころが涙がキラリ。この映画の真の主人公はガメラを信頼する子供たちなのである。「トトに渡して」で全てが解っても良いのである。とりあえず現実性は無視(笑)。
しかし、その後がまたいけない。ガメラが首を突っ込んだビルの内部に入った富岡少年がガメラに石を与えるまですぐ傍にいるはずのジーダスがご親切にも辛抱強く攻撃を止めてくれているのだ。「LIMIT OF LOVE 海猿」のプロポーズ・シーンに匹敵する迷場面と言うべし。
特殊効果もCGではなく怪獣映画の伝統であるミニチュア撮影に重点を置いているのが嬉しく、しかも、悪い出来ではない。撮影全体も上等の部類。
僕のハードルが低いせいもあるが、お子様向けと思って観る限りにおいては合格以上でござるよ。
となりのトト(ロ)ならぬとなりのガメラ。
2006年日本映画 監督・田崎竜太
ネタバレあり
怪獣映画が全盛期を迎えた小学生時代、僕は怪獣映画を観ずに過ごしたので、60年代のガメラ・シリーズとは比較しないが、ガメラ平成シリーズが終わって僅か7年というのに角川映画となった大映がまたもや昔の遺産に頼ろうとするとは情けない。のだが、一旦見始めてしまえばそんなことはどうでもよくなる。
1973年最初のガメラが伊勢志摩で自爆するプロローグの後、現在(2006年)の伊勢志摩に舞台を移していよいよ本番。
食堂を経営する父親・津田寛治と二人暮らしの少年・富岡涼が対岸の島で発見した亀の子供をトトと名付けて大切に育てるが、突然大きくなってガメラとなり、トカゲのイメージのある怪獣ジーダスと対決することになる。
というお話で、平成シリーズよりぐっとお子様向けの内容だが、allcinemaなどで言われているほどお粗末な作品とも思えない。強力だった平成ガメラにしても竜頭蛇尾だったわけで、観念的な3作目の「邪神<イリス>覚醒」より好感が持てるくらい。
但し、気に入らない部分も少なくない。
例えば、飛ぶことが既に判っているトトが少年を追いかける場面を感動的にしようとわざわざよちよち歩かせるなんて鼻白む。
終盤の子供がガメラを自由にさせようと自衛隊を通せんぼをする場面も大人が見るとかなり空々しい。お子様たちには感動的なのでありましょうや?
一方、突然神がかりな力が空から降ってきたとしか言いようのない不自然であざとい、子供たちがガメラの力の源である赤い石をリレーする場面は、逃げ惑う大人たちと反対方向に移動するという絵的な面白さのおかげで僕は意外と素直に観ることができた。それどころが涙がキラリ。この映画の真の主人公はガメラを信頼する子供たちなのである。「トトに渡して」で全てが解っても良いのである。とりあえず現実性は無視(笑)。
しかし、その後がまたいけない。ガメラが首を突っ込んだビルの内部に入った富岡少年がガメラに石を与えるまですぐ傍にいるはずのジーダスがご親切にも辛抱強く攻撃を止めてくれているのだ。「LIMIT OF LOVE 海猿」のプロポーズ・シーンに匹敵する迷場面と言うべし。
特殊効果もCGではなく怪獣映画の伝統であるミニチュア撮影に重点を置いているのが嬉しく、しかも、悪い出来ではない。撮影全体も上等の部類。
僕のハードルが低いせいもあるが、お子様向けと思って観る限りにおいては合格以上でござるよ。
となりのトト(ロ)ならぬとなりのガメラ。
この記事へのコメント
いやいや一年の経つのが早いこと!
これはあまり話題にはなりませんでしたが、平均点以上の出来栄えでした。拙い部分も多々ありますが、真面目に作られているのは観れば分かりますので酷評はしておりません。
この作品は「小さき」でしたので、次のは「若き」なんでしょうか?怖いですねえ。もし「若き」なら、叩きまくりますよ!ではまた!
どなたかの説によると、時間の長さは年齢が分母になるので短く感じるそうな。まあ、そんな感じですね。
>若き
で、思い出しましたが、今は余りに映画を観るにゲーム感覚で観るせいでしょうか、どうも若い人の批評は的外れが多い。
「七人の侍」で、<野武士がやられてもやられても襲ってくるのは馬鹿ではないか>という意見を耳にしたことがありますが、野武士は食う為に襲っているのであり、戦いの為に戦っているのではない、ということが理解できていないんですよ。
今年も随分愚痴を言いました。フーッ!
私は上記のTBを致しました「ガメラ医師のBlog」管理人のガメラ医師と申します。2005年8月以来、映画ガメラに関する情報収集Blogを更新しており、こちらの記事にはガメラの検索から参りました。
拙Blogではこの度、12月22日にWOWOWで放映された『小さき勇者たち~ガメラ~』の鑑賞Blog記事をまとめ、この度12月25日の上記TBの更新『「小さき勇者たち~GAMERA~」WOWOW放映』
http://blog.goo.ne.jp/gameraishi/e/eac934c4b50f8208bd31d0595e787700
中にて、こちらの記事を引用・ご紹介させて頂きましたので、ご挨拶に参上した次第です。差し支えなければ拙Blogもご笑覧頂ければ幸いです。
長文ご無礼致しました。それではこれにて失礼します。
>野武士は食う為に
なるほど。そこまでになってしまっていますか…。何故キャラクターがそういう行動を取り、何故監督がそういう撮り方をし、何故フィルムの流れがそういうテンポなのかといったことを全く考えずに、自分の嗜好や生理に合うか合わないかだけで作品を判断するのは「俺さま」的な感じ方ですね。だから「面白い」「つまらない」だけで一本の映画を語れる?んでしょうね。寒いですなあ…。
ではまた!
寄らせて戴きました。
紹介だけでも有難いのですが、<蓋し正論>とは全く好意的な我が評への評価で、嬉しくなりました。
なるべく客観性に観ることにしており、その辺りが反映されていたとお感じになられたのならこれ以上の望みはございません。
>テンポ
「テンポがどうのこうの」と仰る人のどれくらいが本当にテンポの意味を理解しているのか疑問に思うことが多い日々です。
例えば、「恐怖の報酬」の前半は決してテンポが速いとは言えない。しかし、暑さと人間の関係を描出する為に最低限必要な長さだったわけですよね。
「七人の侍」の傭兵を集める前半にしてもそう。「前半を殆どカットして2時間にしたら面白くなるだろう」なんて馬鹿げた意見もありましたよ。
>嗜好や生理に合うか
正にその通りでしょうね。
それを表明している分にはまだ良いですが、そういう人に限って他人の意見に文句を言うから始末に負えない。
それでは。
『天国と地獄』の前半と後半についても同じようなことが言えるかもしれませんね。
あの作品でもっともワクワクするのは権藤邸での息苦しいほどの長回しを使用した練りに練られた密室劇の緊張感と、疾走する特急電車に場面転換するときの開放感が味わえる、まさに境目の「繋ぎ」だと思うのですが、「前半はつまらない」的な発言が多いのは気になります。前半の緊迫感があってこその作品だと思うのですが、そうではない人が多くなってきているのは残念です。ではまた!
>天国と地獄
全く仰る通りですね。
僕の理解から言えば、寧ろ前半の方が出来が良いと思うくらい。「繋ぎ」を経た後半はどちらかと言えば黒澤明的なくどさが顔を出しているような気がします。文字通り僅かですけど。
こんな観方をしていて楽しいかと疑問に思う方もいらっしゃるでしょうが、こうして観るから映画は面白いんですよね。
何故そういう作りにしたのだろうかという作家やスタッフの意図を探るのがもっとも楽しい作業だと思います。小説を読むときの行間を読み取るような感覚でしょうか。
映画をただ暇つぶしのできる「筋のあるお話の映像版」くらいにしか思わず、お話の印象しか頭に残っていないのは右脳も左脳も全く働いていない状態でしょう。
目で見ているのは「動画」にすぎず、問いかけや映像の意味にまで神経を使う訓練が出来ていないのか、そもそも必要性すら感じていないのか、または両方か。
「面白かった。」と言われたら、あらためて問いたいですね。
「どういうふうに?」そして「何故?」と。ではまた!
>必要性
がないのでしょう。結局彼らにとっては映画も数多くある娯楽のone of themですよ。僕が「(ホラー)映画はお化け屋敷ではない」と言った時に反論を受けましたもの。サム・ライミの映画など「お化け屋敷ではないか」と言われますが、違いますね。
勿論映画を観る全ての人に<それ>を期するのは無理ですが、ブログに記事を書くくらいの意気込みがある人にはある程度映画自体のことも考えてほしいものですね。
それには、他の人の考えを学ぶ姿勢が大事でしょう。映画に限らず物を考えるにはバランスが大事ですから。
>しかし、その後がまたいけない。
ホント、いけなかったです、、、
この映画、その年のベスト10に入れました、、、
あはは、、、
いっぱいTBしてしまいました、、、
>ベスト10
いや、実際結構良いと思いましたよ。
少なくとも昭和ガメラシリーズよりずっとまともでしたし、「花田少年史
なんたらかんたら」よりも「妖怪大戦争」よりも上出来ですよ。
>いっぱいTB
お構いなく。