映画評「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」
☆☆(4点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・田中重雄
ネタバレあり
昭和ガメラシリーズ第2作。第1作が78分と短尺だったのに対し100分と長尺になり、しかもカラー版だが、首尾は如何でしょうか。
前作でガメラを積んで火星へ向ったロケットが隕石と衝突して爆破、自由になったガメラがエネルギーを求めて黒部ダムを襲う、というプロローグの後、ニューギニアのジャングルに本郷功次郎、藤山浩二、早川雄三の三人が本郷の兄が戦時中に隠したという巨大なオパールを求めて乗り込む。
ジャングルを舞台にすると邪劇になるというジンクス通りに頗る怪しい展開。それ以前にメラネシアに属する原住民の風俗がアフリカとポリネシア辺りの合体みたいないい加減さで、アメリカ映画で描かれる日本人以上に変てこである。いくら南方住民に関し未知なる部分が多かった40年前の作品とは言え、日本人も他国のことは言えないと思い知るべし。
さて、欲望の塊で低劣な藤山が探し当てたオパールを独占しようと他の二人を亡き者にして帰国の船に乗る。ところが、そのオパールと思っていたのが原住民の間に伝えられるトカゲ型怪獣バルゴンの卵だった為に船の到着した神戸を中心に関西地方に甚大な被害がもたらされる。
というお話だが、題名に偽りがあってガメラは最後にしか活躍せず、題名を【人類対バルゴン】とすべき内容である。
第一作に比べ人類の作戦(即ち脚本家・高橋二三のアイデア)が著しく進歩しているのは結構。近い物に対しては冷凍光線、遠い物に対してはレインボウ光線を繰り出して無敵と思われる一方で水に弱いことが判明したバルゴンに対し、光りものが好きな性質を利用して赤外線レーザーを照射したダイヤモンドで琵琶湖に誘き寄せたり、レインボウ光線に対して鏡を使って自滅させようとしたり、表面的にはなかなか楽しめる。
表面的に終ったのは色々な欠点が目立つからである。
実は原住民に助けられていた本郷が原住民の娘・江波杏子と日本に戻った後バルゴン撃滅の為に色々な知恵を絞り出すのだが、各分野の権威が彼に対して常に承認役に留まっているのは異様と言うしかない。
欲望丸出しの藤山が人類が総力を結集して戦っている最中にダイヤを自分のものだと計画を邪魔するのも首を傾げる。日本人離れした風貌の藤山(下記画像)は好演だが、些か行き過ぎた展開だったように思う。
仮にこれらを無視するとしても看過することのできない致命的ミスがある。前作より明らかに面白く作られているのに星を増やせないのは偏にこの為である。
即ち、水に決定的に弱いとされたバルゴンが孵化した後海中に沈み、その直後に神戸を襲っているのは、どうしたことか。海水はOKで淡水はNGといった説明は遂ぞなかったはずで、僕の頭では全く理解できないのである。
江波杏子扮する、色白で日本語がベラベラの原住民の娘も相当変だが、第1作のアシスタントに比べれば大活躍と言えるのは宜しい。
1966年日本映画 監督・田中重雄
ネタバレあり
昭和ガメラシリーズ第2作。第1作が78分と短尺だったのに対し100分と長尺になり、しかもカラー版だが、首尾は如何でしょうか。
前作でガメラを積んで火星へ向ったロケットが隕石と衝突して爆破、自由になったガメラがエネルギーを求めて黒部ダムを襲う、というプロローグの後、ニューギニアのジャングルに本郷功次郎、藤山浩二、早川雄三の三人が本郷の兄が戦時中に隠したという巨大なオパールを求めて乗り込む。
ジャングルを舞台にすると邪劇になるというジンクス通りに頗る怪しい展開。それ以前にメラネシアに属する原住民の風俗がアフリカとポリネシア辺りの合体みたいないい加減さで、アメリカ映画で描かれる日本人以上に変てこである。いくら南方住民に関し未知なる部分が多かった40年前の作品とは言え、日本人も他国のことは言えないと思い知るべし。
さて、欲望の塊で低劣な藤山が探し当てたオパールを独占しようと他の二人を亡き者にして帰国の船に乗る。ところが、そのオパールと思っていたのが原住民の間に伝えられるトカゲ型怪獣バルゴンの卵だった為に船の到着した神戸を中心に関西地方に甚大な被害がもたらされる。
というお話だが、題名に偽りがあってガメラは最後にしか活躍せず、題名を【人類対バルゴン】とすべき内容である。
第一作に比べ人類の作戦(即ち脚本家・高橋二三のアイデア)が著しく進歩しているのは結構。近い物に対しては冷凍光線、遠い物に対してはレインボウ光線を繰り出して無敵と思われる一方で水に弱いことが判明したバルゴンに対し、光りものが好きな性質を利用して赤外線レーザーを照射したダイヤモンドで琵琶湖に誘き寄せたり、レインボウ光線に対して鏡を使って自滅させようとしたり、表面的にはなかなか楽しめる。
表面的に終ったのは色々な欠点が目立つからである。
実は原住民に助けられていた本郷が原住民の娘・江波杏子と日本に戻った後バルゴン撃滅の為に色々な知恵を絞り出すのだが、各分野の権威が彼に対して常に承認役に留まっているのは異様と言うしかない。
欲望丸出しの藤山が人類が総力を結集して戦っている最中にダイヤを自分のものだと計画を邪魔するのも首を傾げる。日本人離れした風貌の藤山(下記画像)は好演だが、些か行き過ぎた展開だったように思う。
仮にこれらを無視するとしても看過することのできない致命的ミスがある。前作より明らかに面白く作られているのに星を増やせないのは偏にこの為である。
即ち、水に決定的に弱いとされたバルゴンが孵化した後海中に沈み、その直後に神戸を襲っているのは、どうしたことか。海水はOKで淡水はNGといった説明は遂ぞなかったはずで、僕の頭では全く理解できないのである。
江波杏子扮する、色白で日本語がベラベラの原住民の娘も相当変だが、第1作のアシスタントに比べれば大活躍と言えるのは宜しい。
この記事へのコメント
この作品は昭和ガメラ・シリーズ中では唯一の大人向けですね。怪獣のデザインは気持ち悪く作られていてグロいのですが、それが大映らしさともいえます。ではまた!
これは惜しいなあ。
本文などで書いたように、バルゴンの致命とされている設定に映画の致命もあるとは。
脚本の高橋二三氏はこの辺りが大変そそっかしいです(次回作でも同じようなミスをしています、あさって掲載予定)。
今年はおサボり気味で、ごめんなさいでした。
来年もよろしくお願いしますね。
良いお年を~!
こちらこら碌にコメントせずにすみませんです。
遅筆でコメントだけで日が暮れてしまうので、端折ってしまいました。
年が越してしまったので、本年も宜しくお願い致します。
良いお年を!
水が苦手だから、必死で流血しながら(海水が紫に染まってましたよね)
上陸したんじゃないんですか…?だから劇中でもバルゴンは雨を浴びても、動きは鈍くなるけど死んだりはしませんよね。「長時間水に漬かっていると皮膚が溶け出して失血死する」と言う風にしか解釈できませんでしたけど。
だから最後はガメラに水から這いあがれないように押さえつけられて、
ようやく止めがさせたのでは…?
(かなづちな人でも膝までしかない水で溺れたりはしないでしょう?)
むしろ私はこの部分の設定と演出、すごくリアルに感じましたが…?
しかし、本作における構成的な欠陥は払拭出来ません。寧ろ、自信から確信に変わりました。
問題は<バルゴンが水に弱い>という設定そのものではなく(だから最後については問題ない)、その<扱い>です。
①孵化したばかり子供が弱いとされる水中から出現し、弱った部分を治す間もなく絶大な力を発揮できるのはそそっかしい。
怪獣だから他の生物とは違うのか。それなら後の展開において疑問が生じる。
②海水が紫に染まっていたか夜の場面ということもあり明確に印象に残らない。昼間であればこうした解りにくさは解消できるので、脚本がやはりそそっかしい。
③もし①がご都合主義的に認められるのであれば、人間側もご都合主義的にその場で弱点を理解する可能性もあり得るわけで、甚大な被害が出た後に江波杏子女史にご活躍願うまでもない。
従って初登場場面の扱いさえしっかりしていれば、完成度がぐっと増した可能性がより一層確かになった、という次第。
①について:
このバルゴンは赤外線のせいで奇形化して一気に10年分成長したという説明を受け入れるなら、上陸時には既に「孵化したばかりの子供」ではないはずです。
海中でダメージを受け続けながら巨大化したというのは確かに弱いとは思うんですが「致命的ミス」でしょうか。少なくとも船内で船を破壊する程度には巨大化していたはずです。ダメージが致命傷になる前に上陸できたという解釈はごく自然に思えます。
バックミラー作戦では傷が見る間に治ってゆくのも見せていますし、
湖中で死ぬ時も結構時間がかかってましたから、辻褄は合っていると思います。
ひょっとして、船は神戸に入港済みだが上陸前の検疫待ち、という設定を見逃していませんか?それなら強い批判も納得できますが?
②について:
紫に泡立つ海面だけの画面にかぶせて
「おい、紫色じゃないか!」「あ!紫だ!」と明言させています。
これで「明確に印象に残らない」としたら見る方が「そそっかしい」のでは?
文章から判断する限り、貴殿はこの映画を何度も観ていらっしゃる。対して、僕は一回しか観ていない。そもそも話をする土壌が違うわけです。
色々なご指摘には納得できる点もあり、できない点もありますが、結局、同じ映画をよく見る方によくある傾向ですが、怪獣生態学者さんもjadow81さんも、【木を見て森を見ていない】状態にあると思います。
構成的に言えば、やはりバルゴンが初めて登場する場面は首を傾げざるを得ません。ここで何が問題か。後で本来日本にいる必要もない江波杏子に弱点を教えて貰うこととの関係です。
従って、あるいは製作者などからの意向で、江波杏子の出演に意味を持たせる為にあの登場場面を伏線にできなかったとしたら、脚本家に同情しますけどね。ああいう形の登場の仕方であるなら、ここでバルゴンの血を見た人が後に登場して弱点を教えるといった展開にすれば、かなり納得できるわけですよ。
従って、生物学的にどうのこうの時間的にどうのこうのなんてのは本来枝葉末節であり、そんなことであの場面の価値を検証することより、何故あの場面を伏線にはせず(一部のリピーター的鑑賞者を別にして)マイナスの印象しかもたらさない布石に留めたのか考える必要があろうかと思います。その理由は江波杏子の出番を作らなければならなかったからとしか考えられません。
いずれにしても、こういう紛らわしい作り方は一般客には大迷惑。一回しか観ない、それもローティーン以下の児童を対象とした映画でこういう構成をするのは、大衆映画の作り方を知っているとは言えないでしょう。
因みに、僕は4点を付けておりますが、Imdbにおける500名の平均採点値は10点満点の2.8で、言わば最低映画の扱いをされています。僕は文句を言いつつ楽しんだのですけど、余り楽しめない人が多いようです。
最初のコメント時には知らなかったのですが、入院されていたとか?
退院早々コメントを返して頂き恐縮です。
これを見たのは今回が2回目、初見は約20年前だったと思います。
初見でどう思ったかもう忘れてしまいましたが、
忘れていても気づきやすいのではという疑念もあるので
リピーター以外わからないかどうかについては私の経験はあまり意味がなさそうです。
『本来日本にいる必要もない江波杏子』など、反論もありますが
これ以上あまり意味がないのでやめておきます。
意見が違うことは問題ではないので。
ただ作中の事実誤認を元に評価をされるのは
「自称セミプロ」の方のレビューとしては問題なのではないかと思い、
もしかしたら気づかなかったのではと思った点を指摘させていただきました。
なんでIMDbを持ち出されたのかわかりませんが
私もまさかこれを完璧な怪獣映画だとか言うつもりもないですし
「クズだ」という人がいてもそれがその人の感性だというだけです。
現時点で歴代一位の『ショーシャンクの空に』でも最低点を付けている人が3.4%います。
お気づかい戴き、有難うございます。
余りに退屈な序盤の為に途中から頭が狂ったとでもご理解して下さい。
年間400本以上を観ていれば、そういうこともあります。しかし、一応全部書くことにしていますのでね。悪しからず。
>Imdb
僕が(序盤はともかく中盤後半を)楽しんだということを言いたかっただけです。
僕は元来完璧な映画などないというのが持論。
前半はちょっと退屈しましたが、後半は大変面白く観られました。
>日本兵の経験した入江鰐
前半の舞台から言っても、きっと、そういうイメージを投影したんでしょうね。