映画評「愛ふたたび」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1971年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり
「個人教授」のヒットで1972年くらいまで日本限定の人気スターになったルノー・ヴェルレーを東宝が招いて作った恋愛映画。そこそこ評判が良かったのか東宝は小川知子共演でもう一本「恋の夏」という作品を作ったが、そちらの記憶は全くない。
脚本は詩人の谷川俊太郎。
フランスに語学留学していた浅丘ルリ子が母親の病気の為に帰国する。
幾ばくかの時が流れ、彼女と恋仲になったレーザー・ビーム関連の技術者ヴェルレー君が会議出席の為に東京を訪れ、会議が始まる前に彼女のいる金沢までやって来る。
別れをきちんとする為に金沢までやって来る彼の律義ぶりが可笑しいが、何しろ日本語が全くできない為に相当難儀する。
実はフランス人(外国人)と日本人との意思疎通不全に重点を置いたロマンスなので、言葉だけでなく、精神文化の較差が重要な要素となっていて、浅丘嬢の知人である女子留学生がその辺りを受け売りで語る場面もある。
序盤は邦画独自の陰湿な展開になりそうだったので前途暗しと思えたが、さすがは市川崑、異国人間のコミュニケーションの難しさをユーモアにくるみつつ恋愛模様を展開したおかげで意外と興味の尽きない作品になっている。
フレンチ風歌謡曲(?)のBGMもなかなか快調で楽しめるのだが、首を傾げたのは次の点。
日本で人気のあるヴェルレー君を主演に作ったということは日本の観客を想定して作ったわけだから、少なからぬカルチャー・ショックを受けるヴェルレー君を描く場面に外国人に日本文化を紹介するように見える部分があるのは変で、市川崑らしからぬ泥臭い感じを受ける。彼が秋葉原へ行く場面など全く不要である。
別れるのか結ばれるのか二人の意志がはっきりしない終盤はモタツキ気味だが、空港のフィンガーの下で二人を職員を近づけさせないよう引っ張り合い、指が触れたところでストップモーション、という演出はテーマが集約されているようで大変気に入った。
しかし、外国人が「理解できない」としてきた本来の日本人は現在大分消えているのではないか、と35年の月日が日本人に落とした影響を感じずにはいられない一編ではある。
若き桃井かほり(かおり)や今は亡き石立鉄男の共演もなかなか面白い。
ヒロインがどうフィンガー下まで降りてきたかは謎です。
1971年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり
「個人教授」のヒットで1972年くらいまで日本限定の人気スターになったルノー・ヴェルレーを東宝が招いて作った恋愛映画。そこそこ評判が良かったのか東宝は小川知子共演でもう一本「恋の夏」という作品を作ったが、そちらの記憶は全くない。
脚本は詩人の谷川俊太郎。
フランスに語学留学していた浅丘ルリ子が母親の病気の為に帰国する。
幾ばくかの時が流れ、彼女と恋仲になったレーザー・ビーム関連の技術者ヴェルレー君が会議出席の為に東京を訪れ、会議が始まる前に彼女のいる金沢までやって来る。
別れをきちんとする為に金沢までやって来る彼の律義ぶりが可笑しいが、何しろ日本語が全くできない為に相当難儀する。
実はフランス人(外国人)と日本人との意思疎通不全に重点を置いたロマンスなので、言葉だけでなく、精神文化の較差が重要な要素となっていて、浅丘嬢の知人である女子留学生がその辺りを受け売りで語る場面もある。
序盤は邦画独自の陰湿な展開になりそうだったので前途暗しと思えたが、さすがは市川崑、異国人間のコミュニケーションの難しさをユーモアにくるみつつ恋愛模様を展開したおかげで意外と興味の尽きない作品になっている。
フレンチ風歌謡曲(?)のBGMもなかなか快調で楽しめるのだが、首を傾げたのは次の点。
日本で人気のあるヴェルレー君を主演に作ったということは日本の観客を想定して作ったわけだから、少なからぬカルチャー・ショックを受けるヴェルレー君を描く場面に外国人に日本文化を紹介するように見える部分があるのは変で、市川崑らしからぬ泥臭い感じを受ける。彼が秋葉原へ行く場面など全く不要である。
別れるのか結ばれるのか二人の意志がはっきりしない終盤はモタツキ気味だが、空港のフィンガーの下で二人を職員を近づけさせないよう引っ張り合い、指が触れたところでストップモーション、という演出はテーマが集約されているようで大変気に入った。
しかし、外国人が「理解できない」としてきた本来の日本人は現在大分消えているのではないか、と35年の月日が日本人に落とした影響を感じずにはいられない一編ではある。
若き桃井かほり(かおり)や今は亡き石立鉄男の共演もなかなか面白い。
ヒロインがどうフィンガー下まで降りてきたかは謎です。
この記事へのコメント
<「恋の夏」
こういう作品もあったんですねー。知らなかったです^^;)。小川知子も今はどうしているのやら…。6点ですか…。私は市川崑監督でなければ見てなかったかも…と思えるほど駄目でした^^;)。こっぱ恥ずかしい歌詞も限界を超えています。当時はこんなのが流行ったのかなぁ…。
駄目というお気持ちも解る作品ですし、それが一般的な評価かもしれませんが、色々アングルのある作品ですので、ただのロマンス映画として見ない方が無難かも。
歌詞は多分、当代随一の詩人・谷川俊太郎氏自身のものと思いますが、僕は全く記憶していません。^^;
どんな歌詞だったかなあ。
歌は、その後オウムなどいろいろあった、元日劇ダンシングチームの鹿島とも子でしたね。
>『恋の夏』
今の若い女性は昔ほど、“小川知子”的傾向はないようですね。
洋画が昔のようにヒットしないですもん。