映画評「目かくし」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1965年アメリカ映画 監督フィリップ・ダン
ネタバレあり

観たことがないと思って観たのに、あらら、観ておりました。脚本家上がりのフィリップ・ダンの遺作だが、彼が亡くなったのは27年も後である。

著名な精神科医ロック・ハドスンが、米国が国を挙げて保護しようとしている物理学者の精神治療の為に、飛行機と自動車を乗りつぎ目隠しされ秘密の場所へ連れて行かれる。
 やがて「これは他国の陰謀」と主張する自称CIA捜査員ガイ・ストックウェルが絡んできて、代わりの精神科医になりすまして現場に乗り込む。
 物理学者の妹クラウディア・カルディナーレに頼まれたハドスンは、敵側スパイだったストックウェルの一味から学者らを救う為に潜在意識にある記憶を辿って現場に向かう。

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ヒッチコックが得意とした巻き込まれ型スリラーをロマンティック・コメディ風に作ったと思えば宜しく、ケイリー・グラントの代りにロック・ハドスンを起用した感じである。物理学者もヒッチコックばりにマクガフィンとして扱われ、具体的に彼がどんな技術を持っているか全く解らない。それは大いに結構。
 ダンの展開ぶりはヒッチコックのように緩急自在とは行かず、特にクラウディア絡みの場面で遊び過ぎてモタモタしている印象が強いものの、二人が居場所を突き止める見せ場はなかなか面白い。将軍ジャック・ウォーデンが車から捨てるビニールの扱いも良いが、人間のざわめきと聞き紛う渡り鳥ガンの鳴き声の扱いは特にご機嫌。僕も最初にこれを聞いた時に「人の声? 鳥の声?」と思っただけに上手く伏線になっているなと思わせるのである。

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特別の失敗作とも思えず、ダンがこの作品を以って事実上の引退をしてしまったのは何故なのでしょうかね。

前回の記憶がない。僕は目かくしでもされていたのかな。

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