映画評「ニュー・ワールド」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督テレンス・マリック
ネタバレあり

アメリカ建国神話に基づく、1995年に作られたディズニー・アニメ「ポカホンタス」及びその続編のビデオ映画(98年)と同工異曲のテレンス・マリック監督作品。

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1607年、現在のヴァージニア州海岸に到着した船から元囚人ジョン・スミス(コリー・ファレル)が先住民との交渉役として派遣されるが、先住民の強硬派から殺されそうになったところを酋長の娘の一人ポカホンタス(クオリアンカ・キルヒャー)に救われ、二人の間に仄かな恋が芽生える。
 新航路発見を指令されたスミスが英国側と先住民との間に挟まれたポカホンタスを気の毒に思い、溺死したことにして黙って去ると、彼女は改宗して英国貴族(クリスチャン・ベイル)と結婚、数年後英国に招待され、スミスと再会する。

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というお話があるにはあるが、マリックは三人の魂の交換を中心に詩的に描写していくのみである。入植地の病気や先住民との駆け引きでの会話が多少具体的な程度で、後は内面モノローグとクラシック調の音楽に乗って抜群に美しい映像詩を展開していく。
 78年の「天国の日々」以来27年間で3本、生涯でも5本の作品しか発表していないマリックの撮影スタイルがどんなものか正確には指摘できないが、本作での前進移動のショットは観客を陶酔境に導くほど美しく400年前にタイムスリップしたような錯覚さえ覚えさせる。単なる風景描写が主観ショットのような印象を伴うのは、あるいは神の主観だからなのかもしれない。

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その一方、相当変な部分のあるカット割りが首をかしげさせ、非常にゆったりしたテンポが時々眠気を誘う。
 観客は映画のタイプに即して柔軟でなければならないし、従来のドラマ映画の枠を超えたスピリチュアルな境地にあるような本作に対し「見た目の確かさ」「見た目の面白さ」といった観点で安易に評価を下すべきではないが、半世紀前のジャン・ルノワール「河」のような前代未聞の詩的映画と言うほどでなく、絶賛したい気持ちにはなれない。

来てます来てます、Mr.マリックのヘッド・パワー。

この記事へのコメント

2008年01月07日 21:50
オカピーさん、こんばんは☆
TBありがとうございました~
クリスチャン・ベイル見たさのミーハー炸裂な鑑賞動機でしたが、私は概ね癒される思いがして満足はした映画でしたが、両脇に座っていらっしゃったかたは居眠りしていました(笑)
オカピーさんも安らかに睡魔に襲われそうになったようですね(笑)

ところで、私の本家ブログFC2へもTBしていただけるようになったので、私の本家ブログからオカピーさんのブログへのリンクをさせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?

今後とも末永くおつきあいよろしくお願い致します♪
オカピー
2008年01月08日 02:41
rikocchinさん、こんばんは♪

>睡魔
はいはい。^^
睡魔に襲われるのは、
1)睡眠不足の時。
2)気持ちの良い時。
3)つまらない時。
の三種類があると思いますが、本作の場合は2)でございました。
ちょこっと3)も入っているかもしれませんが。(笑)

>リンク
Rikocchinさんのような人気ブログにリンクしてもらえるのは光栄です。勿論OKです。
こちらでもリンク致しますね♪
シュエット
2008年01月09日 13:42
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。私は年始はローマ帝国やら、第二次大戦やら、歴史物の特集番組でドキュメントフィルムやら再現フィルムにはまっておりまして、やっと今頃のご挨拶となってしまいました。本作は劇場公開時は「コリン・ファレルの方が原住民ジャン」などとあれこれケチなどをつけて観なかって、先日の放映で初めて観ました。確かに映像は詩的な映像ともいえる美しい映像でした。ただ、内容的には、前半はコリン・ファレル、後半はポカホンタスと分かれてしまい、本作の「ニューワールド」とは、人にとっては、単なる新大陸という意味だけではなく、愛とか母になるということも含め人間にとっての未知の領域を描いた物語なのかしら?って。劇場まで行くほどの作品ではないけれど、案外といいんではないかしらっていう気にもなりました。ただ、もう一度見たいとは思わないけれど…。
オカピー
2008年01月10日 02:46
シュエットさん、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

>年始
ゆっくりくだらないお笑い番組でも観るのも良いと思いつつ、通常はスポーツ番組が多い年末年始ですが、最近スポーツ番組の凋落が著しく、どんどん消えているんですよね。高校ラグビーも決勝戦だけでした。

>ファレルの方が原住民ジャン
言い得てます。^^;

>美しい映像
最近はハイビジョンでTVでも素晴らしい映像が楽しめますから、こういう作品も大分実力を発揮できるようになりましたね。
良い時代になりました。^^)v

>前半はファレル、後半はポカホンタス
明確な意図があったのでしょうが、商業映画的に判断するとぎこちない作劇のように感じられました。

音楽も含めて環境映像みたいな感じでしたね。この辺りで好き嫌いが分かれそう。

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