映画評「ホリデイ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督ナンシー・マイヤーズ
ネタバレあり
ナンシー・マイヤーズは既成曲をBGMに使ってオーソドックスに市井の男女の営みを見せるミドル・オブ・ザ・ロード(MOR)的な女性監督で、安心して観られる代わりに大甘で胃がもたれてしまう可能性もある。スター俳優を用いればなおさらである。
ロンドンの新聞社に勤めているケイト・ウィンスレットが失恋する一方で、ロサンゼルスで映画予告編製作会社を営むキャメロン・ディアスが同棲中の恋人エドワード・バーンズを追い出す。やがて、意気消沈の二人が自宅交換サイトを通じて二週間の限定で相手の家で過ごしてリフレッシュすることにする。
ということから始まるロマンティック・コメディーなのだが、コンピューター時代の利便性を大いに強調した上で、それに逆らうように古典的な恋愛模様を展開させるのが狙いと見た。
今では映画編集の場でもコンピューターが利用され相当スピードアップされたことが傍からは想像され、キャメロンが作り出している映画予告製作でも大活躍。ケイトの勤める新聞社でも同様であろうし、何より女性二人が家を交換するのがパソコンを通してである。「しかし恋愛はコンピューターを通してはできません」とばかりに王道を行く展開と言って宜しいが、ちょっと妙だぞと思わせる部分もある。
例えば、キャメロンがいきなり懇ろになってしまうジュード・ロー。二人の女性から彼に電話がかかってくるので「すはプレイボーイ」と思わせるが彼自身の口吻はまるで逆、やがてその女性たちというのが二人の娘というのが判る、という展開自体は悪くないのに、その彼がいくら酔っているとは言え初対面の日にベッドイン・・・では前提が崩れて、すっきりしない。
方や、ケイトが付き合うようになるのは雌伏中の映画音楽家ジャック・ブラックで、彼の演技や演ずる人物の行動が妙に評判が良いが、どうも僕の肌に合わず、そうでなくてももたれそうな胃が益々重くなる。
それはともかく、軽妙だが洒脱ではないマイヤーズらしくこの二組の恋模様の描き方は水準的なレベルではあるものの、苦境時のキャメロンの心境を彼女の職業に合せて映画予告風に外部の声で説明させるという洒落っ気は気に入った。洒脱とまでは行きませんがね。
もう一つ胃腸薬の役目を果たすのが、マカロニ・ウェスタンでも活躍した懐かしいイーライ・ウォーラック老を巡るエピソードで、40年代半ばに映画界に入った脚本家という設定にマイヤーズの古い映画への愛情が感じられるのは良い。
但し、彼の紹介する40年代の強い女性が出る映画(「レディ・イヴ」など)がケイトを目覚めさせるなど、過去の自分から脱却するというテーマが露骨に見えてしまうのは、恋愛映画としては説教臭い。
といった具合に欠点も散見されるので、軽い気分の時に観る分には良いかもしれない。
MORポップスで胃がもたれた時は、ビリー・ホリデイで口直し。
2006年アメリカ映画 監督ナンシー・マイヤーズ
ネタバレあり
ナンシー・マイヤーズは既成曲をBGMに使ってオーソドックスに市井の男女の営みを見せるミドル・オブ・ザ・ロード(MOR)的な女性監督で、安心して観られる代わりに大甘で胃がもたれてしまう可能性もある。スター俳優を用いればなおさらである。
ロンドンの新聞社に勤めているケイト・ウィンスレットが失恋する一方で、ロサンゼルスで映画予告編製作会社を営むキャメロン・ディアスが同棲中の恋人エドワード・バーンズを追い出す。やがて、意気消沈の二人が自宅交換サイトを通じて二週間の限定で相手の家で過ごしてリフレッシュすることにする。
ということから始まるロマンティック・コメディーなのだが、コンピューター時代の利便性を大いに強調した上で、それに逆らうように古典的な恋愛模様を展開させるのが狙いと見た。
今では映画編集の場でもコンピューターが利用され相当スピードアップされたことが傍からは想像され、キャメロンが作り出している映画予告製作でも大活躍。ケイトの勤める新聞社でも同様であろうし、何より女性二人が家を交換するのがパソコンを通してである。「しかし恋愛はコンピューターを通してはできません」とばかりに王道を行く展開と言って宜しいが、ちょっと妙だぞと思わせる部分もある。
例えば、キャメロンがいきなり懇ろになってしまうジュード・ロー。二人の女性から彼に電話がかかってくるので「すはプレイボーイ」と思わせるが彼自身の口吻はまるで逆、やがてその女性たちというのが二人の娘というのが判る、という展開自体は悪くないのに、その彼がいくら酔っているとは言え初対面の日にベッドイン・・・では前提が崩れて、すっきりしない。
方や、ケイトが付き合うようになるのは雌伏中の映画音楽家ジャック・ブラックで、彼の演技や演ずる人物の行動が妙に評判が良いが、どうも僕の肌に合わず、そうでなくてももたれそうな胃が益々重くなる。
それはともかく、軽妙だが洒脱ではないマイヤーズらしくこの二組の恋模様の描き方は水準的なレベルではあるものの、苦境時のキャメロンの心境を彼女の職業に合せて映画予告風に外部の声で説明させるという洒落っ気は気に入った。洒脱とまでは行きませんがね。
もう一つ胃腸薬の役目を果たすのが、マカロニ・ウェスタンでも活躍した懐かしいイーライ・ウォーラック老を巡るエピソードで、40年代半ばに映画界に入った脚本家という設定にマイヤーズの古い映画への愛情が感じられるのは良い。
但し、彼の紹介する40年代の強い女性が出る映画(「レディ・イヴ」など)がケイトを目覚めさせるなど、過去の自分から脱却するというテーマが露骨に見えてしまうのは、恋愛映画としては説教臭い。
といった具合に欠点も散見されるので、軽い気分の時に観る分には良いかもしれない。
MORポップスで胃がもたれた時は、ビリー・ホリデイで口直し。
この記事へのコメント
「ホリデイ」にかけましたのね~^^
おなじビリーの曲でも「オール・オブ・ミー」
あたりで軽めにスィングねっ♪
「奇妙な果実」まで行っちゃうと、
暗~~~く・・・なりますから。(--)^^
コッケコッケにブチのめしている拙記事、
リボンつけて持ってまいりましたの。
目にしみること必定なので^^
体調とご相談の上、どうぞ。(笑)
>懐かしいイーライ・ウォーラック老・・・
彼の話でもなければ、到底、締まらないわ~。
ビージーズの「ホリデイ」も、ああ~懐かし~♪
>ビリー・ホリデイ
そうでまんがな(笑)
ビージーズの「ホリデイ」も思い浮かびましたが、
ちょっと説明的になるかな、と。
Ooh you're a holiday, such a holiday でしたかな。
ビリーに戻って...
「オール・オブ・ミー」あたりでしょうね。
♪All of me, why not take all me...
「ドント・エクスプレイン」でも暗くなっちゃう。^^
>ウォーラック
狙いが見え見えでも彼の出てくる幕は楽しかったなあ。
そういう意味でアメリカ編のほうが好感でした♪
ナンシー・マイヤーズ、嫌いじゃないです。
あ、でも作品を推すには忘れちゃうかもです、軽過ぎて・笑。
しかし、「恋愛適齢期」の医者役のキアヌだけはどんなもんだろうと思ってます。
>軽すぎて
そうなんですね。僕も「恋愛適齢期」の評で、
「安易な展開と言えばそれまでだが、この軽さがマイヤーズの特徴であるし、それを楽しむのが彼女の映画と付き合うコツである。」
などと書いていますよ。^^
しかも採点が何と本作よりも良いです。
しかし、キアヌーについては何も触れておりませんです、はい。