映画評「聖処女」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1943年アメリカ映画 監督ヘンリー・キング
ネタバレあり

【ルルドの泉】は非キリスト教信者の日本人にも知られた有名な奇跡の泉だが、泉を掘り起こした聖女ベルナデッタ・スビルーの後半生を描いた伝記映画である。

1858年、南仏のルルドに貧しい農家に生まれ育ったベルナデット(ジェニファー・ジョーンズ)が妹たちと薪拾いに行った時に他人には見えない淑女を洞窟の傍の高所に見出し、周囲から奇異な目を浴びせられても通いつめ、その言葉を実施して穴を掘ると水が湧き出す。
 目の悪かった彫刻家の視力が復活し、赤ん坊の足が治った為に奇跡の泉として各地から巡礼者が集まる一方で、紆余曲折の末彼女自身は半ば生きる聖女として教皇庁にも認められ、修道女として35歳の生涯を終える。

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伝記映画と称したものの本作の第一の眼目は奇跡を見せることである。しかし、それだけでは長編映画としては成立しにくいので、徐々に彼女に傾倒していく町民たちのセンセーション、逮捕してまでも騒ぎを収めたい町の要職者の強権的な反応を併せて扱い、やがてより真実味を帯びるに従ってキリスト教会が静観の態度を崩さざるを得なくなるまで、じっくり描くうちに160分に及ぶ大作になってしまった。

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もっと省略や暗示を使う監督なら短くもできただろうが、奇跡をテーマとするような作品に速さを求めるのは妥当とは言えず、ショットもシーンもじっくり作り上げるタイプのヘンリー・キングが演出に当ったのは必ずしも悪いことではない。
 警察署長、検事長、市長といった要職者のキャラクターは類型の域を出ないものの、問題にする程ではない。
 最大のミスは淑女即ち聖母マリアに実際の女優(リンダ・ダーネル)を使って見せてしまったことで、有り難味などどこかへ飛んで行ってしまう。

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しかし、先日カール・ドライヤーの傑作「奇跡」を再鑑賞した後ということもあって、奇跡を疑う聖職者は真の信仰を忘れているのではないかと考えたりするうちに、長い上映時間を退屈せずに見終えることができた。退屈どころか感動さえした。
 最大の貢献者はやはり本作がその名義としては映画デビュー作となるジェニファー・ジョーンズ(その前にフィリス・アイリー名義で2本ほど出演作がある)の美しさと演技である。彼女の横顔を見ているだけで涙が出てくる。これこそ正に奇跡ではあるまいか。

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