映画評「やわらかい生活」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2005年日本映画 監督・廣木隆一
ネタバレあり

「ヴァイブレータ」の廣木隆一と寺島しのぶの監督=主演コンビが再び組んだドラマで、脚本の荒井晴彦、撮影の鈴木一博も再起用されている。原作は芥川賞作家絲山秋子のデビュー作「イッツ・オンリー・トーク」。

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35歳の独身女性・寺島は早稲田大学政経学部を卒業して一流会社の総合職に就いたものの、1997年に両親を火事で、年上の恋人を地下鉄サリンで相次いで失ったショックで躁鬱病になり退職してぶらぶらする毎日。
 出会い系サイトで痴漢の田口トモロヲと知り合い、彼に連れ込まれた場末の映画館のある蒲田に越してくる。彼女曰く、「粋」のない下町。そこで発見したタイヤ公園をHPに載せたところ、今度はそこを探していたという鬱で悩んでいる優しいヤクザ妻夫木聡と知り合う。大学時代の友人で都議選の演説中に再会した松岡俊介をベッドに誘っても彼はEDである。
 両親の七回忌の後、妻と別居中の5歳年上のいとこ豊川悦司が福岡から上京、駐車料金が払えないまま暫く彼女の部屋にご厄介になるが、彼女の凄まじい症状に目を白黒させる。

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ヒロインには1966年生まれで早大の政経出身、躁鬱病を病んだ経験のある原作者自身が相当投影されていると思われるが、そんな彼女が何故自分は生きているのかという自分探しをしているうちに周りの人間も実は少なからぬ悩みを抱えて生きていることを知って慰められる、といったお話である。少なくとも途中まではそう捉えることができる。もし僕の理解が正しいならば、また孤独に陥ってしまう幕切れは構成上大いに疑問である。
 疑問と言えば、タイトルの「やわらかい」の意味が解らない。皮肉以外に、僕にはこのタイトルが理解できない。

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一方、原作通りなのかもしれないが、種明かし的な構成には面白い部分が多い。
 彼女は【優しいヤクザ】君に両親を関西大震災で、栄転した友人を9・11テロで失ったと告げるが、後で両親の死は一般的な火事であると判る。その虚言により、友人がテロで死んだというのも自分と交通事故死した友人を合体させた嘘と観客に推察させたり、彼女が「刺青があるから銭湯に最後に入る」のも実は火傷痕があるのが真相と判明するなど、小出しの情報により彼女の深層心理に少しずつ入っていくのがミステリー的に巧みである。
 その一連で、尾崎豊の「アイ・ラブ・ユー」を巡るネタもなかなか面白いが、カラオケ店での長回しは粘りまくって、変化の少ない長廻しを特徴とするジャ・ジャンクー(「世界」「長江哀歌」)を思い出し苦笑させられる。

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寺島しのぶは好演だが、彼女の演ずるような女性とは付き合いたくないと思わせる、一種怪演と言うべき要素がある。

昔大竹しのぶの妊婦歩きに感心、今寺島しのぶのドタバタ歩きに仰天。

この記事へのコメント

2008年02月10日 08:51
>今寺島しのぶのドタバタ歩きに仰天。

ヒロインは30代ですけれど
今の10代後半~20代の歩き方も
かなりオカシゲですわ~。
おまけにすべからく姿勢が悪いのなんの。(--)

脚本の荒井晴彦。
彼は神代辰巳作品で初見でしたが
生活感あふれる(私から言わせると
ビンボくさい^^)色気&エロスを
かもし出すホンを書くと“ピカ一”と。
日本人だけが出せるエロス・・というか。

寺島はもちろんトヨエツも、ちぇんちぇん
色気の色もわかってません。
妻夫木クンなど、論外、論外。(笑)
本作ではただひとり、トモロヲさんだけが
いわくありげな晴彦テイストを
かすかに吹かせていたかしらん。^^

かなり、ブーたれてるマイ拙記事、
お持ちしましたけど、笑って下さいね。^^;
オカピー
2008年02月11日 01:33
viva jijiさん、こんばんは。

>寺島しのぶ
彼女の本当の歩き方はよく知りませんが、
あの品のない歩き方は勿論演技なんでしょうね。
百年の夢も醒めるっていうやつです。^^;

>荒井晴彦
キネ旬好みですが(笑)、割合好きな脚本家です。
神代さんの作品とは、
恐らく「赫い髪の女」でしょう?
僕は「嗚呼!おんなたち 猥歌」も観ました。
今の若い人はあのざらついたエロティシズムを
しょぼいと思うのでしょうね。

そういう意味では「ヴァイブレータ」のほうが
荒井氏らしさが出ていましたね。
2008年03月08日 15:04
TBありがとう。
寺島しのぶは、梨園のお嬢様なのに、場末の街がよく似合うんです。
「赤目四十八瀧」の尼崎あたりの光景も、似合っていました。
オカピー
2008年03月08日 22:18
kimion20002000さん、こちらこそ有難うございます。

>寺島しのぶ
お母さんは任侠映画出身でこれまた庶民的とは言えない中で、面白い個性を育んできたのが大変面白いですね。

>赤目四十八滝
鈴木清順的な映像美なのに、描かれるのが非常に市井的だったのが面白かった作品ですね。

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