映画評「ダニエラという女」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2005年フランス映画 監督ベルトラン・ブリエ
ネタバレあり
これは映画に対する考えの柔軟性を試されるような作品である。真面目な人には受け入れられそうもないが、洒落っ気が好きな僕は大いに楽しんだ。
500万ユーロ近いくじを当てた冴えないサラリーマン、ベルナール・カンパンが、娼館で見出したイタリア美人モニカ・ベルッチに「毎月10万フラン上げるから一緒に住め」と頼み、彼女は彼のアパートについてくる。平凡な毎日に飽きた彼女は再び娼館に戻り、そこで彼女にギャングのボスである怖い情夫がいることが判明する。さしでその巨体男ジェラール・ドパルデューと談判することになるが、意外にも彼は彼女の為に金を払うことを拒否、夢のような日々の終わりを確信する。
この後の予想だに出来ない急展開がエキセントリックで誠に面白いのだが、一旦置いておく。
監督はこれまで余り感心したことがないベルナール・ブリエだが、今回はおふざけ連発で、フランス映画らしい洒落っ気に横溢している。以下の如し。
一旦ボスの家に戻った彼女はソフト・タッチのカンパンが忘れられず、絶倫のドパルデューと切れることを決意、ボスもあっさりと承服した為再び二人の愛欲生活が始まるわけだが、ボスともあろうものが拳銃を見せることもなく承知したり、その彼が起こしたこの上なく凶暴な罰が「ねずみに襲わせた」ことだったり、肩すかし的なお笑いが続いてにやにやさせる。
二人の前に彼の知人たちやボスまで現れて熱いところを見せられたかと思えば、次の瞬間には彼女が浮気に走って主人公をヒヤヒヤさせ、くじ当選の話が嘘と判って彼女ばかりか観客をも唖然とさせたりするうちに、「女性は娼婦」というフランスでは古典的なテーマを浮かび上がらせていく。
くじの扱いは心理学的に秀逸と言うべきで、そんな具合に観客の心理(思い込み)をついて予想を尽く裏切っていくのが面白い。
演出的にも凝って、同じ室内場面で主人公が目をつぶる前後のショットで彼の心境を反映するように明るさがぐっと変わる(下画像参照)といった興味深いものもあるが、幾つか芸術を気取った解りにくいカット割りがあるのが勿体ない。妙に芸術ぶらずにそのまま洒落っ気だけで構成すれば十分だった。
芸術ぶったところを別にすると大いに気に入ったが、考え方によっては怪しからんテーマであるし、観客を半ばからかうのを目的としたお話なので、作品に応じて観るスタンスを変えることが苦手な人にはお勧めできない。
ドパルデューもでかいが、モニカ嬢のあれもでかい。
2005年フランス映画 監督ベルトラン・ブリエ
ネタバレあり
これは映画に対する考えの柔軟性を試されるような作品である。真面目な人には受け入れられそうもないが、洒落っ気が好きな僕は大いに楽しんだ。
500万ユーロ近いくじを当てた冴えないサラリーマン、ベルナール・カンパンが、娼館で見出したイタリア美人モニカ・ベルッチに「毎月10万フラン上げるから一緒に住め」と頼み、彼女は彼のアパートについてくる。平凡な毎日に飽きた彼女は再び娼館に戻り、そこで彼女にギャングのボスである怖い情夫がいることが判明する。さしでその巨体男ジェラール・ドパルデューと談判することになるが、意外にも彼は彼女の為に金を払うことを拒否、夢のような日々の終わりを確信する。
この後の予想だに出来ない急展開がエキセントリックで誠に面白いのだが、一旦置いておく。
監督はこれまで余り感心したことがないベルナール・ブリエだが、今回はおふざけ連発で、フランス映画らしい洒落っ気に横溢している。以下の如し。
一旦ボスの家に戻った彼女はソフト・タッチのカンパンが忘れられず、絶倫のドパルデューと切れることを決意、ボスもあっさりと承服した為再び二人の愛欲生活が始まるわけだが、ボスともあろうものが拳銃を見せることもなく承知したり、その彼が起こしたこの上なく凶暴な罰が「ねずみに襲わせた」ことだったり、肩すかし的なお笑いが続いてにやにやさせる。
二人の前に彼の知人たちやボスまで現れて熱いところを見せられたかと思えば、次の瞬間には彼女が浮気に走って主人公をヒヤヒヤさせ、くじ当選の話が嘘と判って彼女ばかりか観客をも唖然とさせたりするうちに、「女性は娼婦」というフランスでは古典的なテーマを浮かび上がらせていく。
くじの扱いは心理学的に秀逸と言うべきで、そんな具合に観客の心理(思い込み)をついて予想を尽く裏切っていくのが面白い。
演出的にも凝って、同じ室内場面で主人公が目をつぶる前後のショットで彼の心境を反映するように明るさがぐっと変わる(下画像参照)といった興味深いものもあるが、幾つか芸術を気取った解りにくいカット割りがあるのが勿体ない。妙に芸術ぶらずにそのまま洒落っ気だけで構成すれば十分だった。
芸術ぶったところを別にすると大いに気に入ったが、考え方によっては怪しからんテーマであるし、観客を半ばからかうのを目的としたお話なので、作品に応じて観るスタンスを変えることが苦手な人にはお勧めできない。
ドパルデューもでかいが、モニカ嬢のあれもでかい。
この記事へのコメント
上達してるかしら~ん?と
興味しんしんで観ましたら
(モニカさんは、いつもの
モニカさん、でしたが^^)
あら、なんとまあ~飄々として
お客様を嬉しく裏切って
下さいます内容ざんして・・・
これ、めっけもんざますぅ~
(観る方を選びますけれども・・・)
さもありなん「美しすぎて」
そして私の大好きな映画「私の男」の
ベルトラン・ブリエの監督作品で
ございました!^^
この監督でぜひぜひ観たいと
渇望の域まで達しております
ドパルデュとミュウミュウ共演の
「バルスーズ」は、探せども
探せども、どこにも、ない。
プロフェッサーなら、もしかして
すでに、ご覧になっていらっしゃる?^^
ところで、突如、装い変わった
allcinema、いたく、見づらいのは
わたくしだけかしらん?(--)^^
おおっ、ご覧になりましたか。
しかし、楽しんだらしくて、誠に結構ですね。
やはり世間的にはダメなようで、IMDbでは5.5ですってよ。
せめて6点代の後半は行ってほしいと願っていましたが、
頭の固い連中が多いのですね。(笑)
「美しすぎて」は観たはずですが、殆ど記憶がありません。
「私の男」は未見。
「ハンカチのご用意を」は評判倒れ。
で、「バルスーズ」。
見ちょります。^^
本作でドパルデュー日本初登場、(今と比べれば)まだ細かった!
80年代初めに観ていますが、当時の僕は感心しなかったです。^^;
まあ、今ほど大人の見方もできない時期なので、
厳しかったかな。
>allcinema
イエース!
しかも、ページも解説と感想が分れて、まだ戸惑っています。
変える必要もなかったに~。
この時は赤ちゃん生まれて授乳中だったそうで、2箇所くらい、母乳が貼った乳房もありましたね。そんなとこも堂々とさらけ出すベルッチにはそれだけでお見事でした。一人の女のいろんな面みせて、遊び心で、楽しませてくれた作品でした。ベルッチは全裸でカメラの前にたっても、その堂々さに、妙なセクシーさを感じず(私はね。P様はどうかしら?)、むしろその堂々さに当たり前にみせてくれるところが気に入ってる。
上のallcinema。同感です。それに開くのも遅い。前はとってもここが一番見やすかったんですけどね。重くなった。
P様の8点に反応して。
世間の評価は低いんですね。劇場には、小さい劇場でしたが結構入ってましたけどね。ベルッチめあてだったのかしら?娘なども見れなかったけど見たがってましたね。楽しいから私も娘が見てもOKよと思う映画だった。
シュエットさんも楽しめましたか。
viva jijiさん同様、頭が柔らかいですね。素敵です。^^
>乳房
なるほどなるほど。道理で張れていると思いました。^^
今回の彼女は、クラウディア・カルディナーレとシルヴァーナ・マンガーノの中間のような印象がありましたなあ。
僕も男ですからまあ何です(笑)が、いずれにしても余り隠すと却ってエロティシズムが増すというのが持説で、あっぱれとしたほうが変な欲望は覚えにくいですね。
ポルノを観て興奮するのは、まあ想像力がない方と思って間違いないです。^^;
>allcinema
IMDbへのダイレクト・リンクも考慮が必要であります。
>世間の評価
いや、硬い男性諸君は「くだらない」と思い、硬い女性諸嬢は「けしからん」と思うのでしょう。
>頭の固い連中が多いのですね・・・
わたしも頭が固いんですが、オカピーさんの8点に大賛成です。
>「女性は娼婦」というフランスでは古典的なテーマを浮かび上がらせていく。
これだから、オカピー評を読むのをやめられない。
このテーマ、まさにベルトラン・ブリエのライフ・ワークで、各種映画祭・映画賞での評価の最も大きな理由ではないかと思うんですよね。でなきゃ、この人の受賞歴は理解できませんよ。
それにロージー、ヴィスコンティ、アントニオーニ、クレマンでさえもドロンに公式男優賞を受賞させることができなかったのに、彼はドロンにセザール賞を受賞させているんですよ。
彼の作品は素晴らしい作品ばかりだと思います。
では、また。
では。
>わたしも頭が固いんですが
いや、文章で受ける印象よりずっと柔らかいと見ました。^^
>これだから、オカピー評を読むのをやめられない。
恐れ入ります。短いのが唯一の取り柄ですが。
それにしても思った以上に評価されているんですね。
30年くらい前に「バルスーズ」や「ハンカチのご用意を」を勇んで観たらがっかりした記憶がありますが、本作が面白かったからまた観ても良さそうだという気持ちになりました。
ご贔屓ドロンの出ている「真夜中のミラージュ」は勿論観ないといけないですね。