映画評「僕のニューヨークライフ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2003年アメリカ=フランス=オランダ=イギリス映画 監督ウッディー・アレン
ネタバレあり
ウッディー・アレンの作品群には4つ程のタイプがあると思うが、これは初期のドタバタから脱皮した「アニー・ホール」と同じタイプに属するスケッチ風喜劇である。
ニューヨークの若手コント作家ジェースン・ビッグズが恋人となった女優志願クリスティナ・リッチとセックスレス生活が続いてイライラ、不感症チェックの為に他人と付き合っているという嘘か本当か解らぬ彼女の戯言にほだされるが、色々アドバイスしてくれる老コント作家アレンの誘いに乗ってカリフォルニアへ行くことを決意した時クリスティナから別れを切り出される。
というお話は、「アニー・ホール」系列どころか殆どリメイクと言っても良い。
同じでは能がないと思ったか、旧作でアレン自身が演じた役を若いビッグズに演じさせて、その老いた姿とも言える老作家を配置してちょっと客観性を出そうとしたらしい。同じ人物を二人に分けるような設定にすることでそれまでの自虐的心境ドラマの境地を超えた印象に繋げ多少面白さに貢献したと思うが、大部分はやはりこの系列の作品群で繰り出してきたことの繰り返しで、「泥棒野郎」以降彼の作品を全て観てきた僕には新味がなく面白いとは言い難い。
それでも注目すべき点があって、ユダヤ人たる彼がナチスについての言及を以前より強め、それを材料に彼自身を分析するのと同じ自虐的スタンスでユダヤ民族を料理しようとした意欲は認めたい。
もう一つは、登場人物たるビッグスがカメラに向って話す演劇的演出で、長い映画史の中でそれ自体は珍しくもないが、最後に彼自身が彼を眺めるトランジション・ショットを採用しているのを見ると、「やはりアレンはベルイマン・ファンだな」とニヤッとせざるを得ないわけである。
2003年アメリカ=フランス=オランダ=イギリス映画 監督ウッディー・アレン
ネタバレあり
ウッディー・アレンの作品群には4つ程のタイプがあると思うが、これは初期のドタバタから脱皮した「アニー・ホール」と同じタイプに属するスケッチ風喜劇である。
ニューヨークの若手コント作家ジェースン・ビッグズが恋人となった女優志願クリスティナ・リッチとセックスレス生活が続いてイライラ、不感症チェックの為に他人と付き合っているという嘘か本当か解らぬ彼女の戯言にほだされるが、色々アドバイスしてくれる老コント作家アレンの誘いに乗ってカリフォルニアへ行くことを決意した時クリスティナから別れを切り出される。
というお話は、「アニー・ホール」系列どころか殆どリメイクと言っても良い。
同じでは能がないと思ったか、旧作でアレン自身が演じた役を若いビッグズに演じさせて、その老いた姿とも言える老作家を配置してちょっと客観性を出そうとしたらしい。同じ人物を二人に分けるような設定にすることでそれまでの自虐的心境ドラマの境地を超えた印象に繋げ多少面白さに貢献したと思うが、大部分はやはりこの系列の作品群で繰り出してきたことの繰り返しで、「泥棒野郎」以降彼の作品を全て観てきた僕には新味がなく面白いとは言い難い。
それでも注目すべき点があって、ユダヤ人たる彼がナチスについての言及を以前より強め、それを材料に彼自身を分析するのと同じ自虐的スタンスでユダヤ民族を料理しようとした意欲は認めたい。
もう一つは、登場人物たるビッグスがカメラに向って話す演劇的演出で、長い映画史の中でそれ自体は珍しくもないが、最後に彼自身が彼を眺めるトランジション・ショットを採用しているのを見ると、「やはりアレンはベルイマン・ファンだな」とニヤッとせざるを得ないわけである。
この記事へのコメント
TB&コメントありがとうございました。
ウディご本人の台詞回しが(っていうか声が)非常に苦手なんですけど、この作品ではウディの分身までが出てきてかなりウザかった覚えがあります。
ウザさもまた面白いんですけどね。
ウディ作品全てを見ている訳ではないのですが、ロンドンに渡ってからは比較的エンタメ性が高くて私にとっては見やすくなりました。
>ウディご本人の台詞回し
声そのものが苦手なら何を言っても無駄ですが(笑)、僕は一種のBGMとして右から左へ聞き流したりしています。^^;
その中で重要そうな台詞だけ記憶に留めるようにしております。
>ウザさもまた面白い
狙いでもあるでしょうね、あのくどい感じは。
僕が特に好きなアレン作品は、「インテリア」「ハンナとその姉妹」「マンハッタン」「スコルピオンの恋まじない」「カイロの紫のバラ」。
しかし、近作の「マッチポイント」など他にも面白いのがいっぱいあるなあ。
「アニー・ホール」は観た事がなかったので、同じような内容とは知りませんでしたが、J・ビッグスの役は、これまでW・アレンが演じてきた役柄そのままという感じでした。
W・アレンは相変わらず、コンスタントに新作を発表しますね。
コメント有難うございました。
宜しければTBもお願い致します。
「アニー・ホール」の舞台は勿論ニューヨークで、主人公は漫談家。カリフォルニアへ行くのは恋人の方で、主人公は追いかける。
最近のリメイクはオリジナルとかなり変わる傾向がありますから、これとてリメイクと言っても差支えないような気がしました。^^;
>コンスタント
ほぼ1年に1本ペースですね。
ヨハンソンを主役に撮った作品って「マッチポイント」ともそうだけど、「タロットカード殺人事件」なんかもお手軽作品だけど、小粋で素直に楽しめて、私は気に入ってます。
ヒッチコックなども恋愛対象ではないものの、グレース・ケリーやティッピ・ヘドレンなどお気に入りの女優を使えると好い仕事をしましたし、もっと女優選別の自由が利くであろうアレンでは余計にそういう傾向があるのかもしれませんね。
クリスティナと言えば、「アレンの映画は招かれれば絶対出たいけど、共演がヴィンセント・ギャロなら、ご勘弁願うかも」と面白いことを言ったようです(はっきり物を言う娘ですね、^^;)。
>ヨハンソン
「マッチポイント」は彼女を含めてお気に入り。
viva jiji姐さんは彼女には批判的なんですよねえ。
「タロットカード殺人事件」・・・楽しみにしております。^^
ヨハンソンは、北欧系らしく骨格ががっちりしていますよね。バーグマンみたい。
僕も演技力はあると思います。
>のら猫の日記
ほ~い。^^
子役時代と言える作品では、レッドフォードの「モンタナの風に抱かれて」も良い映画でした。