映画評「暴行」
☆☆★(5点/10点満点中)
1964年アメリカ映画 監督マーティン・リット
ネタバレあり
マーティン・リットのこの西部劇は黒澤明の「羅生門」をアメリカ南西部を舞台に忠実にリメイクしたものである。
志村喬のそま売りの代りにハワード・ダ・シルヴァの農夫、千秋実の旅法師の代りにウィリアム・シャトナーの牧師、上田吉二郎の下人の代りにエドワード・G・ロビンスンの詐欺師が、羅生門の役目を果たす駅で語り始める。
森雅之の侍に代ってローレンス・ハーヴェイの軍人、京マチ子の妻にはクレア・ブルーム、三船敏郎に代ってポール・ニューマンの盗賊。
クレアのヴェールが風にあおられてニューマンが劣情を催す場面もそのまま再現されている。さすがに巫女の場面はないだろうと思っていたら、インディアンの祈祷師を使いやがった(笑)。
大きな違いが二つある。
一つは、農夫と牧師が野外法廷で証言する代わりに駅で回想する形式になっていることで、法廷場面とのバランスを考えた結果なのかもしれないが、回想の中で回想するような印象を観客に与えるので余り感心しない。
もう一つはダ・シルヴァの回想の中でハーヴェイの死に方が不慮の事故になっていることで、些か不自然ではあるものの死に方を全て変えたのは宜しい。
しかし、「羅生門」を見ている人間にとっては全くお里の知れたお話につき余り面白からず、映像でも大分及ばないので、良い評価を与えることはできない。もし「羅生門」を全く知らなければ★一つか二つ分増えるだろうが、結局オリジナルにおんぶした作品なのでそういう仮定は大変空しい。
配役では、ニューマンの野性味たっぷりの演技が良いが、クレアの変幻ぶりもなかなか気に入った。
1964年アメリカ映画 監督マーティン・リット
ネタバレあり
マーティン・リットのこの西部劇は黒澤明の「羅生門」をアメリカ南西部を舞台に忠実にリメイクしたものである。
志村喬のそま売りの代りにハワード・ダ・シルヴァの農夫、千秋実の旅法師の代りにウィリアム・シャトナーの牧師、上田吉二郎の下人の代りにエドワード・G・ロビンスンの詐欺師が、羅生門の役目を果たす駅で語り始める。
森雅之の侍に代ってローレンス・ハーヴェイの軍人、京マチ子の妻にはクレア・ブルーム、三船敏郎に代ってポール・ニューマンの盗賊。
クレアのヴェールが風にあおられてニューマンが劣情を催す場面もそのまま再現されている。さすがに巫女の場面はないだろうと思っていたら、インディアンの祈祷師を使いやがった(笑)。
大きな違いが二つある。
一つは、農夫と牧師が野外法廷で証言する代わりに駅で回想する形式になっていることで、法廷場面とのバランスを考えた結果なのかもしれないが、回想の中で回想するような印象を観客に与えるので余り感心しない。
もう一つはダ・シルヴァの回想の中でハーヴェイの死に方が不慮の事故になっていることで、些か不自然ではあるものの死に方を全て変えたのは宜しい。
しかし、「羅生門」を見ている人間にとっては全くお里の知れたお話につき余り面白からず、映像でも大分及ばないので、良い評価を与えることはできない。もし「羅生門」を全く知らなければ★一つか二つ分増えるだろうが、結局オリジナルにおんぶした作品なのでそういう仮定は大変空しい。
配役では、ニューマンの野性味たっぷりの演技が良いが、クレアの変幻ぶりもなかなか気に入った。
この記事へのコメント
ほぼ同じ話であるわけで、全く未見の人以外は「どこをどう作っているか」ということくらいにしか興味が湧かない作品ですね。
インディアン(今はネイティヴ・アメリカンなんて言い方をするらしいですが)もやはりモンゴル系なので、かのシャーマンも日本の巫女と関係が深いんでしょうねえ。
ニューマンはメキシコ人らしい発音に凝るのを、ニヤニヤ観ておりました。
プロフェッサーがおっしゃってましたよね。
「引き裂かれたカーテン」の時に、
ニューマンが芝居をし過ぎて困ると
ヒッチおじさんがぼやいていたとか・・^^
今回は最初誰?この人?で(笑)
なんか変な英語をしゃべるなぁ~っと
思ってましたら
>メキシコ人らしい発音に凝るのを
うふふ、やっぱり~~~^^;
E・G・ロビンスンはとても適役だと
感じましたが、ハーヴェイはやはりハーヴェイ
・・・でしたね。(--)^^
撮影はなかなか良いと思いましたが。
牧師のシャトナー、しばらく彼だと
気がつきませんでした~。
・・・う~~ん・・
でも、ヘンテコな感じの作品。
リットさん、頼まれ仕事かしら~(笑)
相変わらず記憶力が素晴らしいですね。^^
ヒッチコックは人も小道具にしたい監督ですから、過剰な演技は困るんですよね。尤もグレゴリー・ペックの表情の変化のなさにも困ったようですが。
とにかく、ニューマン先生は相当楽しんだようです、役作りを。^^;
エドワード・G・ロビンスンは、上田吉二郎のイメージが引き継いでいました。ハーヴェイは森雅之に及びもつかない。
シャトナーは最後まで認識できず。チェックして解ったくらい。^^;
>撮影はなかなか良い
「羅生門」と比べず、単独で判断すればそう思います、はい。
アメリカで屋外の裁判はやはり変。もう少しオリジナルから変えても良いと思いますね。
>頼まれ仕事
どうかなあ。
アメリカで舞台劇になって評判を読んだようですよ、「羅生門」は。
やはり「羅生門」を知っていると、ストーリー上の興味は減りますね。
ニューマンのメキシコ人ぶりがいちばん印象的でした。エドワード・G・ロビンソンも、さすがの貫禄で良かったです。
オリジナルを知らなければ、ずいぶん面白い話だと思えるでしょうね。
>テレビで観賞した映画を検索すると
現在では衛星放送での映画鑑賞に完全に埋没しておるので。
街から山奥に引っ越してきてから、電車やバスで映画館に通うというわけにも行かないし、車は車で駐車場等、結構億劫でしてね、勢いTVに埋没します。^^;
>エドワード・G・ロビンソン
この頃になると悪人でも大分好々爺風になっていますね。
>オリジナルを知らなければ
そう思います。
逆に、「羅生門」は何度も観て、この直前にも観ている当方は逆りきっているので「どう作り変えているか」しか興味が持てなかったです(と言ってもこの作品も二回目なんですが)。^^;